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美味しすぎました 3

からっと晴れたいい天気の下、ふんふん鼻歌を歌いながら街の道を行きます。

本日はお使いで街の荷物集積場まで行く途中です。そう、私がこの世界に落ちてきた場所ですね。

街や村の規模によって複数あったり1つしかなかったりしますが、名前の通り街の外から来る荷物や街の外へ出てくる荷物はいったんここに全て集められ、しかるべき場所に届けられるようになっているそうです。

この荷物集積場はこの世界の街や村の第2の心臓部といわれています。物流の要ですからね。ここが潰されると商業のほとんどがストップしてしまいます。

普通に個別に仕入れればいいんじゃないかって単純な話じゃないんですね、これが。

なんとこの世界、遠方に行く場合は私が一般的に考えていたような、何か乗り物に乗って移動…ということがほとんどないのです。

なぜかと言えば、必要がないから。

なんとこの世界の住人のほとんどが、瞬間移動ができるんです。ファンタジー的な地水風火とかの魔法はなくて、ほぼこれだけなんですけど。

移動できる距離や一緒に運べる荷物の量は所有している力の量で変動したり、正確な場所に現れたり物を転送したりするには力の使い方のセンスや技術が必要だったり、まったく見知らぬ地図にさえも乗っていないような場所にはいけなかったりするみたいですが、すごいですよね。

でもこれが諸刃の剣で。

自由にどこでも現れられるってことは、そのままにしてたら空き巣の天国、悪ければ殺人だって楽々にできちゃうってこと。

一応、自分の周囲数メートルくらいは転移禁止にできるらしいけれど、そうしている間は意識がないとだめだから眠れないし、ずっとそれをしてると疲れきってしまう。

だから街や村にはたいてい転移禁止の増幅装置が置かれていて(たいていは中心にある領主や村長の館に置かれているらしい)、交代制の常駐で人がそれを動かして一定範囲の中の転移を禁止している。その増幅装置が街や村の第一の心臓部。

だから街の中に直接何かを送り込んだり街の外に何かを直接送り出したりすることができない。でもそれだと物流が滞っちゃうので荷物の集積場を街の外れに設けて、そこで荷物や人の出入りがなされる。いわゆる関所ににた感じ。

戦争になると……多くはないけどやっぱりこっちにも戦争はあるらしい……一番の激戦区になる可能性が高い所らしい。まずは荷物集積所を落として物流をとめてから転移禁止装置を壊して制圧するっていうのが常套手段だとかサジェ様が言ってた。

それくらい重要な場所に、怪しげな人間がいきなり降ってきたんだから、そりゃ警戒して牢に入れられるってものです。

しかも私、こっちでは大昔に今の住民達と争った古代種って言われる人達にそっくりなんだって。

古代種と現代種の一番の違いは、額にリルゥと呼ばれる宝石が付いているかいないか。

リルゥは例の力の源で、持ってる力の強さや性質によって色や形が変わるそうな。

大昔は古代種が世界の大半をしめていたらしいけど、現代種の持つ力によって古代種は現代種に駆逐されたらしい。古代種は転移の力もそれを防ぐ力もなかったから現代種の圧勝になったと、これもサジェ様の談。

今では古代種はほとんど伝説上の生き物的な存在みたい。

そんなツチノコ的、しかも本当に古代種なら現代種に恨みを抱いているかもしれない人間を街の重要部で捕獲して、最初は結構騒ぎになったらしい。それでサジェ様が興味を抱いて私を見に来た、と。

……危険人物かもしれない人間にわざわざ近づくなんて、サジェ様、ほんと変人だよね。

そんなわけで、私はサジェ様付きの侍女になってからはずっと額にバンダナみたいなものを巻いてます。別に私じゃなくて普通のこっちの人でも、バンダナや帽子やサークレットで隠してあんまり額は見せないらしい。

一回、サジェ様のリルゥが見たいってサジェ様に言ったら、ものすごく動揺されてから真剣に安易に異性にそんなことを言っちゃいけないと諭された。なんでも真っ裸見せてっていうのとおんなじような感じなんだって。そういうものだっていうのならそうなんだろうけど、正直に言えばやっぱりその感覚はイマイチ分からない。

みんながすんなりと理解できることが、自分だけ分からないってやっぱり何となくもやもやっとする。

ちょっとどんよりとしかけた気持ちを振り払うように頭を振ったあたりで、ちょうど荷物集積場に付いた。

本日のお使いは、厨房で使うサジェ様のお菓子の材料。

繊細で痛みやすい果物だから人の手で運んだほうがいいんだけど、本日は領主様にご来客のため、そのおもてなしの準備で厨房が忙しいということで、私が代わりに受け取りに出ることに。

瞬間移動の恩恵は料理にも出てて、いつでも新鮮な食材が色々なところから瞬時に届く。これも料理が美味しい理由の1つだよね!

ほくほく顔で果物の籠を受け取ってから、サジェ様が行くならついでにと頼まれた、集積場の近くの布地商をのぞきにいく。

好きな生地を選べって言われたから、うっきうきで選んできましたよ!

本当は女の子の方が選びがいはあるんだけど、サジェ様って外見だけは美人さんだから選ぶのも楽しかったぁ!

デザインとかも相談してちゃんと決めてきましたよ!たぶんばっちりサジェ様に似合うと思います!

るんるんで領主館に帰ってサジェ様にそう報告したら、ものすごく脱力されました。

えー、なにその反応。気に入らないなら自分で選びに行けばいいのにねぇ?

サジェは洋服を贈りたかったんだけど趣味が分からない上にあからさまに贈り物をするのが恥ずかしかったため、遠まわしに言ってみたところ玉砕しましたとか。

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