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朝風呂事件

投稿時書き忘れましたが、

今回、BLっぽい描写あります

 レイの朝は早い。


 日が昇り始めた辺りで実家のものよりも小さなベッドから体を起こし、以前は顔も合わせたことのなかったルームメイトであるティニーに気づかれないように布団を畳む。

 そして箪笥の中から制服を取り出し、籠に洗顔料を入れて部屋を出る。


 この時間、寮で起きている生徒はレイしか居ない。


 寮は男女で別の建物を使っている。

 学年ごとでも寮は別、学年内でも幾つかに分けられている。


 現にレイとテオはそれぞれ違う寮を使っている。


 風呂は朝風呂を考慮して日が昇る前から沸かされてある。食堂では、既に職員たちが作る朝食の匂いが漂っていた。


 今日の朝食は旬の野菜と猪肉のスープ、パン、あとは採れたての果物が少し。


 食欲の有無が怪しい妹弟と違って、レイは甘味好きで何でもよく食べる。


 無表情の下で、その感情は高揚していた。


(……果物か…………嬉しい)


 弾む足取り___他から見れば普段と特段変わりはない___で風呂場に向かう。


 脱衣所に着き、皺のついた寝巻きを脱ぐ。

 白い肌と、細いが健康的な体格が露わになった。


 腰にタオルを巻き、湿気が充満する浴場に入る。


 背中にかかる髪が湯気に揺られた。


 小窓から、差し始めたばかりの朝日が魔法の電灯の上に重なっている。


 適当に椅子を取り、何となく目についた蛇口の前に腰掛ける。


 蛇口から湯が噴射され、桶の中にそれを溜める。


 湯の量が桶の五分の四程溜まったあたりで蛇口を止め、頭から一気に湯をかける。


 髪先が真っ直ぐに下を向いた。


 降ろされて視界を遮る長い前髪を耳にかけ、洗顔料の中身を掌に落とし、寝ぼけていた顔を洗う。


 再び桶に溜めた湯を頭からかけると、目が完全に覚めた。


 桶に洗顔料とその他を入れ、濡れた長髪を適当に纏める。


 湯船は少し熱かった。


 静かな水面に一つの波紋が立つ。


「…………」


 レイは壁にもたれ掛かった。


 これで数分間安らげる______筈が。



「只今戻った。…………何だここは」


 正面に突然、旅に出ていたハルクが現れた。


 神父のような服装のまま、翼を広げて湯の上に浮いている。


 ハルクは気怠そうな体勢で湯に浸かる主人を怪訝そうに見下ろした。


「主の魔力を追って帰ったと思えば、何なのだこの熱気は。あと主は裸で何をしている」


「言い方」


 レイは更に深く湯に浸かった。


「それで、ここは何処だ」


「学院の大浴場……竜で言うところの水浴び場だ」


「脆仙は温水を好むのか?」


「俺に言われても分からない」


 顎まで沈んだレイは足を寄せた。

 つまりは体育座りである。


 ハルクは興味深げに湯を突き、びくりと手を引っ込めた。



 その時、より不幸な事故が発生した。



「久し振りハルクってあっつ!」


 ディウルカが来た。


「何やってるの」


 レムノスも来た。


(……上がれない)


 レイが表情を強張らせた。


「いや、主の魔力を辿ってきたのだが、このような場所に居たのだ」


 淡々と語るハルクの言葉に、ディウルカとレムノスが片眉を持ち上げる。

 同時に呟いた。


「……主?」


 そして二人はそこで気づいた。


 馴染みのある魔力の反応に。


 二人はその魔力の持ち主を見た。


「あ、レイ様」


「おはよう」


「…………おはよう」レイは更に体を縮ませた。


「何でそんな体勢なの?」


「…………その、」


「レイ様、魔力が揺らいでる。のぼせてるかもしれないから、早く上がったほうがいい」


「レムノス」


 レイは僅かに声を張った。


 ようやく二人は黙った。


「……外に行ってくれないか?」


「何故?」


 レムノスは本気で分からない顔をした。


 ディウルカが閃いたように指を立てた。


「あー、脆仙は異性に裸見られるの嫌なんだっけ」


「私たちに性別は無いけど」


「せめて後ろを向いてくれ」


 レイは顔を逸らして言った。

 レムノスは未だ小首を傾げたまま、言われた通りにレイから視線を外す。


 その隙にレイは近くに置いてあった桶の中のタオルを腰に巻いた。


「一先ずは……」


 レイは安堵の溜息を吐いた。


「もう良い?」後ろを向かされているレムノスが尋ねる。


「質問がおかしいと思う」ディウルカが呟いた。


「ここを出るという選択肢は無いのか?」


 濡れた床に水飛沫を立たせ、レイが浴場を出ようとする。


 突然、ディウルカが何かを思い出したように勢いよく体の向きを変えた。


「あ、そうだ、テオ様が……」


 と、床を蹴ったとき、脚に衝撃は伝わらなかった。



 ________滑った。




「あ」




 丁度、レイの真後ろだった。


 回転する視界の中、自分を受け止めてようとして後ろに滑るレイが映った。




「ごめん、久し振りに走って滑った」


「気にするな」


「頭打ってない?」


「打ったがある程度は耐性がある。平気だ」


 ガチャ、と音が鳴り、扉が開いた。


 寝起きのテオが居た。


「兄さーん、何か救難信号だしてたけど、風呂で転びでもしたの? …………うぇっ⁈!」


 テオの顔が一気に赤く染まり上がった。


 編まれていない一房の長髪が跳ね上がる。


 原因はそこに広がる光景である。


 具体的にはこうだ。




 転んだ時に仰向けに倒れたレイ。床の上に長い襟足が広がり、体は湯から出たばかりであるため濡れている。血流は一時的に改善し、心なしか顔色も良く、つまりはいつもより赤みを帯びていた。


 そして前に転んだディウルカ。咄嗟に着こうとした手は偶然にもレイの手首に乗り、四つん這いのような姿勢になっている。




 まあ要するに、ディウルカがレイを押し倒しているような光景になっていた。




「な、な…………」







「何してんだよアンタら!!!!」

技解説その1

〈裂氷〉

使用者:セノカ(一応レイとテオも使えるが、セノカが最も扱うのが上手い)

氷属性の魔法。対象物の内側から凍結させ、裂く。発動から凍結までの時間はほぼ無いため、防ぐためにはセノカと全く同じタイミングで発動場所を燃やす必要があるが、勿論見誤れば自分で内臓を焼くことになる。扱うには高度な技術を必要とし、一般人が発動しようとすれば魔力量がまず足りず、相手の体が冷える程度になるか、狙っていない場所が凍る。最悪自分の内臓が凍りつくこともある。

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