⑨⑦話 お江の方様対小糸小滝姉妹
【時系列・原作書籍⑤巻・第四章・磐城巡察】
◇◆◇◆鬼庭左衛門綱元
常陸大納言様がお江の方様に小糸小滝姉妹を紹介したいと申されたので二人を広間に待たせる。
私もその部屋で待っているとすぐに上座の襖が開きお二人は着座した。
「小糸小滝、面を上げてお江に顔を見せてやってくれ」
少しずつ面を上げる二人は完全には上げず途中で止まった。
教えられた礼儀作法。
「それ面倒臭いから良いって言ったじゃん」
「そうわいかねぇ・・・・・・いかないでございます」
「姉様、言葉が変になっているでした」
「あははははっ、面白そうな子達だねマコ。マコじゃなくて・・・・・・殿が言う通り面を上げなさい」
「お江に殿って呼ばれるとむず痒い」
「え~なにそれ~」
お二方は楽しそうに話す中、小糸と小滝は目で合図して面を上げた。
「えっ?さっきの鬼婆と一緒の人?」
「しっ、姉様」
「鬼婆なんて酷いな~」
「言わなくても知っているだろうけど、この姫は俺の側室、家族だ。織田信長公の姪御だが俺と同じで型にはまってはいない。気軽に接してやってくれ」
「気軽にって無理があっぺよ・・・・・・でれすけ」
「しっ、姉様」
「はははははっ」
「ねぇ~マコ?でれすけ?ってなに?」
「間抜けとか阿呆とかそんな感じの罵りに近い言葉」
「あははははっ、大納言なんて身分持ちのマコを罵るなんて面白い子だね~」
お江の方様はしばらく小糸の目を見つめた。
一瞬にして張り詰めた場に変わったがすぐににっこりするお江の方様は、
「で、マコこの二人もう舐めたの?」
「馬鹿、お江、そんな事言うな!」
「あの~舐めたとはお手つきの事でした?」
小滝が恐る恐ると聞くと、
「マコはねぇ~女の子舐めるの好きなんだよ~ねっマコ?」
「だからそれを言うなって言うのっとに。まだこの二人は舐めてないから!」
「うっ、私側室になったら舐められまくられるんだっぺか?べたべたに?」
「しっ、姉様」
「あははははっ、もうそりゃ~いっぱい体隅々ね」
聞いている私が恥ずかしくなってきた。
「お江、この二人には身の周りの事を任せている。侍女として雇った。医学の知識もあるから学校で役に立つと思う」
「マコがそう言うなら反対しないよ。でもね~初姉上様はなんて言うか」
「だから、側室にしたわけではないから!っとになんでお初の名を出すんだよ」
「小糸ちゃん、小滝ちゃん、マコのお世話頼むね。でも~もしマコに対してなにか企んでいるならこうだからね」
扇子を首に当て横に滑らせたときの表情は私ですら寒気を感じる物だった。
何かを秘めた表情、上様の姪御様は単なるお姫様ではないのか?
大きな不安を感じる。
 




