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茶々視点外伝 茶々視点・③①話・とんかつ

「母上様〜、これ! マコがお土産に持たせてくれた“豚の料理”〜」


屋敷に戻るや、お江はさっそくお重を母上様へ差し出した。

母上様が蓋を外すと、きつね色の衣が並び、ふわりと香ばしい匂いが座敷にひろがる。


「まあ……南蛮の御料理かしら?」


「“とんかつ”という名だそうです、母上様」


お江が名前を忘れていたので、私がそっと添える。


「聞き覚えのない料理名ですね」


「変態・真琴が勝手に名付けたのよ」


「お初。黒坂様をそのように呼んではなりませんよ」


母上様はやわらかく微笑み、冗談だと承知のうえで諫められる。


「しかし、これほど大量の“豚”をいただいてよいのかしら?」


「母上様、そんなに高価なのですか?」


「値もさることながら、たいへん希少と聞き及びます。豚は、公家でも摂関家ほどでなければ口に入りにくい、と」


「今井屋を通じて定期的に手に入るよう、黒坂様が手を回しているそうです」


「そうですか。では兄上からの御扶持は、食の道楽に消えているのですね……ふふ」


「無駄遣いだわ。明日行ったら叱らなきゃ」


「お初。あの方の楽しみを取り上げてはなりません。黒坂様は、それで寂しさを紛らわせておられるのですもの」


他愛ないやり取りの最中――


「上様のお召しにございます」


廊から侍女の声。伯父上の来訪だ。下座に控えようとしたところで、襖がすっと開き、伯父上がそのままお入りになる。


「賑やかだな。……ん? それは何だ」


「兄上様、黒坂様がお拵えになった“豚”の料理にございます」


「ほう、豚か。……あやつめ、またそんなものに無駄遣いを――どれ、一つ……」


箸先で一切れを取り、口へ。伯父上の眉がわずかに上がる。


「――うまい。これは“熱いうち”に食してみたい……この料理は、使える」


ぽつり、独りごちて立ち上がると、そのまま踵を返して出て行かれた。

格別の用でなく、妹の機嫌伺い――そんな程度に思っていた。けれど、あの「使える」の一言が、この“とんかつ”を思わぬところへ運んでいくことを、そのときの私たちはまだ知らなかった。

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