✦エピローグ2「となりで見てた、わたしの物語」✦
咲が変わったのは、あの日からだった。
授業中にいきなり消えたと思ったら、戻ってきたときには目がキラキラしててさ。
口では「もう無理、マジで無理」って言ってるのに、なんか……楽しそうだった。
◆ ◆ ◆
最初は私も、なんかの“恋”でも始まったのかなって思ってた。
でも、どうも違う。
咲は、誰かと“ぶつかって”、悩んで、泣いて、それでも笑おうとしてた。
「私ね、女子って、もっと自由でいいんだって思ったんだよ」
その言葉、なんかズルいよ。
だってそれ、今までの私が言えなかったことだったから。
◆ ◆ ◆
リロちゃんの“メイク”が話題になってた日、私も密かに口紅を買った。
エミリナの“恋バナ”が空を染めた日、私はあの時の初恋をこっそり思い出した。
ノヴァのセーラー服事件では、なんかスカート丈を2cm伸ばしてみた。
ナムリと咲が見つめ合ってた夕方、私は教室の窓からふたりを見て、何も言わなかった。
クロナが「自分がわからない」って泣いた日の夜、私、日記帳を初めて破った。
“誰かにならなきゃいけない”って、勝手に思ってたのは……私のほうだった。
◆ ◆ ◆
私の親友、朝日咲はすごい子だ。
宇宙からきた女子たちと対等に笑い合って、ぶつかって、信じて──。
でも、たぶん彼女自身は気づいてない。
彼女自身が、誰よりも“普通”で、誰よりも“強かった”ってこと。
◆ ◆ ◆
打ち上げの写真が、スマホに残っている。
月面カフェの背景に、咲が立ってる。隣には、銀河中の“友達”。
私はそこにいなかったけど──でも、咲の“隣”には、いつだっていたと思う。
「ねえ咲、今度さ──地球の女子会、私たちでやらない?」
返事はまだだけど、
たぶん、あの子のことだから──
「うん、いいね」って、笑うんだろうな。
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おしまい。