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第119話 お赤飯

居室にストーブを置いて数日、部屋でほっこりとしながらストーブで軽く炙った蜜柑を食べている、蜜柑は皮ごと炙ってまるのまま食べるのが健康に良いと祖母の教え通りに食べる、本当なら干し芋を炙りたいのだがまだない。


今日は珍しくお江が西御殿から来ていない静かな一日だ、風邪でもひいたのか?と、思っていると桜子が入ってくる。


桜子は俺の側室なのだが今でも、料理など下働きは変わらずにしている。


襖が開くと夕飯の仕度をしている匂いが漂っている。


「御主人様、申し訳ありませんが火をお借りしてよろしいでしょうか?」


「え?他にも火あるでしょ?」


「すみません、予定していた物以外に作ることになりまして」


「ん?メニュー変更?」


「お赤飯を蒸したく、よろしいでしょうか?」


あれ?めでたいこと別にないけど、赤飯?まぁ~蒸した米、おこわ好きだから良いし別に部屋が暖まっていればストーブを使われてもかまわない。


「別に構わないよ、使って良いよ」


と、言うと加湿に使っている釡に用意されていた蒸籠(せいろ)を乗せる桜子、しばらくすると、米の蒸れる匂いがしだす。


部屋で蒸し米は失敗な気がする、意外に匂いがするが、今更だな。


「今日は良いことあったっけ?なんかの祭り事とか?」


と、桜子に聞くと桜子は少し口ごもる。


「えぇ~まぁ~その~」


と、言う。


なんだろうか?


「これが蒸し上がりましたら夕飯に御座います」


と、桜子が言うので囲炉裏テーブルの部屋に行くと、お江が少し顔色が悪そうにしながら静かに座っていた。


珍しい、やはり具合でも悪いのか?


「お江、どうした?具合でも悪いのか?風邪か?」


「ん、うん、大丈夫だよ、ありがとう、マコ」


と、しおらしく言うお江、珍しい、本当に大丈夫なのか?


と、席をたってお江の額に手を当てようとしたら、お初が割って入ってきた。


「お江は大丈夫だから、御主人様は座りなさい」


お初は俺の呼び方と態度が合っていない、まぁ、それがお初なのだが。


「常陸様、お江は女になりましたの」


と、襖を開けて入ってきたお市様が言う。


「ん?お江は前から女の子ですよ?」


と、首をかしげて言うと、お市様は、


「ふふふっ」


と、笑っている。


「ん?なに?え?」


「御主人様は鈍感ですからね」


と、こんがり焼けた鯛を人数分並べだす、茶々。


「あ~お江、十三歳の誕生日?十三参りの風習ならあったからわかるよ」


「ほらね、御主人様は鈍感なのよ」


「ん?ん?ん~?」


と、首をかしげると、米を蒸し上げた桜子が耳打ちをしてきた。


「初潮を御迎えになられたのですよ」


お!お!お~なるほど、なるほど!


「お、おめでとう」


「も~う、やだ!」


と、お江が少し半泣き状態、


ごめんなさい、デリカシーがないもので、


「ごめんね、ごめんなさい」


と、謝る。


「常陸様、ですから、お江は女なんですよ」


と、お市様が言う、流石にこれは何が言いたいのか想定がつく。


「お市様、言いたい事はだいたいわかりますが、それ以上は」


「あら、そう?でも、常陸様、鈍感だからね~」


と、お市様が言うと皆が頷く。


夕飯は最近は、茶々達三姉妹とお市様、桜子三姉妹だけで、家臣達は城内にある自宅で食べている。


男は俺だけ、少し気不味い、


「さっ、食べましょ、赤飯温かいうちに食べたいし」


と、食欲優先を装っている俺は茶碗に盛られた赤飯を食べる。


ん?思っていた赤飯と違う、なんかもっちりしていない、堅い。


雑穀米の感触に似ていて箸が止まる。


「これは、赤米で神様にあげるのに使うのですよ、最近は年貢米には出来ないので栽培も少なくなってきているのですが」


と、桜子が説明してくれた。


赤飯の原形な訳なのか?思っていたのは、もっちりしたもち米なんだけどな、少し残念。


この時代の米はパサパサなんだよ、久しぶりにもっちりしたのを食べられると思ったのに。


お江の初潮の祝いなのに赤米の味に文句をつけちゃダメだよね。


無事に大人になることが出来たことに感謝をする為に、神様に捧げることこそが本来の目的なのだもんね。


おめでとう、お江、無事に大人になれて、と心で言いながら赤米を噛みしめた。







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