表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1223/1260

茶々視点外伝 茶々視点・⑥⑦話・ほうれんそう?

湯漬けで腹を落ち着け、白湯をすすって一息つくと、真琴様は縄張りの絵図面に目を通し、蒲生氏郷が脇で簡潔に説明を重ねた。


「常陸様、天守はご覧のとおり装飾は未了ながら、中へは入れます。よろしければ最上から見下ろしつつご説明を」


「マコ、天守に入っていいの?」


「いいみたい。でも、まだ未完成だから作事の邪魔にならないよう気をつけて。――幸村、お江についていってあげてね」


「はっ」


お江は遠慮という言葉を知らぬ勢いで駆け上がり、お初と、真田幸村に率いられた護衛たちが続いた。


氏郷殿は大工のまとめ役を呼び、「織田の姫ゆえ粗相なきよう」と命じる。


私たちも梁や貫を確かめながら急階段を上る。


打ちはめの板がまだところどころで、風が柱の間を抜けていく。


「……ああ、やっぱり急階段か。これは頭をぶつけそうで怖いんだよな」


真琴様はぼやきながらも、柱の傷や木目を注意深く追っていた。


「筋交いがないか……」


「筋交いとは?」


氏郷殿が問うと、真琴様はすぐ応じる。


「柱と柱をつなぐ“×”の部材のことだよ。――あ、宗矩、紙に箇条書きでいいから書いて。あとで信長様に報告するから。現物を見ないと思いつかない提案が多くてさ。今日は色々出そうだから、書き留めておいて」


「はっ、承知」


柳生宗矩が懐紙と筆を整える。氏郷殿が穏やかに言う。


「この城は上様が常陸様にお任せの城。いかようにもなされてよろしいはず。上様への逐一のご報告は、さして不要かと存じますが」


「信長様への報告は必要だよ。ここは安土と京を結ぶ要所。信長様がお通りの折に立ち寄られる想定は外せない」


「それは――余計な疑念を持たれぬため、ということに?」


「そう。俺はあくまで信長様の“食客”で、正式な家臣ではない。この城だって『与える』と言われたけど、預かり物だ。茶々が信長様の養女になって、俺との婚礼で名目上は一門格になるとはいえ、中途半端なんだよね。だからこそ、すべてをお伝えして疑念を生まないように、こちらが気を配る」


その言葉に、私はうなずいた。


「たしかに義父上は裏切りに敏い方ですが、真琴様は格別に信頼されております。とはいえ、備えは大切ですね」


「それに、俺は信長様への助言役って立場でもあるから、いまから言うことは――ほら、あれで」


「“あれ”?」


氏郷殿が首を傾げた瞬間、私は気づいて口を挟む。


「氏郷殿、黒坂常陸守真琴の詮索は禁止、と上様より達しが出ております。――それが“あれ”にて。これ以上はお控えを」


氏郷殿は片膝をつき、深々と頭を垂れた。


「失礼仕りました」


「気にしないで」


「はっ。……しかし、上様に疑念を抱かせぬお心配り、まさに軍師と囁かれるだけのこと」


真琴様は、ふと思い出したように指を立てた。


「俺の知っている言葉で“ほうれんそう”ってある。『報告・連絡・相談』――これを大切にしないと、誤解や、工事なら無駄や事故につながる。……よし、うちの法度にしようか、『報告・連絡・相談』。なんだかんだ家臣も増えてるし」


「よいお定めにございます」


そう告げると、周囲の家臣たちも一様にうなずく。


氏郷殿の目が、ほんのわずか鋭さを帯び、真琴様を見る色が変わった――評価と、期待の色に。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍版案内】 13巻2026年2月25日発売 i1090839 i928698 i533211 533215 i533212 i533203 i533574 i570008 i610851 i658737 i712963 i621522 本能寺から始める信長との天下統一コミカライズ版☆最新情報☆電撃大王公式サイト i533528 i533539 i534334 i541473 コミカライズ版無料サイトニコニコ漫画
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ