第五話
「行って来ま〜っす!」
真新しい制服に身を包んだ少年はそういって元気に玄関のドアを開けた。
「いってらっしゃい、車に気をつけてね」
柔和な笑みを浮かべ女性は少年を送り出す。
外に出た少年は外で待っていた友人と話し出す。
「まさ! とうとう中学校だな!」
「そうだね! 楽しみだよ」
少年はまさだった。
まさの家は今でも幸せそのものだった。
あれから普通の家庭みたいになるのは本当に時間がかからなかった。今となっては周りが羨むほどにまでなった。
後からまさが聞いた話だが。
どうやらあの夜、両親もサンタの夢を見たらしい。
子供の頃を思い出させ、親の在るべき姿というのを教えられてた。子は親を必要とし、親は子を必要とすることを。
二人はこの夢をみたために、話し合いをした。
普通ならばこんなことはありえないのだが、二人とも同じ様な内容の夢を見たのが決め手になった。
話し合いの結果二人は変わることを決意した。ただ、まさがどうなるか分からなかったために不安はあったそうだ。
今までこんな態度を取っていた自分達に対して心を開いてくれるのか――と。
しかし、まさは朝食の時に作り笑いではない、本当の笑顔を見せてくれた。
それを見た二人は、これなら大丈夫! まだ間に合う! そう確信した。不安が拭えた二人は、まさのために変わりだした。
サンタはきっと大人、子供と関係なくきっと来ている。
玩具ではなく『幸せ』という名の最高のプレゼントを持ってね。
子供が喜べばその姿を見て大人も喜ぶ。
ほら、そうでしょう?