《インカ金装飾拵鞘太刀と、めぐ●んの杖》(時系列9巻・発売前特別公開SS)
時系列400~450話付近です。
書籍版読んでなくても大丈夫なSSを2022年応援してくださった皆様に感謝を込めて書かせていただきました。
9巻発売まで今しばらくお待ちください。
インカの金の装飾は本当に綺麗だ。
勿論日本の蒔絵技術は劣ってはいないが、こちらは金をふんだんに使う。
蒔絵のように木材に漆を塗り、薄くのばした金を貼るわけではなく、鋳造した金に彫刻するので金の使用率その物が違う。
なぜ今、こんな事を語っているかというと、ファナに友好の証として渡した太刀の鞘が、インカの装飾の物に変わっていたので、手に取り見せて貰っている。
「重っ」
見た目から想像出来ていたが、手に取ると半端じゃない。
全鋳造金で作られた鞘、腰にぶら下げられる鞘の重さではない。
間違いなくずり落ちる。
「ファナ、これじゃ~腰に差せないだろ?」
「なんなんです・・・・・・」
いつもの疑問形が同意の「なんなんです」になって困り顔をしていた。
「太刀持ちと言って腹心に持たせるって手もあるけど」
「なんなんですか?腹心って本当に信頼出来る人の意味ですよね? ボクにそんな人、ヒタチ様以外いるわけないじゃないですか」
確かに国を立ち上げたばかりでイスパニア内通者の可能性はどのインカ人にもあり、本当の信頼は出来ない。
「だったら、あげたときの鞘に戻しなよ」
「・・・・・・はい」
少し寂しそうに返事をする。
「真琴様はわかっていないわね。 日本の太刀をそのまま腰に差していたら日本の手下になったと思われるって考えているのよ。 支配する国がイスパニアから日本に変わっただけって思われてしまうでしょ」
「そんな邪推するのか?」
お初にそう言われて、ファナの顔を見るとコクリと頷いた。
「なら、その鞘に入れる太刀は竹光にすれば良いよ。それを太刀持ちに持たせてファナは権力の象徴として持つ杖に本当の太刀を仕込みなよ」
「あ~仕込み杖ね、確か上杉謙信公が高野山に入るときとか持っていたと聞いたことあるわ」
「そう、仕込み杖」
「なんなんですか? そんなこと出来るんですか?」
「うん、あるんだよ。 まぁ~うちの職人とインカの金細工職人合作ならそれっぽく出来ると思うから任せてよ」
「ボク、ヒタチ様信じてますから任せますね」
そうして俺は、皇帝が権力の象徴として持つ杖『王笏』をデザインして、早速作らせた。
大きな赤色のルビーが輝き、金の蒔絵が施された仕込み杖が作られた。
「なんなんですか? 凄いじゃないですか」
ファナは満足げにそれを王笏とし片時も離すことはなくなるのだが、お初はなにか浮かない顔をしていた。
「あの杖どっかで見たことある気がするのよね~」
とずっと考えているお初に、桜子が、
「御主人様が描いて茨城の城の装飾にも使われている眼帯美少女『めぐ●ん』の杖の形では?ほら、御主人様の印籠の装飾にも」
「わぁぁぁぁぁぁぁ!桜子、それ言っちゃ駄目!」
「ま・こ・と・さ・ま? 異国の皇帝になんて物を持たせるのよ! また、萌美少女が絡んでるなんて信じらんない!」
「元ネタ知らないんだから良いだろ?」
「うっ、そう言われてしまうと真琴様が描いた美少女ってだけで他は何も知らないですけど・・・・・・皇帝に相応しい物語の子なんでしょうね?」
「・・・・・・・」
「なんで黙るのよ!」
「なんなんですか? ヒタチ様と喧嘩ですか?」
杖をスリスリとしているファナを見たお初はそれ以上を口に出さなかった。
いつかファナに爆裂魔法を撃つポーズ取ってもらおう。




