五、失くし物の見つけ方
「探して欲しい人がいるんです、お姉様」
放課後の部室で、ゆりが彩に向かって言う。今はテスト週間で部活動は全面停止中なのだが、ここに集まっているミス研御一行には、特に部長の彩を中心に、それを守る気がまったくない。
「探して欲しい人?」
意図的に、彩は「お姉様」という敬称には触れず、続きを促した。
「はい。それもあって、ミス研に興味を惹かれたんですが、正直今はミス研がどうのこうのではなく、単純にお姉様と一緒にいたいという気持ちから、ここにいます!」
もはやどこから突っ込んでいいやらわからない、と六郎は思った。ヤブをつつくと蛇が出るらしいが、ミス研にあった入部届をつついたら、ものすごく変な奴が飛び出してきた。
「えっと……楠木さん? その探したい人っていうのは……」
全く進まない話に痺れを切らした六郎が口を挟むと、ゆりは彩に向けていた羨望のような好意的な表情から一転、敵意むき出しの視線を六郎に向けた。
「あなたは黙っていてください、だいたいなんでここに男の人がいるんですか。ここは女の園ですよ?」
「……すみません」
もう好きにしてくれ、と六郎は思った。
うなだれた六郎は親身に相談に乗るのをやめ、彩とゆりのやり取りをただただ聞くだけに徹した。
その内容から不要な部分、つまりは彩がいかに甘美であるとか、ゆりがいかにお姉様に尽くしますであるとか、そういった部分を取り除くと、それはもはや内容というよりはむしろ枝葉に近いボリュームであるのだが、こういうことになる。
去年の話、ゆりがまだ中学三年生の頃だ。ゆりには大切にしていたものがあった。常日頃から持ち歩いていたそれを、ある日ゆりは失くしてしまった。
「何を失くしたの?」
そう問いかけた有里紗の言葉に、ゆりは言葉を濁した。
失くし物を探し回る日々が何日も続いたある日、ふと思いついてゆりは交番に向かった。
そういうとき、物語だったらすぐ交番に行きそうなものだけど、実際のところは足が向かないものだよな、と六郎は声に出さずに思った。
そして、それは見つかった。ゆりが本当に心から大切にしていたものらしいそれは、その数日前に届けられていたらしい。ゆりは喜んだ。そして、丁寧にも交番に届けてくれた人に対し、お礼をしたいと思った。
「でも、それを届けてくれた人は、名前も言わずに去っていったそうです。その人が、私の探し人です」
ゆりが話し終えたとき、その場にいた他の全員が思ったであろうことを、六郎は勇気を出して口にした。
「えっと……手がかりは、それだけ?」
もはや手がかりとよべるものは、ゆりの話の中には何一つ存在しなかった。ゆりはキッとした視線を六郎に向け、答えた。
「まさか。きちんとその人の容姿を交番にいたおまわりさんから聞いています。ここ、朱陽高校の制服を着た、触れたら壊れてしまいそうなほど線の細い、文学少女だった、と」
どこの警官がそんな叙述的な表現をするんだ、と六郎は密かに思った。




