5-Ex 全ては
ふと描いたらふわっと出来た(´ω`)
「…」
既に息絶えたソレは、今まで見た事がないくらいの、綺麗な笑顔だった
自分の強さを証明できた、師匠の願いも叶えることが出来た。なのに何故だろう、何も感情が湧いてこない。感情が遅れているのかとも思ったが、そういった感じでもない。ただ、ぽっかりと穴が空いているような、そんな感じだった
「…そういえば」
師匠から最後に貰った赤い鍵。確か師匠は葉華と一緒に…って言ってたけど、何処で使えばいいんだろうか
いや、考えるのは後にしよう
「…さようなら、師匠」
最後に、師匠に向かって別れを告げる。そういえば、コレは仇討ちでもあったっけ。なら、もう少し喜べるとも思ったんだけど…何でこんなにも感情が希薄なのだろうか?
そんな事を考えながらも、屋敷へと戻り、葉華が眠る私達の部屋に行く
鍵はかかっておらず、ドアを開けると、まだ葉華がベッドで穏やかに眠っていた
「葉華、起きて」
優しく揺すりながら、声をかける。葉華は眠たそうにしながらも、目を開けて私の方を見る
「どうしたの…お姉様…」
「一緒に帰ろう。私達の家に」
「…?うん…分かった」
自分で言っていることが滅茶苦茶だった。帰り道なんて分からない、そもそもここからどう行けばいいのかも分からない
ただ、私は何かに引き寄せられているかのように、部屋のドアに、師匠から貰った赤い鍵を差し込んでいた
そもそも鍵穴すらなかったはずのそのドアに、鍵は何の違和感もなく回った。回した途端に、ドアは赤い色に変わり、勝手に開いたかと思えば、眩い光が私達を飲み込んだ
……………………………………………
「…ねえさ……お姉様………」
「…ん」
葉華の声で目が覚める。そこは紛れも無く私達の家だった
「ようやく起きた…朝ご飯の時間だから、早く食べましょう?お母様もお父様も待っていますよ?」
…母さんと父さんが?そんな、まさか
「きゃっ…もう、急ぎ過ぎです、お姉様!」
ベッドから飛び起き、すぐさま1階に降りる
「あら、おはよう斬華」
「…どうした、斬華?そんなに驚いて」
そこにはいたのは、紛れも無く、母さんと、父さんだった
「……嘘」
その場に崩れ落ち、私の目から涙がボロボロと流れ出した。死んだはずなのに、殺されたはずなのに、目の前には、確かに2人が生きていた
「ど、どうしたんだ斬華!?」
「…悪い夢でも見たのかしら。大丈夫よ、斬華」
2人が私の傍に駆け寄り、背中をさすってくれる、抱き締めてくれる。あの懐かしい温もりに、また包まれている
「あ、う…うぁぁ…あぁぁぁぁあああ!!」
「よしよし…もう大丈夫よ…」
「大丈夫だぞ、父さんと母さんはちゃんと居るからな…」
私は暫く、その場で泣き続けた。声を聞いた葉華もやってきて、私は泣き疲れてご飯も食べずに眠りについてしまった…
………………………………
「…ん」
「おはよう、斬華」
母さんが、いつの間にかまたベッドで寝ていた私に膝枕をしていた。…やっぱり夢じゃなかったんだ
「おはよう、お母さん」
笑顔で答えると、母さんも微笑んでくれた
…そっか、あれは全部、悪い夢だったんだ
「ねぇ母さん、私、ずっと悪い夢を見てたんだ」
「そう…どんな夢だったの?」
…私は、母さんに今までの事を全部話した。母さんと父さんが兄に…師匠に殺されたこと、その後色んな場所に出て、色んな経験をして…最後に、師匠を…悪い怪物をやっつけた事
「ふふ…凄く長い夢を見ていたのね…そう、それで今朝はあんなに泣いちゃったのね。…よしよし」
母さんが、私の頭を優しくポンポンする。思わずまた泣きそうになるが、それをぐっと抑える
「うん…うん!もう大丈夫!!」
いつも通りの元気な笑顔を母さんに見せる。そしてすぐにベッドから降りて母さんの手を掴む
「お母さん!ご飯食べたい!!」
「あらあら、すっかり元気ね。分かったわ、すぐに作るわね」
うん。きっとあれは全部悪い夢なんだ。だとしてもすっごいリアルだったなぁ…
「あ…ごめん母さん、その前にトイレ…」
「ふふっ…じゃあその間に作っておくわね。ちゃんと手洗いも忘れずに」
「はーい!!」
そう言って2人で下に降りて、私はトイレを済ませて洗面台で手を洗う。ついでに顔も洗って、タオルで拭いて…
…?
「……なんで」
思わずタオルを床に落とす。…訳が分からない、見間違い?でも、皆は何も言ってない、言わないはずがないんだ
…目の前に映っていたその目は、色は、師匠の色と全く同じだった