✦第三話「戦う女子はセーラー服に恋をする」✦
「咲様、本日の参加者は“戦闘民族ガルデア第七部隊所属・ヴァルカ・ノヴァ少尉”です♪」
「待って、それ完全に軍人じゃん!! 女子会のレベル超えてるって!!」
◆ ◆ ◆
「私はヴァルカ・ノヴァ。本日は女子文化という戦場の偵察に来た」
……その女は、スカートを履いていた。しかもセーラー服。なぜか片腕にガントレットを装備して。
「我が部隊では、“制服”=“戦闘服”。この“セーラー服”は機動性・視覚効果ともに優れていると判断した」
「いや、完全に見た目で選んだよね!? あとそれアニメの影響じゃない!?」
「だが問題がある。どうやらこれは“男子を威圧する効果”があるらしい」
「どんな誤解!? セーラー服って武器じゃないからね!? というかどこで情報仕入れたの!?」
「女子中学生のSNSだ」
「最も信憑性のない情報源だーーッ!!」
◆ ◆ ◆
ノヴァは、“視線による意識制圧”を検証するため、近隣の男子校へ潜入した。
結果──
「撃墜数:11(視線による失神)」
「戦闘不能数:27(言葉を発せずフリーズ)」
「逃走:多数」
「いやだからそれ全部“恋”とか“緊張”とか“青春”の副作用なのよ!! 誤解よ! 誤射よ!!」
「……恋?」
ノヴァの目が鋭く光る。
「それが……この惑星最大の“精神汚染兵器”か……?」
「違う違う違う違う!!」
◆ ◆ ◆
咲は、制服を“自分らしさ”で選ぶ日が来たらどうなるか、ノヴァに語る。
「好きな服を着るって、戦うことじゃなくて、“自分を受け入れる”ことなんだよ」
「……受け入れる……?」
「そう。“誰にどう思われるか”より、“自分がどうありたいか”のほうが大事なんだって、最近思うようになってきた」
「──その信念、しかと受け取った」
ノヴァはその場でセーラー服のリボンをちょっと斜めにし、「これは、私らしさの表現」と誇らしげに立った。
◆ ◆ ◆
放課後、ヴィヴィ出現。
「本日も華麗なる文化交流、成功です♪」
「成功してたか!? 男子校が半壊してるんだけど!? というか私もう幹事やめていいかな!?」
「次回のゲストは“時間を巻き戻すロマンス観察者”です♪」
「待って、なんかタイムリープっぽいの来たぞ……!!」
制服は、鎧じゃない。
でも時々、心を守ってくれるものになる。
それに気づいた彼女は、そっとリボンを結び直した。