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茶々視点外伝 茶々視点・③③話・縁組み?

「――あの馬鹿、砂糖まで買い求めおったわ」


「兄上様が“金に糸目はつけぬ”と仰ったからではございませんか」


母上様の御居室へ向かう途中、襖越しに伯父上と母上様の声が聞こえた。思わず口を開く。


「伯父上様、母上様。お声が漏れ聞こえておりますよ」


「構わぬ。密事ではない」


そう言い置いて、伯父上はすっと去っていかれた。


母上様がこちらを振り向く。


「茶々、何かあったの?」


「はい。その“砂糖”のことにございます。黒坂様が今井屋に頼み、織田家払いで求めたと聞き及びまして……伯父上様に、よろしいのか伺おうと」


「そういうことね」


「さすがに、お怒りのように見えました」


「愚痴にすぎませんよ。あの高価な砂糖で“結果”を出せば、兄上は何も言わない。どころか、きっと褒めるわ」


「……そうであればよいのですが。――それと黒坂様から、『海産物を仕入れたいので前田家の協力を仰ぎたい』と。ゆえに松殿宛てに手紙をしたためましたが、差し支えございませんか」


「問題ないわ。――なるほど、琵琶湖の幸ではなく“海”でおもてなしね」


「はい。黒坂様いわく、『今回の御方々には湖魚より海魚が合う。鮒は饗応の献立には入れない』との由」


「黒坂様がそう仰るなら、そのとおりに進めなさい。――それより、あなたが来る前に兄上が“伊達と上杉に、浅井の娘の誰かを嫁がせたい”と仰ってね。お断りしておいたわ」


「……私たちに、縁談が?」


「関東の北条、三河の徳川、九州の大名――いずれも話は挙がっている。けれど、もうしばらく手元に置きたいと伝えたわ。まあ……あなたたち三人の“心”は、もう定まっているのでしょうから」


「母上様、私は――誰も、心に留め置いてはおりません」


「では、伊達か最上か北条か……いっそ公家に嫁ぐ? 引く手あまたよ」


その瞬間、背筋を冷たいものが這い上がった。

ぞくり、と身が粟立つ。言葉では否定しながら、体は――露わに嫌悪を示していた。


母上様は、やわらかく目を細める。


「言葉と体が一致していないわね、茶々。正直になりなさい。もう少しだけ、時間をあげる。あなたの心が決まったとき、私に言いなさい。――あなたの悪いようには、絶対にさせないから」


そう言って、固まった私の肩を抱き寄せる。温もりが、ゆっくりと緊張をほどいてゆく。

けれど私の胸の奥では、別の温もりが疼いていた。


――感じたい。

あのお方の、温もりを。


母上様の腕の中で、私はただ一人の顔を、どうしても追い払うことができなかった。

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