残念!!出かけるのは明日になりました。
「さて、お兄様を助ける為の準備も終わったわけですし、さっそく向かっていただけますか?」
「もちろん。じゃあ出かける前のおまじないをしようか。さあ俺を抱きしめてサファイア。で帰ってきたら俺が抱きしめるから。」
「それはタカヒロさんの故郷での無事を祈るおまじない?」
「違うよ?サファイアに抱きしめてもらいたいだけ。それをしてもらえばものすごく頑張れると思うから。」
ドヤ顔で説明する俺をしらーとした表情で見てきた。ダメだな、まずかったな、先走っちゃったな。べ、別に泣きそうだから上を向いてるわけじゃないよ。天井がどうなっているか見たかっただけだから。
「あ、ごめんね。本心だけど無理にやって欲しいとは思ってないから」と言い訳しようとサファイアに顔を向けたけど、サファイアがいた場所には誰もいなくて、おや?と思っていると後ろからぎゅっと抱きしめられた。え?なに?今俺どうなってるの?と周りを見渡すとサファイア以外のメンバーは見えるんだけど愛するサファイアだけが見当たらない。つまり、今俺を抱きしめているのがサファイアだと予想する。
抱きしめている人物がサファイアだと判断した直後、サファイアのぬくもりが離れていった。きめぇ。
「男性の身体に抱きしめてもらって満足?さ、行った行った。」
「おう超満足。男性とか女性とか関係ないよ。サファイアに抱きしめてもらったことが嬉しいんだから。だって、俺のお願いだったけどサファイアから俺に触って貰ったの初だからね。
というか、敬語を使わなくなったらキャラ違くない?俺としては嬉しい限りだけど。」
「タカヒロ、イチャイチャしてねえでさっさと行くんだろ。」
イライラしているリンクに腕を引っ張られながら城の入り口に向かった。なんだよ、俺がサファイアと中良いのが気に食わないのか?すみませんすみません、別に「やっぱ男好き」だなんて思ってないから。攻撃が効かないからって武器で突かないで。ダメージは受けなくても恐怖を与えることはできるんだから。
「・・・なあ、リンクよ。」
「・・・どうした、タカヒロ。」
「目の前が暗闇で包まているんだが、それでも勇者を助けに行かないといけないのか?」
「勇者を助けるのは絶対だ。だが、俺の目の前も真っ暗で先が見えない。」
「だろ。これはあれじゃないか?勇者を助けるのにはまだ準備があるからまだ旅に出てはいけないという神からのお告げだと思うんだが・・・。」
「なるほど。タカヒロが用意してくれと頼んだもの以外に重要なものがあるんだろうな。」
「恐らくは。よし、それではその何か重要なのもを考える為に一旦部屋に戻ろうじゃないか。」
「そうだな。出来れば、食事をしながらの方が良い考えが浮かびそうだ。」
「食事か・・・。俺、こっち来る前に夕飯食ったばっかだからデザートがいいな。」
「じゃあ夕食とデザートを作ってもらえるか食堂に行ってみるか。」
「いざ行かん、求めるものを見つけるために!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・三文芝居は終わりましたか?」
はい。と姫さんの呆れた台詞に対して俺たちは項垂れながら返事をした。目の前が暗闇というのは、目が見えなくなったでも、異常事態って訳でもなく、ただ日が沈んで夜になっていただけ。出端を挫かれるとはまさにこのことだ。いやね、夜だからって出かけられないわけではないよ。街灯がない代わりに自然の光があるから慎重に行けば大丈夫だとは思うけどさ。でもさすがに外がどんな地形になっているかとか敵が現れたりするかもと考えると出かけたくないよね。
俺が呼び出されたのが何時とかわからないけど、確かに結構な時間話し合ったと思うよ。うん、そりゃ時間も経過して夜になるよね。
夜になってしまい、出かけることが出来なかった俺たちを見るサファイア。当たり前だけど機嫌が悪そうだ。だって、ねえ。出かけるおまじないをしたのに出かけないって事になったら人前で抱きしめただけって訳だ。明日も抱きしめてもらえると思うとニヤニヤしてしまう。
機嫌が悪いことを隠さないまま俺に近づき蹴ったり叩いたりしてきた。八つ当たりだと思うけど、痛みがないからご褒美としか思えない。しかも、無意識なんだろうけど「むーっ。」と言いながらだ。そんな可愛いサファイアを抱きしめようとしたが、抱きしめるなと意味を込めて睨んできた。
姫さんも、さすがにこの時間から出発させる気はないらしいので、朝になってから出かけることになった。なので、みんなで食事を済ませ(サファイアは俺の隣)、リンクに風呂に入ろうと言ったら「サファイアと一緒に入らないのか?」と俺をいじってきたので「あ?死にたいの?あァ?」と不良が逃げ出した睨みを利かせながら呟いた。身長が低くても怖いものは怖いらしい。
本音としては一緒に入って背中の流しっことかしてみたいけど、これ以上恥ずかしい目に合わせたくないし。将来としては恥ずかしながらも一緒に入ってくれて、湯に浸かりながらどうでも良いことを話したいな。
いつも風呂ってどうしているのかと聞いてみると、皆が入浴し終わった後に一人で入っているそうだ。湯を沸かして結構な時間経過しているので温かいお湯に浸かることは稀なそうだ。よし、一般家庭がどうなってるか知らんが、二人で住む家には風呂を付けてもらおう。で、いつでも温かい風呂に入れるようにどうにかしよう。
風呂から出てサッパリしたところで、寝る部屋に案内してもらい、この世界に関してちょっと教わった。勇者はいるけど、魔王なんていなくて人間どうしで戦争とかしたことないそうだ。所々に迷宮があって、そこにいるモンスター外に溢れない様に定期的に倒しているそうだ。それと、俺みたいな能力持ちはいるらしいけど、別大陸の住人らしい。互いの大陸の行き来しないの?と聞いてみたが、王族といった高貴な方々しか訪問しなく、船しか移動手段がないうえに結構なお値段するらしい。
ゲームや小説でお馴染みの冒険者ギルドも大半の街にあり、どんな仕事をしてるのか聞いてみると、冒険者ギルドっ言うよりも何でも屋って感じだと理解。働くというと「商店」「冒険者」「城仕え」「主婦(主夫)」らしい。給料的には城>冒険者>商店>主婦らしいけど、まあ冒険者は仕事の難易度、商店は品物の売れ行きで上下するらしいから一概には言えない(当たり前か)。
となると、俺の仕事は冒険者一択か。商店はこの世界の流れ等情報を得ないといけないし、城仕えなんてする気さらっさらないし、主夫なんてもっての外。主婦をして俺の帰りを待っているサファイアってのが俺の理想だ。攻撃が出来ない俺でも、まあなんとかなるだろうと楽観的に考えておこう。
さて、話す内容はまだまだあるだろうけど、明日に備えて寝ることにした。
ここで俺の希望を言うと、全員から否定のお言葉を貰った。まあそれぞれ否定の理由は違うらしいけど。
サファイアが寝るのはベッドで俺はソファとかで寝て、万が一を備えて両手足を拘束が俺の希望なんだけど・・・。二人は、それでも俺が何かやらかすと思っているのか同部屋睡眠は否定。サファイアとしては、俺の専属メイドなんだから主の目の前で一人だけベッドに寝るのがダメ。ソファで寝たら身体に悪いとのこと。優しい。
仕方ないので今日はあきらめました。・・・あれ?リンク達がいなければ一緒のベッドで寝るのはOKなのかな。今度聞いてみよう。
翌日
カーテンを閉めるのを忘れてしまい、ベッドで寝ている俺の顔に直射日光が刺さる。ま、まぶしいと思いながら目を開けると槍の先(尖った方)を向けながら睨んでいるリンクが目の前にいた。