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男子会と女子会

「改めまして」


 取り乱していたクリスも落ち着き、テオがぐったりとしている中、レイは部屋の中心に置かれた椅子に座って言った。


「私のことはレイとお呼びください、兄上」


「わたしはテオで…………」


「すまん。ちょっと驚いた」


 クリスは未だテオをちらちらと見ている。


 小柄な体格に繊細な顔立ちは、何度確認しても男とするには無理がある。


 もしや、精神的な性別は男で体は女、とかだろうか?


「テオは心身どちらも男です」


 思考を読んだようなレイの言葉にクリスの心臓が跳ね上がった。


「おお、そう…………僕はクリスだ。クリス・モリエーネ・ロメリオスト。前まではヘリシアだったが」


「態々こちらに引っ越していただき、ありがとうございます」


 レイは矢張り上品な笑みを作って軽く頭を下げた。


「良いけど……二人はまだ名乗っていないではないか」


「名乗っていない?」


「レイとお呼び下さい、とかしか言われてない」


 レイとテオは顔を見合わせた。


「んー、本名が名乗るにしては長いので」


「何だそれ、気になるから言ってみろ」


 クリスは初対面でも、同世代以下なら話せるらしい。


 レイとテオは考える動作をした。

 そして順番に本名を名乗った。



「長っ」


「なので略称でお願いします」


「しまーす」


「わかったよ」



・・・



「ごめんなさいね、失礼なことに驚いてしまって」


「気にしていません」


 前世でも偶にあった。


 ある時は喫茶店で読書をしていたら数人の女子大生に囲まれて、またある時は銭湯の女湯に入って何人かに警戒心に満ちた目で見られたりと。

 不便には違いないが、女性用の服は動きが制限されるから着たくない。


「それと、私に敬称は不要です。貴女にとっては子の立場ですので」


「あら、それではセノカと呼ばせていただくわ」


 モリアは少し離れた場所で気配を消して湯に浸かっているミーレに視線を向けた。


「何しているの、こっちに来なさい」


 ミーレは首から下を湯の中に隠して首を横に振る。


「姉上、こちらで話しましょう」


 ミーレは二人から目を逸らす。


 と、その時、湯が揺れる音がした。


 いつの間にか、隣にセノカが座っていた。


「姉上」


「うぎゃっ⁈」


 ばしゃ、と激しい波を立たせ、ミーレが飛び上がった。


「学院のこと、教えて下さい」


 セノカはにこりと微笑んだ。


「へ…………?」



・・・



「その、ラグナル先生が、喋り方が面白くて笑いそうになります。……と言うか、一度吹き出して怒られました」


「ああ居ますよね、そういう人。ラグナル先生は、何を教えていらっしゃるのですか?」


「算術」


「重要ではないですか。それは大いに困りますね」


「ええ。なのに試験後には『君たち、私の授業に不満があるのかね』と言ってくるの」


「おや理不尽」


「本当に」


 つい数分前までは泳ぎに泳ぎまくっていた視線が徐々にセノカの目と合ってきた。


 モリアも二人のもとに寄って来たが、娘の愚痴に呆れた表情を見せている。しかしどこか安心するように笑っている。


「他に何か、面白い話はありませんか?」


「そうねえ」


 ミーレは顎に手を当てて考え出す。

 セノカは物語の続きを待ち望む子供のような顔でそれを見ている。


「……面白い話は無いけれど、王子王女殿下が内部進学するのよ。貴方達と同じお年だから同級生になるのではないかしら」


「……ほう」


「学院についてのお話はこんな所ね」


「ありがとうございます、姉上」


 セノカが立ち上がり、湯船から出た。


(忘れてたけど背が高いわねー…………良い体格だわ)


 外で女性らしく振る舞っていれば婚約者くらい出来ていそうな見た目である。


 後ろ姿をまじまじと見つめてミーレとモリアはそんなことを考えていた。


「上がらせていただきますね」


「では私も」


「待ってくださいお母様」


・・・



「あ、姉さん……と、姉上と母上」


 寝巻きを着て脱衣所を出ると、これから風呂に入るらしい野郎三人に出くわした。


 クリスは楽しそうに話している。こちらは何事も無く馴染めているようだ。


「うわっ、セノカ」


 クリスが一瞬、びくりと反応した。


「何でしょう?」


「あー、いや、何でもない」


 クリスは気まずそうに視線を逸らし、レイとの会話を再開した。大方、また性別のことだろう。


 態々咎める理由も無く、セノカとモリア母娘は軽い愛想笑いの後各々の部屋へと戻る。

 モリアの部屋は二人と逆方向にあるため、二階に上がった辺りで手を振って別れた。

 一方でミーレの部屋はセノカの二つ隣、クリスの隣室に位置している。


「おやすみなさい」 


「ええ、また明日ね」


 セノカは一つ軽く礼をして自室の扉を開けた。


 すると、そこにはレムノスが座っていた。


「お姉さん、良い人だった?」


「ああ」


「私も話したい」


「やめろ。ミーレは口が軽そうだ」


「はあい」


 レムノスの姿が魔法陣の中に消え、そしてその魔法陣も消滅した。


 一人残されたセノカは既に魔法で乾いた長髪をベッドの上に広げ、瞼を閉じる。


 兄姉が増えた。いずれ死ぬかもしれない自分達三人にとっては都合の良いことだ。学院の情報も多くはないが入手出来る。あの二人は性格も悪くはなさそうだし、今後の目的にこれ以上好都合な偶然は無い。





 あの二人の実父の犠牲のおかげで、この家の次期当主を「作り出す」必要も無くなったのだから。

登場人物プロフィールその10

クリス・モリエーネ・ロメリオスト

種族 脆仙

年齢 16歳(三つ子とは2歳差)

身長 169cm

体重 62kg

好きな物・・・豆類、トカゲ、春g……何でもない

嫌いな物・・・勉強、蜘蛛、柑橘類

好きな言葉・・・唯我独尊

恋愛的な好み・・・真面目な女の子

特技・・・それっぽい演説

最近あった良いこと・・・優秀な先輩に褒められた

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