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沈む皇室  作者: 弓張 月


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内親王誕生3

今回は内親王の命名とお印が決まります。

誕生というと「源氏物語」を思い出します。

桐壺の更衣の出産の時帝はすぐ「御産養」を行ったと。賜剣の儀など一切が入ったものが1000年前から延々と続いている事に驚くと同時に素晴らしい伝統だなと思います。

お楽しみください。


秋月宮家に生まれたのは内親王だった。

「姫か。一の姫か」と帝は破顔一笑。もう嬉しくてたまらないご様子で

「「いつ見舞いにいけるか」と側近にお聞きになる。

后宮は内親王だった事にほっとして、それから帝のはしゃぎぶりを好意的に見つめる余裕が出来た。

「御上。まだ生まれたばかりですよ」

「そうだね。いや、そうなんだけど」

うずうずなさっているのが見て取れる。

何といっても初孫であるし、しかも蓮宮以来の内親王なのでお顔をみなくても「かわいい」状態なのだ。

「お父様。お母さま。お姉さまがご出産あそばしたの?」

部屋に飛び込んできたのは蓮宮。頬が紅潮している。

「いつお見舞いにいけるかしら?」

「一緒に行ったらいいだろう」と帝はおっしゃった。

しかし后宮は「今日は東宮を先に伴うから、あなたは明日になさい」と止めた。

順番的にはそうなのだが、なぜ4人で行ってはいけないのだろう。

「でも」と蓮宮はちょっと抗議する。

それを遮るように后宮はおっしゃった。

「菜子ちゃんは出産したばかりで弱っているの。大勢でおしかけたら迷惑だわ」

「そうね。はい。じゃあ、明日以降にします」

蓮宮はこくんと頷くと

「お姉さまに伝言をお願いします。おめでとうございますって。私がとても喜んでいるって」

「わかったよ。必ず伝えるから」

と帝はお答えになった。


夜になると帝と后宮と東宮が宮内庁病院を訪れた。

まずは二宮が出迎え3人を(いざな)って病室に向かう。

菜子がいる病室ではベッドの横に小さなコットがおかれ、その中に生まれたばかりの内親王がすやすやと眠っていた。

「おお、可愛いね」と帝はおっしゃり「菜子似だろうかね」とおっしゃる。

菜子は恐れ多くて「さあ、まだわかりません」と控えめに答えた。

後ろで東宮が二宮に「僕も伯父さんになったんだね」とのんびり言って笑った。

「僕も叔父になりたいですよ」と二宮が返すと、東宮は「またか」という顔で弟を見つめため息をつく。

「しっかりお育てなさい」と后宮は微笑んだ。

「肝に銘じます」と菜子は答えた。


病院の前にはマスコミが押し掛けていて、直接帝や后宮に声をかける。

「いかがでしたか」

帝は「いい赤ちゃんでした」と答えた。

二宮は「可愛い。私に似て」と親ばか発言をして笑わせる。

東宮の影はすっかり消えていた。

内親王には様々な儀式が待ち構えている。

マスコミと良好な関係を保っている二宮を后宮は複雑そうな表情で見つめる。

もう少し兄を立てられないものか。

自分の喜びに浸りすぎているのではないかと。


皇室に生まれた子はその瞬間から様々な儀式が待ち受けている。

まずは賜剣しけんの儀。

これは親王でも内親王でも最初に行う儀式で守り刀を賜う儀。

国宝級の刀鍛冶に打たせた剣を帝から賜るのである。

それから三権の長が祝いを述べる「祝詞(のりと)言上の儀」

そしてお七夜に行われる「浴湯よくとうの儀」

そして命名。

秋月宮家では宮が必死に漢字を探し、考えに考えた挙句

理子りこ」と名付けられた。

全てにおいて理性的に理知的にという意味がこめられ、さらにお印は「なでしこ」に決定。

古来から「大和撫子」と呼ばれる程に身近で可愛いピンク色の花。

この可憐さこそ内親王にふさわしいと宮は考えたのだ。

「理子ちゃん」

菜子はそっと呼んでみた。

小さな理子内親王はぎゅっと母の指を握りしめ、生まれたばかりだというのにもう父の顔がわかるみたいに目があう。

「この子はすごいね。もう僕の顔がわかるんだ」

「まあ、殿下、ちょっと・・・」

「ちょっと?」

「いえ、そうですね。理子ちゃんはお父様が大好きよね」

と菜子は微笑みかけた。


退院の日。

ピンクの服に髪を母親らしく上げた菜子と腕に抱かれた理子内親王、そして宮が出てくると、病院前にたむろしていたカメラのフラッシュが痛い程に突き刺さった。

誰もがこの理子内親王の誕生を喜んでいた。

そして菜子の輝くような美しさにも驚き、若い夫婦が子供を得た慶びを隠さないその姿勢にみな共感した。

そんな幸せな皇族を見るのが国民は楽しみだったのだ。

菜子が理子を抱きながらそっと宮を見上げる時、本当の「幸せ」がそこにあると誰もが思った。

宮邸には沢山のお祝いの品が届いていたし、早々に蓮宮が宮邸にいて理子の部屋を整えさせ、可愛い縁取りのベッドカバーを持ち込んで敷いていた。

「おかえりなさいませ。お兄様、お姉さま」と蓮宮は嬉しそうに菜子から理子を受け取ってベッドに連れて行く。

「誰がは母親かわからないな。いいのか?こんな所で油を売って」

兄の嫌味にも蓮宮は知らん顔して

「いいのよ。私、おばちゃまですもの。ねえ、理子ちゃん。御姉様、お疲れでしょう?すぐにお茶を入れさせるからお休みになって」

「まあ、蓮宮様。内親王様の面倒はこちらにお任せを」

と牧野侍女長はいい、さっさと蓮宮を椅子に座らせる。

「いいのに。私がやるのに」

「直宮様にそんな事をさせるわけには参りません。理子さまはこちらで」

侍女長の得意気な顔に蓮宮はちょっと呆れて、でも仕方なく椅子に座った。

侍女長だけでなく、里中を始め、宮内庁職員がまるで生まれたばかりのキリストを拝むように代わる代わる理子のベッドを見に来るのでとりあえず母乳の時間まで楽だという事で、夫妻と蓮宮は香のいい紅茶とシフォンケーキを食べながら、暫くの間語りあっていた。





とにかく無事に内親王が生まれてよかった・・・当時は本当に国民がそう思っていてアイドル出現という感じでした。

首が座った立った歩いた~~みたいな一挙手一投足が報じられました。

服も決して高級ではなく妃殿下の手作りだった事も好感を持たれましたよね。

それがあっという間に変わっていくのですから、マスコミの浅はかさがよくわかる30年でした。

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― 新着の感想 ―
御返信、恐れ入ります。 …無私とは程遠い御心掛けだと思いますね。 だから皇室が歪んでいくのだと、悪鬼餓鬼に付け込まれるのだと、 たかが民草なりに嘆息するものです。
后宮の、東宮と二の宮に対する感情の天秤が余りに偏っていることに不快感を禁じ得ません。どちらも大切な皇統からの預かりものでしょうに。…って、リアルを重ねすぎでしょうか?(苦笑)
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