茶々視点・②話・魔王の生還
私たちは母に手を引かれ安土城本丸に入ると、次々と一門・重臣の妻や幼子が集まってきた。
皆、血の気の引いた顔色、そして誰が味方で誰が敵か?
怪しむ視線を感じる。
お初は震えるお江を優しく抱きしめて落ち着かせていた。
早馬で京の都で争いを聞いたであろう留守居役が少ないながらも兵に守りを固めさせる指示をしていた。
母上様はといえば台所に行き侍女達に握り飯を作らせ、それを配っていた。
「不確かな情報に惑わされてはなりませんぞ。兎に角腹を満たし心を落ち着かせるのです」
気丈に振る舞っていた。
過ぎる時間は早く西の空が赤になり少しずつ暗くなりだすと突然外が騒がしくなった。
私はうとうととしているお初とお江を侍女に任せ本丸櫓から外を見ると大手門に続く長い坂を数百の兵を引き連れて駆け上がって来る武者。
漆黒の南蛮甲冑に赤い『マント』と呼ばれる南蛮の布で作られた羽織……
「上様じゃ!上様が生きて帰られたぞ!」
大手門に続く坂を守っていた大将が大きな声で言いふらしながら馬に続いて駆け上がって来る。
私は謀反人を出さない為の小芝居かとしばらくその駆け上がって来る南蛮甲冑の男を見続けた。
すると、森三兄弟と思われる若武者、そして明らかにか体格でわかる弥助が続いている。
「本物の伯父上様?」
目を凝らして集中して見ていると後ろから母上様が私の肩に手を置いた。
「兄上様は逃げるのが上手いから……ん?馬になんだか変わった服を着たものを縛り付けているようね?何かしら?」
目を凝らし見ると確かに伯父上様の馬には南蛮服?と思われる者が、
門近くで馬が止まると、森三兄弟、そして弥助が慎重にその人物を降ろし、
「上様の命の恩人ぞ!急ぎ御殿に運び入れろ!気を失われておる!急ぎ薬師を呼べ!」
森蘭丸が指示しているのが聞こえた。
後に聞くが、伯父上様と共にいた数百の兵は京の都から安土の間に集まった家臣達。
その家臣達が明智の残党と戦いながら逃げ戻って来たそうだ。
そして馬に括り付けられていた男は私の人生を左右する事になるとはこの時予想だにしていなかった。
コンテスト作品(リアルタイム・アルファポリス・コンテスト参戦中、コンテストの結果次第で作家生命が伸びます。作家生命が伸びれば、『本能寺から始める信長との天下統一』続巻出ます)・書籍作業優先の為、不定期更新ご容赦ください。




