㊴話 領内仕置き
【時系列・原作書籍④巻付近】
安土城での大評定のあと領国へ帰ることが許され取って返したかのように1587年正月を米沢の城で迎えた。
師走に近江、正月に帰国。
まるで織田信長公にもてあそばれているようだ。
しかし、そんな愚痴を言っている暇はない。
陸前と磐城の国を賜ったため領土仕置きを早急にいたさねばならなくなった。
片倉小十郎景綱と地図を見ながら家臣をどこに配置するか、そして居城をこの雪深い米沢のままでいいのかを相談する。
「殿、居城は陸前がよろしいかと」
「我はもっと暖かな磐城が良いと考えるが? それこそこの前陣をひいた勿来など良きところではないか?」
「磐城は隣国が・・・・・・」
「黒坂常陸様か」
「居城があまり近いとよろしくないかと」
織田信長公にあまりにも近すぎる黒坂常陸、その為、何か争いが起きればすぐに家名に関わりかねない。
片倉小十郎景綱はそれを心配した。
「だが、冬に雪で閉ざされる米沢から居城は移したい」
「陸前松島の近くなどどうでしょうか?開けた平野、それに海に近く港を造れまする」
松島より少し南の地を小十郎は扇子で差して言う。
「うむ、それで考えよう。居の移転も大事だが黒坂家との境になる磐城には誰を置くが良い?小十郎、そちは我の近くですぐに駆け付けられる地ぞ」
片倉小十郎景綱を置くのが一番なのだろうがそうなると陸前から離れた地となってしまう。
それは避けたい。
「伊達家御一門がよろしいかと」
「回りくどい言い方をするな、藤五郎成実か、血の気が多くての」
「藤五郎成実様は先の戦で黒坂家重臣と共に兵を率いました。黒坂家の力を目の当たりにしており流石に懸念する事は起きないかと」
「なるほど・・・・・・」
「心配なら鬼庭綱元殿を近くにいたせば暴挙は抑えられるかと」
「あやつは思慮深いからな、左月だとなにかと争いそうだが」
「血の気の多い左月斎様が父だから思慮深いかと」
二人で笑う。
そして地図をしばらく見て考える。
「よし、藤五郎成実を磐城の海を見渡せる地に城を築かせそこの城主とする。これからは間違いなく海が要、港は重要だ。藤五郎がもっともわかっているだろう。そして鬼庭綱元には磐城平城城主とする」
「それは良い案かと」
「北の守りは留守政景、父上様には米沢の城に残っていただき最上家への睨みとする」
地図に名前を書いていく。
「我の居城は見聞して決める」
「はっ」
少し遅れた年賀の儀で家臣達に陸前と磐城、そして中納言の位を賜ったことを報告、それとともに加増、領土仕置きを申しつけることとなった。
 




