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3-18 昔の日常 ~グラッド&グラス~


 「おい!!!今日の従者は何をしておる!!テーブルが傷ついてるではないか!!」

 

 「申し訳ございません、すぐに新しい物を・・・」

 

 「知るか!!お前は1週間部屋から出てはならん!誰もそいつに食事を与えるな!!!」

 

 

 ・・・今日もまた、旦那様の八つ当たりで人が虐げられている。まだ若く、入ったばかりの女性に対してひどい仕打ちだとは常々思っている

 

 

 「そ、そんな・・・!!」

 

 

 女性はわんわんと泣き出す。・・・同情もするが、それでも、ここでは自分の保身が優先される。皆、彼のそこそこ高い給金で生きているのだから。下手な事をして、それがバレたら一巻の終わりだ。最悪、適当な罪を擦り付けられて死刑台に運ばれることだってある。数ヶ月前に、旦那様に楯突いた男性の従者が、殺人や強盗などのありもしない罪で処刑されて以来、皆、自分のことで精一杯の振りをするようになった

 

 旦那様が不機嫌なままどこかへ出かけて行ったのを見送ってから、彼女のフォローに入る

 

 

 

 「・・・大丈夫よ、悲しむ必要はないわ。旦那様はただ機嫌が悪かっただけだから」

 

 

 周りの人達は、いそいそと自らの仕事を進めている。こちらに関わろうとはしない。むしろ、私がおかしいのだ

 

 

 「ひっく・・・で、でも・・・1週間も何も食べなければ・・・」

 

 

 怯えている彼女に、他の人たちに聞こえないように耳打ちする

 

 

 「大丈夫、夜になったら私がこっそりパンを届けるから。それで乗り切って」

 

 「ぐ・・・グラス先輩・・・!!」

 

 

 

 感激のあまり抱きつく彼女を、優しく抱きしめる。・・・こんな優しさが助けになるのなら、私はいつまでもこれを続けるだろう。

 

 ・・・それが、自分の支えにもなるのだから

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーとある闘技場ーーーーーー

 

 

 

 「さぁ今日もやって参りました!!元貧民にして、この闘技場のチャンプに上り詰めた男、グラッドの試合が始まるぞぉぉぉぉ!!!」

 

 

 ・・・今日もまた、挑戦者を迎え入れ、叩きのめすだけ。そう思いながら闘技場の中央に立ち、観客の皆を見回す。本日も満員、全くもって嬉しい限りだ

 

 

 

 「対する挑戦者はぁぁぁ!!数々の猛者をその鉤爪で斬り裂いてきた、ザ・リッパー!!!!」

 

 

 相手の入場で、観客がまた一層に騒ぎだし、ヤジを飛ばしてくる

 

 

 

 「やれー!切り刻んでやれーー!!」

  「グラッドー!返り討ちにしてやれー!!」

 「今日も期待しているぞー!グラッドー!!」

 

 

 

 やいやい飛んでくるヤジは、大抵が同じ内容ばかり。正直聞き飽きもするが、見てくれているのであれば、その期待に応えない訳にもいかない

 


 「ひひぃ・・・ボォーっとしやがって。随分と余裕だなぁ!スティーリア!!」

 

 「ええ、今日も周りの皆様を楽しませるように、精一杯頑張るだけですので」

 

 「ちぃ・・・舐めた態度とりやがって・・・すぐに跪かせてやらァァァァ!!!」

 

 「試合開始いぃぃーーーーー!!!」

 

 

 

 くだらない雑魚の相手ばかり。毎日がこうではさすがに飽きもする。どんなに搦手を使っても、どんなに強力な武器で来ても、それが掴めるのであれば、私にとっては等しく同じ雑魚

 

 

 

 

 


  ・・・・・・・・・そして相手をボコボコにして、観客から金をむしり取る。変わらない、くだらない日常だと、最近は思うようになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 『 『 誰か、この下らない(不幸な)日常を変えてくれないだろうか』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 「・・・とまぁ、後は知っての通りです。私はグラスさんと同じ職場で働くことになり、その数日後に彼がやってきた。それだけですよ」

 

 「もう・・・。あ、そういえばどうしてこっちに来たの?貴方は職にもお金にも困ってなかったでしょうし・・・」

 

 「ただ単に、元旦那様の口車に乗ってみただけですよ。喧嘩ばかりじゃあ、退屈でしょうがないですからね」

 

 

 

 ・・・グラッドとグラスの会話を横で聞いていて、ふと疑問に思うことがあった

 

 

 「ねぇ、そういえば貴方達はどうしてレクイエム様と一緒にいようと思ったのかしら?」

 

 

 「ああ、それは簡単ですよ」

 

 「ええ、とっても単純な理由です」

 

 

 「・・・・・・?その理由って何?」

 

 

 「「彼に、感謝しているから」」

 

 

 二人揃って、全く同じタイミングで返答してきた。・・・職場では会って数日だったというのに、随分と仲の良いこと・・・

 

 

 

 「・・・?どうかなさいましたか、終華様?」

 

 

 「・・・いいえ、なんでもないわよ」

 

 

 

 ちょっとしたお茶会から離れ、廊下をあてもなく歩き出す・・・

 

 

 

 

 

 

 ・・・こんなにも好かれているのに、どうして彼は・・・

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