⑨⑨話 鬼庭左衛門綱元の坊主頭
【時系列・原作書籍⑤巻・第四章・磐城巡察】
「それにしても左衛門、頭はどうした?」
常陸大納言様のお目通りが許されたことを殿に知らせに行くと飯を食べ茶を飲んでいた。
一息ついたためか私の頭が目に入ったのだろう。
「小糸小滝姉妹を姑息な手を使って抱かせて側室にしようとしたことが常陸大納言様の逆鱗に触れてしまい責めを取って切腹をしようとしたのですが阻止され、謝罪なら剃髪で良いと・・・・・・」
「それで頭を丸めたわけか・・・・・・左衛門に無理難題を押しつけて申し訳なかった。常陸大納言様が女子に優しいという噂は耳にしていたのだが本当だったのだな。ただの女好きではなかったのか」
「女子を物の様に扱うことを黒坂家法度で厳しく取り締まっていることをあとから小次郎様から聞かされました」
「そうであったか、正攻法で常陸大納言様と縁を結びたいから側室をと申し出るべきだったな」
「はっ」
「しかし左衛門、切腹は許さぬぞ。そちは伊達家になくてはならない家臣、儂の許しなしに切腹は致すなよ」
「はっ、しかと心に留め置きます」
「しかし困った。金品は受け取らないと耳にしている。女子も受け取らないとなったらなにを差し上げれば機嫌が取れるのだろうか?」
「常陸大納言様は湯治がゆっくり出来る事を望んでおりましてそれが最高のもてなしだと仰っています」
「さようか、欲がないお方のようだな」
「はっ、しかしながら小糸小滝姉妹を家臣として雇いたいと仰せで」
「女子を家臣?」
「薬師としての知識が欲しいとのこと」
「常陸大納言様が薬師を雇いたいと高札でも出せばすぐに高名な薬師を雇えように」
「小次郎様に聞きましたが女子を集め教育している学校なので女の薬師のほうが色々と任せやすいのだろうとのこと」
「なるほど男薬師だと手を出しかねないか、そこまで考えているとは本当に女子に優しいのだな」
「はっ」
「兎に角ゆっくり語り合いたい」
「殿、そろそろよろしい刻限かと」
「では行くとするか」
殿を常陸大納言様が泊まる宿に案内する。




