⑦②話 評定
【時系列・原作書籍⑤巻付近】
1588年12月30日
自身の領地で過ごしたいであろう年末に家臣を呼び寄せ評定を開く。
「若、なぜこの様な年末になぜ評定を?さては上方で何かありましたか?もしや出陣?」
「左月その方は綱元に家督を譲ったはずでは?」
「某は目が黒いうちは伊達家の家臣、評定とあらば駆けつけます・・・・・・うっ腰が」
前に乗り出し意見を述べた鬼庭左月斎は腰を押さえる。
左月斎に手を貸し綱元が左月斎を座に戻す。
「慌てるな、出陣ではない。小十郎、例の物を」
評定を開くにあたって用意した地図を家臣に配る。
「これは伊達家の領地、いかがいたしました?」
屋代影頼がどことなく不安げに言う。
「領地替えでもないから安心致せ。この地図には道を描いているがこの道、黒坂常陸様が描いた日本地図に描かれていた物」
「むっ、確かにこの様な道はない」
「これは獣道・・・・・・」
「この道は農民しか使わぬ細い道、なぜ大納言様が知っておられる」
「ん?ここに湖などあったかの?」
家臣達は様々な声を上げた。
「間違いの事は置いておいてだな、街道整備に力を入れるようそちたちに申し渡す。道は国を発展させる。安土から岐阜へ繋がる街道は整備され山の中だというのに宿に困る事は無かった。だが、岐阜から信濃にと北に下ると寂れ山賊まででる始末」
「聞き及んでいる事とは思いますが、黒坂常陸様は街道整備に力を入れております。一度小次郎様を通してですが、仙台まで続く街道を太い一本道にしたいとの申し出がありました」
「あいや待たれよ。その様な道を造れば敵が攻めてきたとき進みやすくなってしまう」
片倉小十郎景綱の説明を遮る鬼庭左月斎。
「左月、我もそう思うたから進めなかったが最早陸での戦は古き戦い。あの武田信玄に仕えた真田安房守が言うのだから間違いあるまい」
「真田安房守・・・・・・」
「続けよ、小十郎」
「はっ、では殿の御命令を代わりに。それぞれには白河の関から仙台に向かう山道、勿来の関から向かう海側の道二本を整備してもらう。その為に区分けをしてある」
「区分け?字が小さくて読めん」
鬼庭左月斎は地図を綱元に渡す。
「父上様、当鬼庭家は海沿いの道に名が書かれております」
「その区分けどうり来年の春より街道整備をしてもらいたい。道は領地を発展させる」
「若殿がそうもうされるなら・・・・・・」
「殿、我の名は書かれてはおらぬが?」
「藤五郎は小名浜の港造りに力を入れてくれ。港は海の道の宿場、なにより大切だ」
「そう言うことか、あいわかった」
「異論ある者は中山道の旅を許す。自身の目で見てこい。年の瀬に呼び出して悪かった。正月は年賀の挨拶不要。皆領地でゆるりと休み雪解けを待ち街道整備に力を入れてくれ」
家臣一同が頭を下げた。
納得出来ない者もいるはずだが藤五郎成実と鬼庭左月斎が異論を唱えなかったことでそれ以上発言出来る雰囲気ではなかった。
退室してその夜、片倉小十郎景綱と藤五郎成実、そして鬼庭左衛門綱元四人で酒を飲んだ。




