戦闘力ゼロのギフトで生き残れ!? モーンの森ケルト式サバイバル
モーンの森。ケルトの古い時代から、精霊と死者が同居する命への優しさ皆無の森だ。
ギフテッドと呼ばれる特異者しか入れない、しかも最後の一人しか生きて出られないケルト式サバイバルが常時開催されている。
私エルマのギフトは〈精霊に異常に好かれる者〉。
戦闘力ゼロなのに、やたら森の精霊がまとわりつき、すれ違いざまに『チチチッ』と意味不明な合図を送ってくる。
「ねえ、エルマ。今日も精霊寄ってきてるよ」
「わかってる! 私だって無視したいけど勝手に来るの!」
今日の挑戦者は七人。油断したら背後から刺すタイプだが、エルマの周囲だけ妙にザワついている。
(やだもう、精霊たちってば。なんで私の周りを円陣組んでるの!?)
『気をつけろ。あの男の手、血の匂い』
「精霊の生々しい実況いらないって!」
男の視線が明らかに物騒だ。
(絶対、殺る気満々じゃん。この森、人間より精霊の方が優しいってどういうこと?)
霧が割れ、苔むしたストーンサークルが現れた。
中心には、琥珀のように金色の光を放つルーン石が浮かぶ。これが今夜の生存権。
「ケルト神話の遺物っぽいけど、絶対呪われてるよね」
その瞬間、森全体がざわめいた。
木々の隙間から、巨大な影。
ケルトの古代に〈森の狩り手〉として恐れられた魔獣クー・ドゥガンだ。
精霊たちが一斉に逃げる。
エルマの周りの精霊だけ残って、震えながら言う。
『エルマ、走れ! お前が食われたらこの世界はつまらん』
「何じゃそれ!?」
七人が同時にルーン石へ飛びかかる。争奪戦、開幕。
剣が閃き、叫びが霧に沈み、精霊がエルマの髪を引っ張る。
「痛っ! でも助かった!」
『ほら、後ろ! 今度右!』
「もっと優しい助け方あるっしょ!?」
死力を振り絞り、エルマはついにルーン石へ手を伸ばした。
指先が触れた瞬間、石が溶け光が胸に流れ込む。
(コレ、精霊の力を倍増させるタイプの遺物だ!」
背後でクー・ドゥガンの咆哮。
精霊たちが震えながらエルマに群がる。
『力を貸す! お前は我らの〈選ばれし胃痛担当〉』
「なにそれ!? 称号にしちゃヒドイ!」
光が爆ぜ、精霊の力が奔流となって魔獣を包んだ。
森が唸り、影が砕ける。
気づけば、生き残ったのはエルマ一人。
「勝ったというより、精霊たちが勝手に働いただけじゃん」
『エルマが生きてれば我らは満足だ』
「せめてもうちょっと距離感覚えて!」
こうしてエルマは、生存権を勝ち取りつつ精霊からの力も獲得したのだった。
「サバイバルって、一体!?」




