3-9 昔の日常 ~オルレア~
「おねーちゃん!!お花さん達の水やり終わったよー!」
「ありがとう、リィー。それじゃあ、そろそろご飯にしましょうか」
2人で庭の手入れをし終え、家の中へと戻る。リビングに行くと、既に母様と父様がお昼ご飯の準備をしていた。私達を見ると、笑顔で迎えてくれた
「あら、おかえり。二人とも、ちゃんと手は洗うのよ?」
「はーい!早くいこっ、おねーちゃん!」
「はいはい、分かったからそう引っ張らないで・・・もう・・・」
リィーネに引っ張られ、傍の水道口で手を洗う。いつもの事だけれど、皆と一緒に居られるのが楽しい
手を洗い終え、椅子に座る。そしてお昼ご飯を食べながら、父様が私に話しかけてきた
「そういえばオルレア、最近フレイと仲がいいらしいな」
「えっ・・・べ、別にそんな・・・」
「あー!私も聞いてるー!おねーちゃんとフレイさんが付き合ってるって!」
突然自分の恋愛話に発展させられ、食事の手が止まり、顔が真っ赤になる。・・・リィーネったら・・・余計なことを言わないで欲しいのに・・・
「あらぁ・・・?もう少し詳しく聞かせてもらえないかしら、オ・ル・レ・ア?」
母様の逆鱗にでも触れたのか、笑顔で恐ろしい声を発する。手に持っていたナイフもフォークも、いつの間にか逆手で構えていた
「だ、だから!ただ一緒にいるのが少しだけ楽しいなーって思ってるだけなの!」
「あらぁ・・・ならその事を隠してたのはどういうことかしら~?」
「だ、だから!!」
「ごちそうさま。それじゃ、頑張るんだぞ、オルレア」
「おねーちゃん!早く綺麗なカッコを見せてねー!!」
「ちょっと!私を置いていかないでよ!!」
父様とリィーネが先に食事を終え、足早に立ち去ろうとする。その後を追って逃げようと立ち上がると、母様がナイフをテーブルに突き刺し、脅しをしてきた
「オルレア?まだ話は終わってないわよ?」
「・・・ううぅ・・・」
~その後、説教を延々と聞かされ気が付けばもう3時を過ぎていたのだった~
もう、酷い目にあった。父様もリィーネも、あんなにあっさり言ってしまうんだもの。・・・とても疲れるわ
外に出て気分を戻そうと街を歩いていると、偶然にもフレイと出会ってしまった。気分が戻すどころか、とても嬉しかった
「やぁ、オルレア。どうしたんだい?そんなに落ち込んで」
「フレイ・・・その、なんでもないわ。ただ母様に叱られただけだから」
「相変わらず固いね、君のとこのお母さんは。あ、そうだ!今からどこかへ出かけないかい?」
突然フレイがそう言い出し、 顔がまた紅くなる。・・・デートのお誘い・・・よね?今日は私も用事は無いし・・・いっか
「ええ、構わないわよ」
「そうか!丁度新しいお店が出来たから、そこに行ってみよう!・・・さぁ、手を握って」
差し出されたフレイの手を、そっと握る。彼の暖かい手に包まれ、少しだけ嬉しい気分になれた
「ええ、エスコートは任せたわよ」
「ああ!きっと君を楽しませてみせるさ!!」
・・・彼とこうやって一緒に出かけるのも、今では日常になっている。お茶を飲んだり、その辺の野原で話し合ったり、街を見て回ったり・・・
とっても楽しい日々が、これからさらに楽しくなるのだと・・・ずっと思ってた
あの時まで・・・
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「へー、終華さまってそんな過去があったんですねー」
イヴリーが蔵書庫にいる私を見て、過去の話を聞きたいと言ったので、その話をした。・・・あまり、気分のいい話ではないが
「そうよ、そしてフレイに裏切られ、皆からも裏切られ、父様も母様も死んだ。そして怒った私が街を壊して・・・暫くしたら、彼が来たのよ」
・・・私にとっての、運命の方。もしもこの人と一緒になれるなら、どれだけ素晴らしいだろうか。そんな想いをずっと抱いていた。彼の居なくなった今でも、きっと戻ってくると信じている
「・・・でも、彼はもういないのよね」
「・・・・・・その彼って?」
「この世界のか・・・元主様。どうにか止められなかったのかしら」
「さぁ?それは僕達には分からないことです。・・・ご主人様なら、何か分かるかもしれませんが」
「いいわよ、別に聞きたいほどってわけじゃないし。・・・あ、何か本をお願いできるかしら?」
「はい!それでは取ってきますので少々お待くださーい!」
イヴリーが飛び立っていくのを見てから、ぼそりと小さく呟く。誰にも届かないであろう、悲しい声で
「・・・・・・やり直せればいいのに」