㉟話 小糸小滝姉妹・前編
【時系列・原作書籍④巻付近】
黒坂常陸様献上側室帳簿を妻の愛に見せたところしばらくじっくりと読む。
一人一人書かれていることを読み逃さないようにしっかりと。
真面目な愛らしい。
しばらくして二人の姉妹の名に驚きの顔を見せた。
「殿、この娘達は我が田村家の遠縁の者で顔見知りです」
「どれどれ・・・・・・安達ヶ原の山姥と噂されていると書かれているが?」
皆、容姿の事が書かれているがこの二人の娘にはその様な一文が書かれていた。
他は、ふっくらしている美人だとか、胸が大きいとか、尻が大きい安産体型だとか良い事が書かれているのに・・・・・・。
「はははははっ、きっと安達ヶ原や磐梯山山麓など薬草を求めて走り回っている活発な娘達だからその様に言われているのかも知れませんね。少し日焼けしていますし、目は大きく鼻が高く美しい顔立ちですよ」
「田村家の縁者か・・・・・・」
「父親が田村家で薬師をしておりましたが早くに流行病で亡くなり、今は母親と幼い弟と四人暮らし、この二人の娘が薬草を採り家を支えていると噂に聞いておりましたがまさか大納言様の側室候補に名が上がっていたとは・・・・・・」
懐かしそうに愛は二人の名を指で軽く指すった。
昔幼き頃、屋敷で遊んだこともあるそうだ。
妻の縁者が黒坂家に嫁ぐ・・・・・・愛の知り合いなら申し分ない。
「この二人なら読み書きは出来ると思いますよ」
「ほう、読み書きが出来る娘なら今から教育する必要はないな」
「流石に城の作法の心得はないでしょうが、父親から医術の指南をされているくらいだったので頭は良いはず。私が礼儀作法を教えればすぐに習得すると思います。女にとてもお優しいと聞く大納言様の所に・・・・・・この二人、今は苦労していると思うので助けになるかしら・・・・・・」
愛は最後一人言として呟いていた。
父親が早くなくなり幼い弟と母親の生活を支えている暮らし。
妻愛の知り合いが・・・・・・愛の為にも手助けをしてあげたい。
だが、安達ヶ原の山姥の一文が気になる。
人を取って食う様な女でもし黒坂家で誰か傷付ける事になれば伊達家の一大事になってしまう。
兎に角、我の目で確かめねば。
「よし、帳簿の者全員と会うつもりだが先ずはこの二人と面通しして決めよう。愛、二人に登城を命じる手紙を書いてくれ」
「はい、かしこまりました」
 




