第996話 1633年正月
大日本合藩帝国、二代皇帝織田信忠の喪に服した静かな正月を迎える、織田信長と共に袋田大子城で。
そこに安土から大行列で来たのは俺の孫、織田信長のひ孫で織田宗家の跡取りの織田吉信。
大広間で出迎える。
「まぁ~真琴様のお若い頃そっくりに育って」
茶々が言うと、血縁上祖母であるお初も、
「本当にうり二つ」
「え~マコのほうがもっと柔らかい表情だったよ~」
お江が言うと、桜子は、
「なんて言うか、いやらしさを感じない御主人様?」
「あ~たしかにですです」
梅子が言うと、桃子が、
「御主人様、大丈夫です。あの頃の嫌らしい目つきも好きでしたから」
慰めにならない慰めをしてくれていた。
「御祖母様方々、どうかお手柔らかに」
ニッコリと見せる笑顔がキラキラして眩しい。
「孫との再会の感動はそのへんで良いな。吉信、大切な役目を言い渡す。儂の最期を真琴と二人、看取る役目を言い渡す。最期の時は儂が軍師黒坂真琴と、織田宗家跡取りの二人だけといたす」
茶々達は織田信長がここで死期を待っている理由を知っているため驚きはなかったものの、吉信は戸惑う目を見せたが、グッと一度しっかり目を閉じ落ち着いてから、
「太上皇陛下の最期を看取る大事なお役目、しかと引き受けさせていただきます」
「死後の儂の遺体の埋葬は、すべて真琴の言うとおりとせよ。吉信はそれを最期まで見届け、織田家と黒坂家につまらぬ争いが起きぬようにするのがお前の役目だ」
「はっ、我が名でこの地で葬儀をいたせば、他の織田の名を継ぐ者も口出しは出来ぬと言う太上皇陛下のお考え、この吉信承りましてございます」
なるほど、葬儀を織田吉信の名でしてしまえば、安土で改めてする必要もない。
そして、遺体の埋葬も秘密裏に出来る。
織田信長、そこまで考えていたのね。
「ぬははははははっ、外見は真琴にうり二つだが、真琴より頭が良さそうだわい」
そう上機嫌で織田信長は笑っていた。




