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『勇者を助けろ。褒美はないがな。』だと?

 「今の勇者の状態はまさにその『困難』を受けているんじゃないか?だとしたら自力で解決できるのでは?」

 「それには深いわけが・・・」

 「嬢ちゃん、ちょっといいか?ここからは俺が話そう。」


 姫さんが言い辛そうにしていると先程俺の肩を叩いた男性が割り込んできた。姫さんは話の続きを彼に任せることにしたのか、立ち位置を少し後ろにずれて会話を聞こうとしている。


 「まずは、自己紹介からな。俺はリンクっていう。さっきから出てきている勇者の仲間の一人だ。ハルバードを使うことで近接間接問わず戦っている。趣味は町中を歩くことだな。あんちゃんは?」

 「俺は高広。知ってると思うがそこの姫さんに呼び出された異世界人だ。戦うっていうか喧嘩をしたことがないので戦力として入れないでくれ。これといった趣味特技はないが、こっちの世界を歩くのを楽しみにしようかと思っている。」

 「お、あんちゃん俺の趣味と合いそうだな。勇者なんてほっといて一緒に旅でもしてぇな。」


 こいつ。勇者パーティメンバーなのに勇者と仲良くないのか?今まさにピンチってる奴を捨てて自分の趣味を優先したいだなんて・・・有りだな。まだ見ぬ勇者は知らんがリンクとは仲良くなれそうだ。まあ、さすがに今のは冗談だとは思うがな。今の言葉が本心なら、自分の好きなことをする為なら仲間でも捨てると解釈できる・・・有りだな。


 「ちょ、ちょっと待ってください。お兄様を見捨てるのですか?幼馴染で毎日遊ぶほど仲が良かったのに。勇者の困難に巻き込まれたくないから近寄らないという人がいるのに、いつもお兄様の傍にいてくれたリンク様が。」

 「おいおい、嬢ちゃん。俺らが恋人同士であいつが寂しい思いをしないで済むように俺がいつも近くにいるような事を言うんじゃねぇよ。ほら、そんなことを聞いたらタカヒロが俺から距離を、取らねえ?!」

 「何だ、リアクションを取ってほしかったのか。マジかと思ったぞ。」

 「いや、普通に考えたらそれ逆だろ。俺らが恋人同士ってことを真に受けたら『うわぁ~まじか』とか思いながら俺から離れる動作を取るだろ、普通。」

 「なんでだ?まあ、俺は男性を恋愛対象としてはいないが、男性を恋愛対象にする男性だっているんだし。現に、俺の兄さんは男性としか付き合っていなかった。」

 「なるほどな。そうだよな、そういう奴だっているよな。だが、俺は女性が好きだからな、覚えておけ。」


 自己紹介をしていたのに、何で恋愛観の話になってしまったんだろう・・・。数時間前までは一緒に暮らしていたけど、ここは異世界だからな~。兄さんの話をしたからちょっとホームシックだわ。


 「話は戻すが、勇者の受ける困難ってのが、今受けてるのではないってのは理由がある。勇者は12年前からずっと困難に立ち向かっているんだからな。」

 「12年前から受けた困難が現在でもまだ解決していないのか。ということは、一つの困難を受けたら他の困難は受けないってことか。」

 「理由は知らんがな。つまり、今迷宮で戦っているのは勇者としての困難じゃないってわけよ。だからそんな勇者を助けるために呼ばれたのが、タカヒロってわけよ。」


 勇者が受ける困難じゃない問題で立ち往生してるのはまずくないか?もし、今回の問題を俺が解消した場合、今後も問題が起きたら勇者の元へ派遣されかねないな。


 「で、問題ってのが、俺はハルバードで攻撃して勇者は剣で攻撃してたんだが全く刃が立たなかったんだよ。相手が防御したり上手い具合に避けたりしてるわけではなさそうだったな。そいつが扉の前に陣取ってるから倒さないと奥に進めなくてどうするかって話になり現在に至るってわけよ。」


 ハルバードと剣ってことはどう攻撃しても直接物理攻撃か。簡単に思いつくのは直接攻撃無効か物理攻撃無効かのどちらかか。もしくは、俺みたいに攻撃無効って線もあるか。あ、そうだ。本当に攻撃の無力化が発動しているか後で確認してみないとな。


 「ん~考えられるのがいくつかあるが、剣や槍以外で攻撃はしたのか?それと、その敵は見たことある奴なのか?」

 「武器はその二つしかなかったからそれだけだな。もう一人の仲間は回復魔法や補助魔法を使えるが、攻撃魔法はからっきし。俺は初めて見る敵だったな。反応を見る限りほかの二人もそうだと思うが。」

 「ふ~ん。・・・ところで勇者を助けるために呼ばれたが、それって俺に褒美ってあるのか?」


 周囲を見渡し、最後に女王と国王に目を向けて言葉を放った。女王が喋ろうと口を開きかけたが、喋り始めたのは国王と並んで立っていた男性の一人だった。


 「この世界で唯一存在している勇者を助けることが出来るのだ、とても光栄なことであろう。さらに、頼んでいるお方が王族となれば一般人にはそれがなによりの褒美になるのは当然ではないか!!」


 お?なんかバカなこと言ってるぞ、このおっさん。マジか、一から説明しないと理解できないのか?おっさんに理解してもらって改めて質問するか、おっさんを無視して国王たちに同じ質問をするか。どうすっかなー。


 「落ち着きなさい、宰相殿。あの方は異世界の人なんだからこちらの常識を知らないのは仕方ないことです。器を大きくしなければいけませんよ、国の中心である城で働いているのですから。」

 「は、申し訳ございません女王様。少し頭に血が上っていたようです。」


 一応おっさんを注意しているけど、今の女王の言葉って異世界人って理由だけで俺を貶してるよな。実際俺は一般市民だからどうでも良いですけど。


 「どうやら、俺に対して褒美の品とか用意するつもりなかったってわけか。じゃあ、ここで二つの選択肢を与えるからどちらか選んでください。

 一つ目、俺が希望する褒美を用意してくれるなら喜んで勇者を助けに迷宮に行きます。

 二つ目、俺に一切褒美を与えることをしたくないっていうなら、この依頼は受けない。

 さあ、どちらを選びますか?」


 このまま城を去ってもよかったけど、あのメイドと接することが出来る機会がなくなるのは痛い。でも、2つ目の選択肢を選ばれたらどうしよう。奪い去る事も出来るけど、その後の生活が心許無い。まずは一人で去って、城下町で何か仕事探して目処が付いたら城に奪いに来るってのも一つの手か。


 「失礼、先にこちらから質問をしても良いかな。一応私たちは王族と呼ばれていて、この国で一番偉いと言っても過言ではないんだよ。そんな私たちに君が希望する褒美を与えると思うかな?この世界に来たばかりの君じゃあ私たちの手助け無しでは何も出来ずに死んでしまうんじゃないかな。確かに、無理矢理呼び出したこちらにも非はあるだろう。だから、城を去っても生きていける術といくらかの金銭を渡すことはしたいと思っているよ。」


 ・・・宰相、女王に続いて国王までこのザマか。確かに、歴史の授業でも王族のわがままで民が苦しめられたりって話はあったけどさ。結局、王族や関係者は皆どんな世界でもこんな感じなんだろうな。ますます手助けをしたくなくなってきたんだけど。


 「はぁ~イライラするな。そっちの都合でこっちの了承も無しで呼び出して『助けて欲しい人がいるから助けて欲しい。でも何の褒美もないよ。』ってさ、おかしいだろ。あんたら王族なんだろ、一番偉いんだろ、なら恩を受けたら相応の物を返すのが礼儀ってもんだろ。自分たちの希望が何でも通るなんて思うなよ。城から去ったら死んでしまう?金をやるから生きてみろ?ふっざけんな!呼び出した奴がいうこと聞かないから捨てるって、我儘が通らなくて泣きわめくガキじゃねぇんだから。それともなにか?この世界の住人は身体だけ大人になっても精神はガキのままなんですか~?」


 って、言いてぇな~。どうすっかな~。


次の話の後半で勇者を助ける話が始まります。よろしくお願いします。





始まるといいな・・・

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