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好きになったのが君なだけ

 感情が高ぶり確認を取らぬまま抱きしめてしまったので機嫌が悪くなっているかと思ったが、相も変わらずの無表情だったので問題なさそうだな。いや、ここは少しでも顔を赤らめてくれていたら俺的に嬉しかったんだけどね。それも、怒りによるものではなく羞恥から来る表情ならなお嬉しい。


 「ん。わたしへの質問の前に一つ、わたしから質問宜しいですか?」

 「お、なになに?俺に興味持ってくれたのかな?」

 「いえ、タカヒロ様に対しての質問ではなくわたしの事で問題だと思われる事に関してです。」

 「え、もしかしてサイファー。不治の病にかかっていて、もうじき死んじゃうとか?それとも、この町から外に出ることが出来ない呪いにかかってるとか?」

 「いえ、そういうことではなく。先程国王様が仰っていた通り、わたしの心は女性ですが、身体は全て男性の。つまりタカヒロ様と同じ身体つきをしています。そのことがタカヒロ様にとって問題なのではないかという質問なのですが・・・。」


 あるぇ~?この質問ってさっき国王に啖呵切った時に言ったと思うんだけど、もしかして聞いてなかったのかな。あ、あの時はサイファーのこと抱きしめながら話していたからかな。ドキドキして聞こえなかったっていう理由だとしたら嬉しいんだけど、希望的観測だろうな・・・。

 ま、いいや。聞こえてなかったのならまた告白すればいいだけの話だし。


 「はぁ~だから言ってるじゃん。俺はサイファーが好きになったんだってば!君の事を一切なんの情報も知らなかったけど、好きになっちゃったんだから仕方ないだろ。身体が男性だからって理由で嫌いになるならそもそも一目惚れすらしないと思うよ。というか、さっきから手を握ったり抱きしめているんだから、それが嫌いになる理由になるわけないでしょ。はい、わかったらそこに座って話そ。」


 室内でお茶を楽しむために設置したと思われる机と椅子があったので、無表情ながらもあわあわしているサイファーを座らせて反対側に俺が座った。やったことないけど面接っぽいな。高校受験の時は自前の目付きの悪さで面接しないでほしいと担任からお願いされて出来なかったし。当時も思ったがなんて理不尽。


 「それじゃあ、サイファーも納得したということで。俺からサイファーに質問があるから答えられる内容なら答えてね。」

 「わかりました。出来る限りお答えいたします。」


「んじゃ俺からの質問ね。

 俺はサイファーと手を繋いだりすると嬉しいけどサイファーはあまりしたくない?どの範囲までなら許してくれる?聞きづらいけど聞いちゃうねサイファーって男性の名前だけど気に入ってる?趣味や特技はなくても何か興味のあるものってある?その髪の色ってこっちの世界で珍しいの?地毛?それとも染めたの?恋人が出来たらしたいことって考えたことある?いじめがなかったって言ってたけど嫌なことされたとかは?あったらその相手ってわかる?仕事時以外もメイド服なの?私服として着るならどんな服が着たい?好きな食べ物、主食でも食材でもスイーツでも何かある?どんな家に住みたいとか希望ある?今まで」


 今疑問に思っていることやこれからのことを呼吸をする暇なく質問をしまくっていたら目の前にハルバードが出現してきた。くそ、誰だよ俺たちの空間を破壊するバカは。殺せないから殺す勢いで睨んでやる!!


 会話を無理矢理止めたリンクは、武器として使用されなかった悲しいハルバードで肩をトントンと叩きながら嘆息交じりに忠告してきた。


 「はいはい、止まれ止まれ。質問するのは構わないが相手が答えられない様な質問攻めをするなよ。サイファーを見てみろ。お前の質問に答えようとも答えられないから苦笑いを浮かべてるだろ。」

 「え!・・・・なんだよ、いつも通りの無表情じゃないか。」

 「(お前が見ていない時は異常な程感情表現豊かなんだよ)いいから一つずつ質問しやがれ。メイド達の準備を待ってる間しかいちゃいちゃさせねぇからな。俺としてはさっさと勇者を助けに行きたいんだよ。」


 へーへーわかりましたよ。ったく、いいじゃん。そりゃリンクだって俺のこと知らないけどさ。初めて好きになった人とのトークなんだから。まあサイファーを困らせる気はなかったけど、結果的に困らせていたらしいから止めてくれたことは感謝するけどね。

 しかし、いくらピンチ中の勇者だからってそんなに助けに行きたいのか。さっきは否定していたが、やはり姫さんの言うとおり・・・あ、すみません睨まないで。いや、女性好きって聞いたけど、別にお前が男性好きでも俺は構わないって言ったじゃん。


 「よし。じゃあ気を取り直して、一つずつ質問するね。さっき言った通り応えられるものだけ答えてね。問一、いきなりだけど気になったから聞くね、サイファーって名前気に入ってる?」

 「・・・不躾ながら、タカヒロ様はデリカシーがないのですか?」

 「そうじゃないけど、気分を悪くしたなら謝る、ごめん。違くてさ、サイファーは性としては女性と認識してるから男性名は嫌じゃないのかな~と思ってね。」

 「そうですね。わたしが教会の前に捨てられていたのは先ほど言いましたが、バスケットの中にはわたしと一緒に紙が入っており、そこに「サイファー」と書かれていたそうです。男性名でも両親が付けてくれた名前なので嫌いにはなれませんね。」

 「なるほど。サイファーが嫌じゃないならそのままでも良いか。んじゃ考え損かな。いやね、サイファーという名を並び替えて『サファイア』ってのはどうかな?と思ってるんだけど。」

 「『さふぁいあ』ですか?長音を『あ』とするなら出来なくはないですが。」

 「でね、サファイアっていうのは俺の世界に存在する宝石の一つで、サイファーの瞳と同じ青い色をしてる宝石で、すごくきれいなんだ。で、宝石には色んな意味があって、確か・・・愛情深くて清廉潔白で人々から慕われるって意味を持っていたはず。」

 「それはなんというか・・・わたしには合わないと思いますが。」

 「あ~いいのいいの。意味なんて結局人が無理矢理つけただけなんだから。

 どうかな?サファイアなら女の子っぽいし、サイファーを並び替えてるから名前を捨てるって感じにはならないと思うんだよ。それか、あだ名って考えればいいんだよ。例えば『タカヒロ』だと、『タカ』『ヒロ』っていう安直なモノとか。名前を捨てるんじゃなくて、違う名前で呼ばれるってだけ。

 で、これから生きていく中で迷いが出てきたら宝石の意味を思い出してほしい。サファイアには『愛情』や『清廉潔白』という意味があることを。他人から罵詈雑言を浴びても、それを第一に考えれば、人として間違った生き方はしないはずだから。」

 「そうですね。両親に対して思うことがないとは言えませんが、タカヒロ様が考えてくださったものですから喜んで頂きます。愛情深く清廉潔白で人から慕われる。そんな大層な存在になれるとは思えませんが、目標としていこうと思います。それに、可愛い名前で呼ばれるのは夢でしたので嬉しいです。」



  サファイアの思考

 国王様に対しての発言はその場限りの出任せではなかったんですね。「私達は家族だからね」と教会にいたころは愛されていましたが、恋人にしたいと、しかも身体的デメリットも気にしないと言う人がいることに驚きを隠せません。


 ・・・思わず苦笑いを浮かべてしまいました。まさかわたしに対してそんなに知りたいと思う内容があったとは。それにどんだけ知りたいのかがタカヒロ様のマシンガントークから伝わってきました。自分の事を知りたいと思ってくれる人がいるのは嬉しいものなのですね。


 両親から貰った物だったので名前は変える気はなかったのですが、そういう考え方もあるんですね。

 サファイア。かわいくてタカヒロ様が付けてくれたわたしの二つ目の名前。少なくとも、タカヒロ様に対しては愛情もって清く正しく接していこうと思います。


 それにしても、タカヒロ様に感情を露わにし辛いのはなんででしょうか。

最初はサーファで考えていましたが、サファイアになっちゃいました。

で、サファイアを調べてみると良い意味ばかりなので結果オーライでした。


因みに、サファイアの瞳が青かったのは偶然です。

サーファではなくサファイアにしようと決めた時に「あ、そういえば瞳の色って何にしたっけ」と戻ってみたら『碧眼』と書いてあって安心しました。

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