改めてここが異世界だと実感したな。
リアルで忙しかったってのもあるけど、サファイアが出ないから筆が進まなかった・・・。
「誰だって、さっきそいつが勇者のイーリアスだって言ったろ。」
勇者を怪訝な顔で見ていたらリンクが歩いてきたので、持っていても邪魔な短剣をリンクに投げつけた。危な!と言いながら簡単に受け取っていたが、俺の能力忘れたのか?と言うと、あ~忘れてたわと返された。数分前の俺の行動はその能力あっての事なんですがね・・・。
「聞いたことは忘れてないが、こいつが勇者で姫さんの兄貴ってのが信じられないんだよ。どっからどうみても女だろ、こいつ。」
「いや、見た目が女でも中身が男だから嬢ちゃんも『お兄様』と言っているかもしれないだろ?サファイアの件があるんだから。まあ、イーリアスはれっきとした男性だけどな。」
「んじゃ合ってんじゃねえかよ。まあ、勇者の性別がどうとか良いからさっさと帰るぞ。サファイアが俺の帰りを一日千秋の思いで待っているんだから。」
そんな気持ちになってるのはタカヒロの方だろ。つか待て、と訂正しながら俺の行動を止めてきやがった。いや、ここでの目的ってもう終了しましたよね?俺がここにいる意味って皆無だよね?
「俺達がここに来た目的を果たしてないんだからまだ帰らせねえよ。」
「んだよ。俺の役目は敵を倒すことなんだから帰っていいだろ。」
「そうか。ま、別にかまわねえよ?一人で帰ることが出来るなら勝手にどうぞ。無理だと思うがね。」
ニヤニヤしながら俺の帰りたいコールを止めてくる。くそ!想像通り帰りも敵が出現するのかよ。このまま勇者たちの目的を果たすまでいるか、リンクを無理矢理下僕として雑魚撲滅器として活用するか。
・・・待てよ?帰るのに時間がかかるなら俺に何かあったかとサファイアが心配してくれるかもしれない。心配している最中に俺が帰ってきたら思わず抱きしめてくれるかもしれない。よし、どんな目的かしらなけど一緒にいることにしよう。あ、でもサファイアに心配させるってのもあれか。俺のことを考えて欲しいけど、無駄に心労を与えるのはダメだよね。あ?何だよリンク。そんな呆れた目をこっち向けるな。
やっと私が口を挟めるかな?とリンクに向けていた目を勇者に向ける。いつのまにか杖男も傍に来ていて、二人ともリンクから受け取った体力を回復する木の実を食べている。よく表情を変えずに食べれるな。あ、勇者は顔を赤くして目を潤ませながら食べてるから違うか。だよな、顔に出ちゃうよな。あれ苦いから俺はもう食べないとここに誓う。
「助けてくれてありがとう。どうやらリンクが助けを求めて出たのは間違いじゃなかったようだ。改めて初めまして。ミラテリアの兄のイーリアス・ダーゴーンと言う。勇者として生まれ、ある呪いを解くためにこの迷宮に訪れた。リンクの説明は良いとして、こっちにいるのはユリウスと言って私たちの補助をしてくれている者だ。生まれは私達とは違い、ミガンガと言う町の出身だ。」
よろしく!と目を狐の様に細めながら爽やかによろしくされた。俺としてはよろしくしたくないので、どもっと返事を返す。素っ気ない返事に嫌な顔をしないのは人として出来てる奴だな。言葉よりも、俺の服装が珍しいのか上から下、前から後ろを行ったり来たり見回してきた。一応自己紹介されたからこっちからも名前を名乗ったが、うぜぇ・・・
「なあなあ、タカヒロで良いか?お前の服装見たことないんだが。言っちゃ悪いが、もしかして田舎者か?」
「なあ、どっちでも良いからこいつ殴ってくれね?初対面の奴に言うセリフじゃねえわ。」
もっともな俺の意見をリンクは苦笑いで勇者は困った様子で受け止めた。いや、そんなんじゃなくて殴って欲しいんだけど。
「私もタカヒロっと呼んで良いかな。すまないタカヒロ。もしユリウスの所為で機嫌が悪くなったのならこいつとは縁を切る覚悟はできているから何でも言ってくれ。」
「ちょ、リアス~酷くない?さっきまで生きるか死ぬかの状況で俺たち一蓮托生だったろ。」
「だまれ。というかお前にその名で呼んでいいと承諾してないからな。」
「いいじゃんいいじゃんリンクだって呼んでんだから。同じ仲間として仲良くあだ名で呼ぶのはさ。」
「どうでもいい話をしてんじゃねえ。つか、杖男がどうなろうと俺にメリットないし。」
「じゃあ、代わりと言ってはなんだが、わたしが出来ることなら何でもいいぞ。仮にも勇者でこの国の王子という肩書を持っているから大抵の事は実現できると思うが。」
え~なんか話が変な方向に進んでいるんだけど。ただ杖男を殴って欲しいって言っただけなのに勇者から「願いを叶えてやろう」とランプの魔人みたいな台詞を言われた。おいそこ。何笑ってんだよ。道中の雑魚敵を倒すだけしかしていなかった役立たずめ!!
「あ~もういいもういい話は終わりだ。俺は早く帰りたいんだから何か知らないがさっさと目的済ませろ。」
俺の言葉で目的を思い出したのか、奥のほうに歩いて行った。ここで待っているつもりだったんだが、現在リンクに引きずられており移動せずにいられない。俺の抵抗がない事が分かっているからって、無駄に体力を減らす意味ないと思うんですけど。
ズルズルと引きずられている俺を、歩きながらチラチラ見る勇者と後ろ歩きをしながらニヤニヤした顔で見ている杖男。うぜぇと思いながらも特に何かしてくることはなかったので無視。
ぼーっと天井を見ていると、リンクが上着から手を放したのか支えがなくなった事で地面に頭をぶつけた。痛みはないけど急に落ちたからビビるわ。
不快な思いを与えたリンクを睨み、どんな仕返しをしようかと考えたが様子がおかしい。他二名も立ち止まっていることからどうやら目的地に着いたようだけど。
いや、目的地に着いたならさっさと終わらせろよ。何が目的は知らないけど、俺は一秒でも早くサファイアと話したり手を繋いだり抱きしめたりあの目で見つめてもらいたいんだから。
三人が立ち止まって微動だにしないので何を見てそんな驚いているのか確認してみよう。仕方なく立ち上がって三人が見てるであろう場所を見てみると、石で造られた一般家庭にある子供用のプールみたいな形をした建造物があった。迷宮にあるかは知らないけど、湖とかが洞窟とかにあるのは普通だよね。鍾乳洞とか洞窟にある湖にはでかい魚がいるとかさ。
まあ三人がそこに驚いているんじゃないってことは分かってるよ。
プールの中心にある岩の上に、ゲームや漫画でお馴染みの妖精と思われる物体が腹に手を当ててぐーすかと寝ていたから驚いているんだろう。
妖精か~やっぱ異世界なんだな~こういう存在がいると実感するわ。まあ、だからどうしたって感じだけどね。妖精の存在に少し驚きはしたけど、三人の様に固まらずにそのまま近づいてガシッと掴み勇者に向かって投げた。
投げられたことにより体に異変があったことを察知したのか、目を覚ました妖精は自分の状況を確認すると驚きの叫びを上げながらそのまま勇者の胸の中に納まった。いや、羽生えてんだから飛べよ。
「な、なんだよお前ら。特にそこの黒髪のお前。オイラは妖精だぞ?せっかく食事を終えてのんびり寝ていたのに。人間のくせに妖精に暴力を振るうなんてなんて奴だ!!」
お、なんだ?妖精のくせに生意気だな。
俺に投げられたことに対して文句を言っているが、勇者の胸を触りながら言ってても何の効力もねえぞ。