茶々視点外伝 茶々視点・⑧話・庭に出る黒い影
黒坂真琴様への正式な挨拶を済ませたあと、お江が中心に御幸の間に出入るするようになる。
流石に早朝に邪魔するのはやめさせたが、毎日の様に通うお江、そしてそれを理由に付いていくお初。
私は母上様から来る手紙や侍女の伝言で城外の情勢を毎日確認して、私達を世話する侍女、警護の家臣に指示を出す。
昼下がりになっても戻って来ない日も多くなり流石に黒坂様の迷惑かと思い様子を伺いに行くと、御幸の間の庭で楽しそうに追いかけっこをして遊んでいる。
「キャッキャキャッキャ」
と、笑いながら逃げるお江とは裏腹に、お初は、
「こっちに来るなよ!」
なぜか怒りながら追いかけっこに混ざている。
私は縁側に腰を下ろすと森力丸が茶を運んで来たのでそれを飲む。
「2人は迷惑になってないかしら?」
「暴れ馬殿……あっ、黒坂様は大変喜んでおりますのでご安心ください。部屋にいると怠けるといって庭で鍛錬などしておりますし」
「鍛錬?剣の?」
「いや、それが……素振りは勿論いますのですが、変な動きを……んと……くっしんなどと言っておられます。足腰を弱らせない運動だそうで、また無意味に走り回ってもおりますので……」
「無意味に走る?まぁ~邪魔になっていないなら良いわ」
「茶々姉上様もいっしょにしようよ〜」
お江が誘って来たので私は首を振る。
「私は良いわ。ここで見ております」
「え〜たのちいよ〜初姉上様も汗かくくらい楽しんでますよ〜」
「私は楽しくなんてないんだからね!無意味に庭端から端行ったり来たり全力で走ってるバカが気持ち悪いから相手してあげただけなんだからね!勘違いしないでよ!」
「はいはい、ツンデレツンデレおつ」
「あっ!またなんか知らない言葉で私を馬鹿にしたわね!蹴ってやる」
「うお〜やめろ!お初の蹴りは地味に痛いんだよ」
3人のやり取りを見ていると自然に頬が緩む。
本音を曝け出し遊んでいる2人を見ているとそれを曝け出させる、そして受け入れる黒坂様の度量を感じた。
しばらく見ていると、何やら甲冑の擦れる音が……。
音がなる方向に目をやると、壁をよじ登る黒い影が見えた。
これは間違いなく怪しいやつ!
「お初!お江!」
声をかけるが時既に遅しだった。




