正妃の娘、アルテナ
次話を読んでいただきありがとうございます。
よろしくお願いいたします。
その日はアルシュが7歳になる誕生日だった。
何時もならメルカバーの屋敷にて、祖父母や母親といった屋敷の面子で祝って貰うのが通例だ。一度も、誕生日には父親はこない。その代わり、父親が手作りした魔導具や玩具を誕生日プレゼントとして貰う。だけど、この日は違っていた。皇帝の王宮、皇帝城に呼ばれた。
大きな魔法で動く車、魔導車に乗って母親と一緒に、皇帝城の門を潜る。
十五階建てのビルに匹敵する巨大門を潜り、皇帝城内に入る。
そこは、巨大なお城だった。恐らくキロ単位の広さはある。町のように大きな王宮を進み、広い四車線のような通路を通って奥にいる皇帝、父親に謁見する。
そこには皇帝の威厳を放つアルファス、父親がいた。
なんだ…ちゃんと皇帝してる!
アルシュは思う。
アルシュに合うと、なんか普通の息子を溺愛する父親にしか見えないからだ。
母親ファリティアと一緒にアルシュは、皇帝の高座の下で跪き、父親が偉そうな言葉を放ち、それが終えるとファリティアと一緒にアルシュは下がり、別の部屋に行く。
そこはアンティークに包まれた部屋で、テーブルにお菓子や飲み物が置かれていた。
セルフサービスである。
アルシュは何となく、それを摘まんでいると、ドアがノックされる。
「入りますよ」
入って来たのは、金髪、見るからに豪勢なドレスを纏った鋭い感じの美女である。
その右には、同じ金髪で似た顔をしたアルシュの同年輩の女の子がいる。
ファリティアは直ぐにお辞儀して
「正妃ヴィクティア様、このような身に余るようなお心遣い感謝します」
そう、この金髪鋭い美女が正妃ヴィクティアで、その脇にいるのが、娘のアルテナだった。
「構いません。アナタもあの人の寵愛を受けた者。自分を貶める事などありません」
おお…余裕だね…とアルシュは思っていると、付いて来たアルテナがアルシュの手を取り
「お母様、この子と遊んで来ます」
アルシュを引っ張っていった。
アルシュはアルテナに連れられ個室に来ると、ニコニコしていたアルテナの顔が鋭い感じに変わる。
「え…」とアルシュは固まるとアルテナがアルシュの口を掴み
「いい気になるんじゃないわよ! この下郎」
えええ! 初対面でこれですか!
「アンタは、アタシの下なの。なのにいい気になって」
アルテナはアルシュの腰にある玩具の剣を取る。
それは、父親アルファスが作ってくれた玩具だ。
それをアルテナは、真っ二つに折った。
えええええええ!
アルシュは困惑する。
その折れた玩具の剣でアルテナはアルシュに殴りかかる。
「アンタなんか! アンタなんかーーーー」
何度も殴るアルテナに、アルシュが怒り
「いい加減にしろーーー」
怒鳴った瞬間、アルシュの背後から深紅の鱗の獣腕が飛び出しアルテナの殴る玩具の剣と、後ろにあった扉を破壊した。
アルシュの背中から浮かび上がるそれは、深紅の竜の上半身だった。
ゴオオオオオオオオとつんざくような竜の咆吼が響き渡り、それに大勢が駆け付ける。
アルテナは腰を抜かしてその場に座り込み。
その正面に、深紅の竜の上半身を出すアルシュがいた。
それを見ていた全員が驚愕に包まれていた。
読んでいただきありがとうございます。
次話もよろしくお願いいたします。
ありがとうございます。