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彼女が拒絶するなら仕方ない。でも受け入れてくれるなら

 「なに?俺がサイファーと会話をしたり手を繋いだりしているのを他人が見ているってだけで俺が生きるのに支障を来すっての?サイファーと仲が良い所を見られると、買い物をすることも出来なくなったり、最終的には町にいられなくなるって?だから、他の奴らと同様に普通のメイドとして接してくれと。さっきまでの好意を示すような言動は一切しないでくれと。そう言っているのか?

 はっ!だとしたら、サイファーのお願いだとしても、受けることは絶対にできないね。さっき国王に言ったとおり、サイファーと話したい仲良くなりたいってのがこの世界に来た俺にとって唯一の目的だ。

 でもね、サイファー。だからといって、サイファーが心の底から俺と仲良くなりたくない。視界に入ることすら許可しないと俺の事を拒絶するなら涙を呑んでサイファーに一切近寄らないと誓う。だけど、そうじゃないだろ?」


 窓際に立ち続けているサイファーの傍に近寄り、許可を得ないまま右手で彼女の手を握り、左手で彼女の頭を撫でながら、真っ直ぐ目を見続けて話を続ける。なんか、小さい子をあやしているような状態になってしまったが、俺得すぎるので何ら問題ない。え、問題ある?そもそも女性の髪を無断で触ることが禁忌?・・・さーせん。


 「教会で暮らしていた頃は問題なかったんだろうけど、城で働き始めて、希少種だと知られてからサイファーがどんな仕打ちを受けてきたかは分からない。イジメはなかったと言ってたけど、距離を離されるってのもイジメの一種だと俺は思っている。これは俺の予想だけど、自分に近寄ることで相手が何か損をする状況を作ってしまうと考えてるんじゃないか?だから自分の傍にいると俺が町で暮らせなくなる可能性が出てくるかもと考えたんだと思う。無理矢理召喚された異世界人が、この世界では何の伝手もないうえに、希少種である自分と仲良くすると生きていけないだろうと判断した。だから俺に好意を向けないでと願った。

 さっき言ったが、これは俺の予想だから合ってるかもしれないしまるっきし違うかもしれない。でもさ、ばっさり切り捨てるけど、そんなことはどうでも良いんだよ。まあ、俺の予想通りならサイファーはとても優しい子ということになるけどね。ただ、それは自分を犠牲にしているだけだ。他者と繋がりを無くしてしまってはサイファーが幸せになれないじゃないか。」


 話を止めて、サイファーに向けていた目を一旦リンクと姫さんに向ける。二人は無言無表情で俺の話を聞いていたようだ。もしかしたら俺の言葉を右から入れてそのまま記憶に残らない様に左に流していたのかもしれない。い、いいや。だってサイファーに聞かせるために言ってただけだし!!ほかの奴らが聞いてなくても、悲しくなったりしないし。


 「それに、最低でもサイファーに偏見を持たずに離れなった人たちはいるだろ。ここにいる姫さんやリンク。会っていないが勇者もそうらしいし、教会の人たちだってそうだ。皆、サイファーと離れないからって他者から嫌なこと言われたりされたりしたってことはないだろ?まあ、色んなことを話していたけど、重要なことは一つなんだよ。」


 サイファーを再度ソファに座らせて、騎士が姫に忠誠を誓うかのように片膝を付いて下からサイファーを見上げながら言葉を発する。


 「俺が君の傍にいたいから好意を向ける。それを頭にでも心にでも留めておいてほしい。勇者を助ける為に呼ばれたが、そんなのどうでも良い。ただ、勇者を助けたら君と暮らすことが出来るからやるだけだ。君の声が聴きたいから会話をしたい。君のぬくもりを感じたいから手を繋ぎたい。君が笑ってくれるなら、君が喜んでくれるなら、君が泣かないでくれるなら、君が困らないでくれるなら、俺は何でもやる。

 だけど、その為に自分を犠牲にすることはしないよ。俺が傷付くことで君が悲しむかもしれない。俺自身を犠牲にすることで君が誰もが羨む幸せを得るかもしれないけど、そこに俺がいないのは辛い。

 だから、基準を設けたうえで俺は自分の好きなことをする。サイファーと一緒にいる為なら自分以外のすべてを犠牲にしてもかまわないとさえ思っている。

 サイファーだって、君がしたいことをして良いんだよ。誰しもが行っている事なんだから。おいしい食事をしたい、友人と遊びたい、読書をしたい、旅をしたい、何でもいい。今やりたいことがないなら、今までやったことないことに挑戦すればいい。そうやって自分が好きだと思った事をすればいい。」


 俺は最後の確認を得る為に立ち上がり手を差し伸べた。さっきから俺が喋りまくっているけど、ちゃんと聞いてくれているのだろうか。後ろで聞いている(といいなぁ)リンクたち同様、無表情なんだもんな、サイファー。半目なのは相変わらずだけど、右から左に流していないよね。俺が話し終わって「すみません、聞いてませんでした。」なんて言われたら窓から飛び出して死の世界に辿り着いてしまうだろう。


 「今まで君が他人と接していたやり方を否定はしない。それは君が生きる為に必要だと思っての行動だから。これからはそれを徐々にでもいいから変えていってほしい。どんなことになっても俺が傍にいるから。

 何度も伝えるけど、俺は君の傍にいたいし仲良くなりたい。そんな俺の願いを叶えて欲しいんだ。

 もし、君の傍にいて良いと。俺と仲良くなりたいと思ってくれるなら、この手を握って欲しい。これは強制じゃないよ。ここで俺の手を握らなかったとしても勇者は助けるし、サイファーが希望するなら会わない様に行動するから。」


 喋り終え、手を差し伸べ続ける俺。そんな俺をじっと見続けるサイファーをさらに見つめ返す。お、おう。ずっと見られるってのは気まずいな。これが、顔を赤らめながら熱を持った視線だったら俺の理性が機能しなくなって行動に移ってしまうだろ。ああ、そんな状況に陥りたい!!そんな未来を夢見ることが出来るかは今のサイファーの行動にかかっている。

 さあ、どっち?!


 「今までのわたしを否定しないで頂いていありがとうございます。わかりました。今までの考え方を直ぐに180度変えることはできませんが、少しずつ変えていこうと努力します。ですので、それまでも、それからもタカヒロ様が嫌いになるまで、わたしの傍にいてください。間違ったことをしてしまったときはきちんと注意していただきたいと思います。これからよろしくお願いします、タカヒロ様。」


 サイファーは立ち上がり、差し伸べ続けた俺の手を握りながらこれからよろしくと半目無表情のまま言ってくれた。

 希望通りだけど、きちんと言葉で、行動で示されたので喜び値が高くなりすぎて、手を握ったままサイファーを抱きしめてしまった。自分の行動に驚いたが、無意識の行動なので仕方ないと考えた。国王達の前で彼女を抱きしめた時は離れようとしていたが今回はそんな素振りがなく若干震えていた。ま、まずい、嫌だったかな。これ以上彼女に不快な思いをしてほしくないのでゆっくり離れよう。




 サイファー視点


 ま、また抱きしめられました。同い年ぐらいの男の人に抱きしめられるのはタカヒロ様が初めてだけど、こんなぽかぽかした気持ちになるものなのだろうか。わたしの目を見ながらタカヒロ様が喋っていたけど、その時のわたしの顔、赤くなってたかな。恐らく今は顔が真っ赤になっていると思うけど、タカヒロ様に抱きしめられているので見られないから安心。・・・したのも束の間、そんなわたしを見ている姫様とリンク様。目を手で覆ってますが、指の間から目が見えてますよ姫様。ニヤニヤしてこっち見ないでくださいリンク様。

 今後、わたしに対して偏見を持っていないお二方はこの件でいじりに来るかもしれません。出来れば、タカヒロ様がいない時にお願いします。と心で思う。

サイファー視点というのに挑戦してみました。

まあ、タカヒロの最後の方の言動に対してのみですが。

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