✦第七話「あなたの普通が、世界を救う」✦
「咲様。いよいよ女子会、最終議題です」
「……今日で最後なんだね」
「議題は、“あなたにとって女子とは何か”」
「え……そんなの、私が決めていいの?」
「本日のあなたは、地球の代表。すべての銀河女子たちの前で、それを語る義務があります」
「……責任、重すぎるでしょ……」
◆ ◆ ◆
特設会場は、月面の観測ステーションを模した空間。
ガラス張りのドーム越しに見えるのは、青く輝く地球。
その中心に、咲はひとり立っていた。
向かい合うのは、銀河から集まったすべての女子たち。
リロの触手が揺れ、エミリナの瞳が潤み、ノヴァは剣を置き、ナムリは時間を止め、クロナは言葉を待つ。
ヴィヴィが静かに問いかけた。
「朝日咲さん。あなたにとって、“女子”とは──なんですか?」
◆ ◆ ◆
咲は、迷いながらも口を開いた。
「……“女子”って、たぶん、“自分を楽しむ”ことだと思う」
少しだけ照れながら、言葉を重ねる。
「好きな服を着ることとか、恋に悩むこととか、他人と比べて落ち込むこととか──」
「それ全部、“わたし”でいたいって思ってるから、そうなるんだと思う」
「誰かの期待に応えようとするんじゃなくて、誰かと並んでいたいって思える、そういう気持ち」
「私が“わたし”でいられる場所を、誰かと作りたい……それが、女子会、なんじゃないかな」
しん、と静まる空間。
でも、すぐに拍手が──ひとつ、またひとつ、増えていく。
触手で、光で、剣の柄で、無数のかたちで。
ヴィヴィが判定を下す。
「女子会、最終議題──承認。地球文化、銀河交流対象国に認定されました!」
「──やった……!」
◆ ◆ ◆
その日、宇宙は静かだった。
誰もが違って、誰もが正しかった。
だからこそ、誰もが笑いあえた。
◆ ◆ ◆
地球に帰った咲は、いつもの教室に戻る。
誰かが髪を切っていたり、ちょっとだけメイクが上手くなっていたり、席替えの噂が飛び交っていたり。
“普通”が、そこにあった。
「ヴィヴィ、また来るの?」
「もちろんです♪ 次回女子会、すでに銀河のあちこちからリクエストが殺到しております」
「またあんな大変なのやるの!? もうちょっと静かで、平和なやつがいい……!」
「“女子”に平和はありません♪」
「名言っぽく言うなーッ!!」
誰かにならなくていい。
自分でいることを、誇っていい。
それを思い出させてくれたのは──宇宙からやってきた、女の子たちだった。
彼女たちは、きっとまた来る。
理由はひとつ──**「女子会がしたいから。」**
⸻
第一部 完




