茶々視点・⑥話・黒坂真琴との出会い
「姉上様、またお江がありません」
朝起きて身支度をしている私にお初が言ってきた。
「また御幸の間に忍び込んでいるのでしょうか?見て来なさい。私ももう少ししたら行きますから」
私は髪を梳かして貰っている最中だったのでお初に頼むとお初はすぐに出向いた。
今日、昼前に伺うつもりだったにこんな早朝に申し訳ない。
そう思いつつ侍女が髪をまとめ終えるのを待ち、御幸の間に向かうと御幸の間はドタバタと賑やか。
「きゃはははははは、なめなめおばけこわい〜」
お江の喜んでいる声に対して、
「私は怖くないんだからな!こっち来るなよ」
お初の怒り声。
なにをしてるのでしょう?そっと襖を開けると布団を被った若い男に2人が追いかけられている。
お江が楽しそうなのですぐに遊びだとはわかるが、
「捕まえて足舐めまわしてやる」
「うぉ〜それは気持ち悪いからやめろ!こっち来るな!」
お初が本気で怒りながら逃げ回っていると、布団を踏んでしまった男が倒れかけ畳に膝をついた。
襖の隙間に気が付いた男は下から上に目線を移すと私と目が合ってしまった。
「すげ〜美少女!また増えた!」
「はあ?なにを言っているのですか?」
「はははははっ、ごめんごめん、気悪くした?あまりにも美少女だったから」
「美少女!?そんな事よりあなたは?私は茶々と申します。織田信長の姪です」
確認の為に聞くと、やはり、
「あ〜やっぱり浅井三姉妹か〜そうか〜……」
そう言って立ち上がり、体勢を整えてその男は名乗った。
「俺は黒坂真琴、なんの因果かわからないけど信長様の客分らしいよ」
「はい?らしい?私は命の恩人で伯父上様が側に置くために客分にしたと聞きおよんでおりますが?」
話を続けようとすると、お江が黒坂真琴様の背に飛び乗り怒っていたお初は、尻に蹴りを入れる。
「痛っ!こら〜今度は本気で捕まえて足ぐじょぐじょぬめぬめにしてやる〜」
再び追いかけっこが始まってしまう。
「茶々様、お初様、お江様〜どちらですか〜」
侍女の呼ぶ声とさらに後ろから視線を感じ振り向くと森力丸が困り顔で見ていた。
「お初、お江、一度戻りますよ。黒坂様、早朝から失礼いたしました。またあとで御挨拶を」
廊下を進むと、
「きゃはははははは、またあとでね〜」
お江は手を振りながら私を追ってきた。
お初はぷんすかと怒っていた。
他人に心を許さないお江が気に入るなんて……。
 




