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第145話 磐城から常陸

 1586年8月3日


里見の処遇も結審し、残る残党佐竹義重討伐に駿河を出陣しようとしたとき、奥州探題・伊達政宗の重臣、鬼庭綱元が情勢を知らせに駿河城を訪れていた。


そこで、下野と常陸に集結している大軍勢を俺は知った。


そのような大軍勢が集まるとは思ってもいなかったが、西は島津が虫の息、残された戦いが少ないことは戦国を生き抜いてきた荒くれどもにはひしひしと伝わっていたのだろう。


その荒くれどもは死に場所、いや、もう一花咲かせる最後の機会を探していたのかもしれない。


そして、茨城は意外にも一向宗徒には特別な場所、牛久は浄土真宗開祖・親鸞が流刑となり滞在していた場所なのだ。


牛久にある巨大な大仏、あれはなにもあそこが、ただ何もない土地だったからではなく、浄土真宗とゆかりある土地だからこそあそこにあるのだ。


一向宗徒は石山本願寺、加賀・越中・越前でことごとく敵対した織田信長の天下統一の総仕上げを阻もうとしているのかもしれない。


俺は茨城、千葉、福島、栃木のあたりを詳しく絵図面に書き信長に見せている、この辺りの地形はしっかりと覚えている。


福島から続く阿武隈山脈の南の端の少し特殊な地形。


常陸の霊峰、神峰の山々を修行と言われ母方の陰陽力を持つ祖父に連れまわされた修験道の修行の場だからしっかり覚えている。


御岩の岩場なんて何回落ちそうになったことやら。


「ここのあたりの地形などは大きく変わりはないはずなので、俺のいた時代と同じはずです」


二人っきりで狭い茶室で俺の書いた地図と、にらめっこ、にらめっこと言うと可愛く聞こえるがくそ暑い夏に信長と言うおっさんと二人っきりと言うシチュエーションは何とも辛い、まだ家康が同席を許されなかっただけマシと思うようにしよう。


しかし、この暑い中、中年の信長は汗臭さがないのだから不思議な物だ。


むしろ香を焚きこませた服から良い香りがする。


「で、あるか」


険しい顔をしている信長。


流石に130000と言う大軍に慎重にならざるを得ないのだろう、しかも地の利がない場所で。


「鬼庭殿の説明だと、下野は最上殿でひきつけていただき、常陸の10万の大軍と、どこで戦うかを考えたほうが良いと思うんですよね、で、磐城の勿来から日立より南までの、あっと、ごめんなさい、この時代だと大甕とか言ったほうが良いのかな、確か大甕なら昔っから名前変わらないはずだし」


「地名などわかればよい、続けよ」


大甕は日本神話に出てくるような地。


「この辺りまでは広い平野はないんですよ、だから大軍で決戦となると久慈川の河口、近く村松山虚空蔵堂あたりになるかと思います」


と、久慈川あたりを指さす。


「と、なるとこの辺りは砦、出城が築かれて北からは通れまい」


と、俺の書いた地図に扇子を当てながら信長は言う。


扇子の先は、常磐道でトンネル続きの日立の山々を指している。


常磐道を東京から仙台に向かった者ならわかるだろうが、日立は坂東平野の北の端、突如長い上り坂となって山々が続きトンネルが続く、平成でも事故の絶えない難所になる。


日立の地形を知っている者なら北からの沿岸の防衛ラインは日立の山々に置くと推察できる。


「そこで、この艦隊を使って戦います。小田原を砲撃したように南下する伊達軍を海から援助するように山から迫る敵に艦砲射撃を行い、南下を手助けいたします。今までにない戦い方です」


地図を指すのを止め広げて顔を仰いでいた信長の扇子は、勢いよく閉じられる。


「常陸、今までにない戦い方、それがこの戦いの要、それがわかるか?」


「はい、海軍力を持って国を治めようとしていますよね、信長様は」


「で、ある。よし、磐城に布陣している伊達政宗にすぐに伝えさせよ、わしらが到着するまで動くなと、蘭丸」


茶室の外の声の聞こえるところに待機していた蘭丸は鬼庭綱元に指示を出すと、綱元は敵中突破の伝令として馬を走らせた。


1586年8月5日、俺たちが乗る南蛮型鉄甲船30隻が出航した。


家康の安宅船は足手まといになる為、船団に加えられず家康と忠勝はキング・オブ・ジパング号の後ろに付く二番船に乗船した。



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