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学院長室にて

「やあこんにちは、三つ子とは珍し」


「ご用件は何でしょう」


 入学式直後に呼び出された三つ子は、陽気に話してくるシラーの前で直立していた。


 本来女子であればシラーを見て照れ笑いをするのだが、セノカの顔からは恋愛感情どころか学院の長に対する尊敬すら抜け落ちている。


 一方でテオは畏まった様子で真っ直ぐに立っていた。


「まあそんなに急がずに。同じフィロイドなんだし、気楽に話」


「ご用件は」


「ほら、座りなさい、お茶」


「ご用件」


「何茶が良」


「用件言え」


 セノカの声は段々と強まっていく。


 ようやく諦めたのか、シラーは悟ったように目を伏せた。


 そして手元に置いた四人分のカップを片付けた。


「何だか、今年の新入生は癖が強いね」


「俺もそう思いま」


「人のこと言えた口かい君」


 レイは小さく首を傾げた。


 シラーは三人に向き直った。


「フィロイドの新人となった君たちに、年長者そして教師として伝えておくことが幾つかあってね。そのために呼んだのさ」


「はいっ」


 テオが素っ頓狂な返事をした。


「君は真面なのかな?」


 シラーは安心したようにテオに優しい視線を送った。


「へあ?」


「まず、フィロイドは国内で最強と謳われる魔導士と騎士の集団だ。と言っても、現在フィロイドに騎士は居ないがね。さて、そんな最強の魔導士だ、結構な頻度で厄介な依頼を押し付けられる。君たち学生も例外ではない」


 黙って聞くセノカ達をよそに、シラーは再び棚からカップを一つ取り出す。茶が飲みたくなったらしい。

 高い位置から琥珀色の液体を注ぎ始める。


「高い位置から注いでも冷めるだけで変わりませんよ」


「そうなの?」


 シラーはポットの位置を下げた。

 優雅に茶を飲みながら話を続ける。


「そこで、依頼の時は私から直接連絡させてもらう。学生たるもの学業を優先したいが、君たちどうせ卒業できる位には頭良いだろ?」


「まあ一応」



「正直でよろしい…………………で」シラーはセノカを指差した。「そのすっごく取りやすそうな所にしまってある退学届は何に使うつもりかな?」



「出そうと」


「正直でよろし…………いや、しようとしていた事はよろしくないね。却下です」


 セノカは殆ど表情を動かさずに舌打ちした。


「退学ってどういうこと?」


 テオは二人を見た。


「お前分も用意してあるが、このまま学院で過ごしたいなら私とレイだけの退学で済ませようと」


「そうじゃなくて!」テオは二人の正面に移動した。「姉さんと兄さんは学院に通わないの⁈」


「通わないし、通う必要も無い」


「そんなあ…………事実そうだろうけど……」


「駄目だよー、こんな面白い生徒を逃したくないし、君たち友達とか居なさそうだし」


 教師がここまで言うのは、相手がこの三人だからである。


「居ても邪魔になるだけです」


「兎に角認めません」シラーは指でバツを作った。「通うだけでも通っておきなさい」


「………………」


 セノカはレイを見た。


 レイも困ったように……表情には出ていないが確かに困ってセノカを見ていた。


 次にセノカはシラーに視線を向けた。


 もう話を聞く気は無いようで、視線を逸らしながら優雅に茶を飲んでいる。


 肩を落とすテオを見下ろした。


 何かを訴える瞳で二人を見詰めている。


 セノカとレイは俯いた。


 そして面倒臭そうに顔を上げた。


「……分かりました」


「おお!」


「ですが優先はしません」


「結構だよ」


 



「ようこそ、学院へ」

登場人物プロフィールその13

シラー・マルテーネ・グリーニャ

種族 脆仙

年齢 27歳

身長 177cm

体重 62kg

好きな物・・・紅茶、青菜、怪談

嫌いな物・・・海藻、考えの古い老人、教頭

好きな言葉・・・天衣無縫

恋愛的な好み・・・自分に靡かない女性

特技・・・誘導尋問

最近あった良いこと・・・教頭が机の角に指をぶつけるのを目撃した

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