1-1 疑心暗鬼の末路
クラヴ視点のお話です
プロローグ~2話の補完部分ですので
まずはその部分を読んでください
村は平和だった。
皆、問題も起こさず
いつも通りの日々を過ごしていた。
最近やってきた夫婦とその子供達も
この村に馴染んできてくれた。
男の子は活発で、みんなの手伝いをしながら
村を走り回っている。
その妹の女の子は
母親に付きっきりだが、たまに
兄の手伝いに一緒に居るのを見る。
今日も村は平和だ
それはとてもいいことだった
・・・しかし、ある日盗賊達がやってきた。
近頃、近辺の村を襲い回っている奴らだ
そいつらが来てこの村は終わりだと思った
少年は、彼らの目にとまり
連れ去られようとしていた
・・・ただ見ているしかなかった
抵抗したら村の人々にも多大な被害が出る
しかし、少年は目の前の盗賊を思い切り
殴り飛ばし、遥か彼方へ吹き飛ばした。
私は絶句した。
まだ子供だというのに、その力は明らかに
異常だった
その後、盗賊どもはたったひとりの子供に
追い返された
最初は安堵したが、今度は少年が消えた
村の人達が捜索したが、最終的には
父親が見つけたそうだが・・・
彼の話によると、どうやら盗賊団を
壊滅しに行ったらしい。
まさかとは思い、次の日に少年に
その場所を案内させた。
入口につくと、血の匂いがした
不安は膨れ、私は彼に前を歩かせた
もしもの場合は、後ろから毒を塗った矢で
眠らせてしまおうと思っていた
・・・結果、不安は見事に的中した
盗賊達は無惨な死体と成り果てていた
至る所に血と死体が転がっていて
まさに地獄といった光景だった
私は即座に少年を矢で斬り倒した。
少年が驚きと悲しみの目でこちらを見るが
私には迷いはなかった。
すぐに矢でもう1度斬り、少年を眠らせた
私は誰にも見られぬうちに少年を
村の奥にある洞窟に閉じ込めた。
そして信頼できる数人を呼んで
彼を槍で殺した・・・
・・・・・・ハズだった。
元から怪我をしてもすぐに治っていたので
多少の違和感はあった
しかし、この目で見て確信した
彼は、化物なのだと
刺した槍は再生された肉に弾かれ
その場に転げ落ち、血はやがて
霧のように消えた。
・・・私は恐怖した
こいつがいずれ牙を向く前に殺さねば・・・
そう思い、彼等と共にこの怪物を
必ず殺そうと決意した
そしてしばらくは彼を槍で殺す日々が続いた
・・・その3年後のある日、彼の父親に
少年の居場所がバレた。
「・・・頼む、息子を返してくれ」
父親はそう言って頭を下げた
このまま返せば、私のしでかした事がバレて
私の信用・・・いや、全てが台無しになる
私は・・・・・・父親の首をナイフで刺した
刺されていながらも彼は私の腕を掴み
返してくれと呟いた・・・
恐怖で彼の手を振りほどくと
父親はそのままピクリとも動かなくなった
・・・ああ、私はどうしてこんなことを
ただ、この村で平和な日々を過ごしたかった
だけだというのに・・・
次の日、私はこっそりと父親の遺体を
棺桶の中に入れた
少なくとも棺桶の中を覗こうとする者は
居ないだろうと考えてのことだった
昼頃、自宅でのんびりしていると
洞窟の方から悲鳴が聞こえた
恐れた事は現実になった
家の外に出ると、怪物が
暴れ周り、村人達を虐殺していた
平和だった村は、あの盗賊達のように
血まみれとなった
彼がこちらに気付いた。ああ、嫌だ!
どうしてこうなったんだ!どうして!
彼は狂気の笑いを浮かべながら
こちらに向かってくる・・・
ああ、嫌だ!死ぬのは嫌だ!!
近くにあった槍で私は怪物を貫いた
・・・しかし、気が付くと私の両腕は消えていた
いや、正確には吹き飛んでいた
「・・・・・・え・・・・・・?」
「・・・・キヒ・・ハハハ・・・」
私は空を見ていて、身体の感覚が消えた
怪物の笑い声が聞こえた・・・
ああ・・・・・・死ぬんだな・・・
視界は段々赤くなり、やがて
思考も視覚も、何もかもが
消えて・・・失われた