茶々視点外伝 茶々視点・①②話・黒坂真琴の側女!?
私とお初は黒坂様から剣術を学び始めるとそれが日課になった。
私達は素振りの基本から習う。
「先ずは打ち下ろしの素振り100本を日課に」
「ちょっとあんた、厳しくない?」
「お初、本当は朝昼晩合わせて300本と言いたいが箸より重い物を持った事なさそうなその細腕だから100にしているんだからね」
「なによ!馬鹿にして!箸より重い物持ってるわよ!朝昼晩300やってやるわよ」
お初はむきになる。
「お初、黒坂様は先ず基本を教えて下さっているのだから言われた通りにしましょう。無理して腕壊したり、飽きて続けなかったりしては意味がありませんよ」
「……はい」
「茶々の言う通り。継続が力となるからね」
そんなやり取りをお江は見ていたが、退屈なのか森力丸に追い掛けっこをせがんでいた。
しかし、傷が塞がったばかりの森力丸は家臣に止められ、侍女?侍女とはあきらかに違う小姓の身なりをした女子が、お江の相手となった。
素振りを一通り終え、縁側に腰を降ろし湯冷ましを飲みながら、森力丸に、
「あの男装の女子は何者ですか?もしや、伯父上様が黒坂様に女子をあてがられた?」
「はははははっ、あれは違いますよ。護衛です」
「あの女子が護衛?」
「あれは柳生石舟斎宗厳の門下、その中でも裏柳生と呼ばれる者」
「くノ一ですか?」
「まぁ~そのようなところで」
「なぜにそのような者を」
「殿が上様に好きな武将の名を聞かれて、柳生石舟斎宗厳殿の子の名前を出したのですよ。柳生宗矩と申す者。近く召抱えられる手はずとなっておりますが、その前に上様が殿の身をあんじて柳生石舟斎宗厳殿に噂の忍びを警護にさせよと命じて」
「ふぅ〜ん側女じゃないんだ……」
話を聞いていたお初の顔はなぜか笑みに近く見えた。
「黒坂様に家臣ですか……」
「殿は他にも前田利家様の甥御や、あの知将で知られる真田の名を上げられ近々お目見えの手はず」
「……そうですか、いよいよ黒坂様は大名に?」
「いや、客分で居続けるみたいですよ。まぁ~年三万石相当の金子を上様は下さっているので実質大名なんですがね」
「はぁ?なんだかよくわかりませんが、伯父上様と黒坂様がそれで納得しているなら……」
三万石といえば城持ちでおかしくない給金なのですが……変わった方……。
「無欲なの?あの男は?」
「いや、そうではないですよ。武具には興味がお有りのようで……それに食には大変こだわりがあるようで、給仕の者に事細かくこうするともっと美味い!などよく言っておりますから」
「色気より食い気?」
「はははははっ、そうかもしれませんね」
私達は素振りをしている黒坂真琴を見ながら彼の不思議さを語った。




