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あっという間に迷宮へ

 刺しても意味のないことを知っているから、"刺すぞ"という気持ちを込めて俺に恐怖を与えている。起きて早々、いったいリンクに何があったのか。機嫌が悪くなることがあったとしても、それを発散させるのに俺を使うのは如何なものか。確かに、昨日の俺の行動により溜息を吐いている場面を何度も見ているけどさ。それにしたって、無力化能力がなかったら目覚めぬまま誰に殺されたか知らずに永眠していただろう。


 リンク、一旦武器を退けてくれない?寝る前に別れてからこんな事される覚えないんだが、と槍に目を向けながらお願いする。けれど、武器を動かす気がないのか「お前の左側には何がある」とそのまま話を続けてきた。

 左側?そりゃ壁があるだけだろうと思いながら、何も乗っていないはずなのに重さを感じている左腕に顔ごと目を向けると、相変わらずの半目だが今まで見たことがないほど顔を赤くしているサファイアがいた。目を開けているから意識はあるんだろうが、別に抱きしめている訳ではないんのに離れる素振りを見せない。腕に重さを感じていたのはサファイアを腕枕していたからだった。え、なにこれ。俺得すぎるんだけど。ベッドにサファイアが忍び込んできたのか?くそ!なぜその時に俺は目覚めなかったんだ。その時のサファイアは恥ずかしながらもどこか期待した表情をして俺を見ながらにじり寄って来たに違いない。想像しただけでごちそう様です!!


「タカヒロ。お前がどんな妄想を繰り広げているか知らないが、確実に言えるのは今考えたことは100%ありえないってことだ。」

「なにをぉ?んなの分からないじゃないか。何事にも100%ありえないってのはないんだから。」

「つかお前の妄想はどうでも良いんだよ。今は、この状況についてだ。」

「は、そうだ。まさかサファイアが俺を夜這いしに来るとは思わなかったわ。」


 俺の発言を聞いたサファイアは恥じらいからか俺から離れてしまった。名残惜しそうに見ていたけど、リンクからハルバードの乱れ付きを浴びせられてしまった。なんだよ目障りだな。自分が疲れるだけなんだから意味ない事するなよ。


「お前じゃないんだから夜這いなんてするわけないだろ。だいたい、この部屋がどこかわかっているのか?」


 ん?そんなの案内された俺の部屋に決まっているじゃん、と言いながら周囲を見渡すと、壁もベッドも床も俺の記憶にある装飾とは違ってて言っちゃなんだがぼろいな。ベッドも寝た時よりも柔らかくないし。

 ということは、サファイアが夜這いに来たんじゃなくて・・・


「分かったか?お前がメイド達の寝室で寝てるんだよ。つまり、お前が夜這いに来たんだ。」

「いやいやいや。俺そんな記憶ないし。だいたい、自ら夜這いを仕掛けてたら俺が衣服を着て寝ているのはおかしいと思わないか?それにサファイアの寝顔を覚えていないのもあり得ないだろ。」

「んなこと知らねえよ。無意識でサファイアを求めて部屋を探したのか、サファイアの部屋を最初から知っていたから寝静まった時間に侵入したのかなんてどうでも良い。まずは、混乱しているサファイアに謝れ。」


 そうだよ。リンクの無駄話なんて聞いてることなかったよ。俺の所為か分からないけど、さっきから顔を真っ赤にしながら震えてるんだもん。これは俺を恐怖の対象として見てるのか?

 あ、生きる意味なくした・・・。

 いや、今は俺の事よりもサファイアを通常モードに戻してあげないと。


「謝って済む問題だとは思わないけど、とにかくごめんなさい。記憶がない事から無意識的に行ったことなんだろうけど、それでサファイアが辛い目にあったならどんな理由があったとしても俺が全面的に悪いのは確実。許してくれるならなんだってするから。」


 混乱していて言葉を発することが出来ないのか、昨日と同じく土下座をしながら謝り続ける俺を見ている。何分経ったのか頭を撫でられたので顔を上げると、若干顔の赤みが薄れたサファイアが目の前にいた。

 で、俺が起きるまでに何があったかというと


 サファイア目が覚める→隣で俺が寝ているのを目視→頭が理解した時大声を出す→俺は起きなかったけど、代わりにリンクが入ってきた→サファイアは混乱していて動けず、姫さんがカーテンを開けたことにより浴びた日光で俺が目覚めたってことらしい。あ、姫さんいたんだ。眼中になかったわ。


「ここには複数のメイドが寝ていたけど、わたし以外の皆はタカヒロさんが入ってきたのに気付いて出て行ったようね。わたしは入ってきたことに気付かなかったから、目が覚めた時にタカヒロさんが隣で寝ていたのはすごく驚いた。本当、心臓が止まるくらい驚いた。だから、私の願いを叶えてくれると誓ってくれるなら今回の事は許してあげる。」

「そんなことでいいの?うん、誓うよ。何でも言ってくれ。俺が出来ることなら可能な限り行って、俺が出来なそうなことなら無理矢理にでも行うから。」


 俺の返事に少し困惑した表情を浮かべていたけど、「うん、今度お願いするね」と言いながら頭から手を離した。もう少し撫でてくれてもよかったんだけど、リンクが睨んでいるからあきらめよう。


「さて、問題はあったが出かけるからさっさと準備しろ。朝飯は歩きながら食えるものを用意してもらったから。」


 起きたばっかなんだけど~、と愚痴ったらまた睨んできた。はいはい、わかりましたよっと。

 寝巻が用意されていなかったからトレーナーとジーパンのままで寝たから着替える必要皆無。あ、さすがに寝るときは邪魔だと思い脱いだジャケットは俺の部屋にあるはずだから取りにいかないと。


 それじゃあ、身だしなみを整えて荷物を持って城の入り口に来いと言い残して部屋から出て行ったリンクとそれについていく姫さん。サファイアは部屋に戻る俺の寝癖を歩きながら直してくれた。この櫛っていつもサファイアが使ってるものかな?いや、別にそこは何も考えてないよ?さすがにそこまで変態じゃないよ俺は。


 部屋の場所が分からなかったのでサファイアに教わって辿り着き、荷物を持って入口へ。そこには準備万端のリンクと微笑んでいる姫さんがいた。

 昨日と同じくサファイアにおまじないして、と頼んだけどしてくれなかったので理由を聞いてみた。いや、理由を聞く俺も俺だけど、サファイアが言うには、「今日はもう抱きしめたからやりません」ということらしい。いや、そんな記憶ないんだけど・・・。これ以上この話を掘り下げようとすると機嫌が悪くなりそうだから止めとこう。


「来たな。昨日出かけられなかったから少し早足で行くぞ。じゃ、嬢ちゃん。行ってくるわ。」

「はい。無事にお兄様を助けて帰ってきてください。すみません、馬車を用意できなかったので徒歩になってしまって。」

「仕方ねえよ。ま、俺は高確率で歩きだと思っていたがな。ほら、歩きだからって嫌そうな顔するなよタカヒロ。」

「うへぇ~歩きとかないわ~。せめてチャリがあればな~・・・。あ、俺がいない間はサファイアを姫さん専属メイドとして扱うようにしてもらってください。んじゃ、サファイア、姫さん。行ってきま~す。」


 二人の行ってらっしゃいの言葉を耳に入れながら、サファイアをずっと見ている俺の襟首が掴まれズルズルと引きずられていく。城下町の中間ぐらいまで来た頃にはサファイアが視界に入らなくなったので自分の足で歩き始めた。おのぼりさんみたいにキョロキョロ見回すと当たり前だけど見知らぬモノがたくさんあるな。城に戻ってきたらサファイアと一緒にぶらぶら冷やかしにでも来ようかな。


 リンクの後ろを歩き続けていると町の入り口の門が見えてきた。『言語理解』のおかげで文字も読むことが出来るので門に書かれた文字を読むと『ザールス』と書いてあった。街の名前かな?一応これから住む予定の街なんだから覚えておくか。





 迷宮まではリンクの計算通り、城を出てから二日目になってようやく迷宮に辿り着いた。いや~マジ疲れた。ビルとかがないから日陰なんて木の傍にしかないから休みにくいし、リンクが休もうと言うまで休めなかったのがきつかったな。それに普通の道にもモンスターが出てくるのは驚いた。ゴーレムとかじゃなくて犬系やウサギ系といった獣タイプしか見なかったけどね。

 そこで拘束札がどんなものか確かめてみたけど、どうなのかなこれ。攻撃が効かないからテクテク向かっていきペタッと札を貼れるから楽だけど、貼ってから3秒経つと動き出しちゃった。3秒か~。短いと思うけど、敵が3秒動かなければ誰でも殺すことが出来るからチートっちゃチートなのかな。とすると、貼って動かないうちに移動したり、リンクに殺してもらうという戦法になるのかな。

 効力は分かったけど、残り5枚か。再利用可能なのかなと思っていたけど、敵に貼り付けたら身体の中に入ったのか、消えちゃったから無理でした。残念。


 ここが迷宮だと言われた所は2m程の岩にぽっかりと穴が開いているところだった。どうやらここから入るらしいけど、ダンジョンじゃなくて迷宮ってことは道が複数あったり、トラップがいっぱいあってクイズを解かないと次に進めないとかって感じなのかな。と聞いてみたら、道はグネグネしているけど、真っ直ぐ歩いて行けば最下層まで行けると返された。あ、そうか。迷路じゃなくて迷宮なんだから当たり前か。


 それじゃあ、さっさと勇者を助けて城に帰りますか。 

無表情

若干赤い顔

驚き顔

焦り顔

真っ赤な顔 NEW

とまどい顔 NEW


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