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沈む皇室  作者: 弓張 月


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22/30

留学と結婚 3

いつも読んで頂きありがとうございます。また感想も嬉しく拝見しています。

感想がないとちょっと寂しい気分になるので、どんな感想でも構いませんのでよろしくお願いします。


東宮御所に帰る車の中で二宮はずっと黙っていた。

頭の中はさっき聞いた話で一杯だったからだ。

「マスコミが我々のサークルに目を付けたんです。それで、ほら、噂が飛び交ってるんです。菜子ちゃんが殿下の彼女だって。いつそれが写真週刊誌に載ってもおかしくありません。それに・・こっちの方が僕的には怖いと思ってて」

「それは?」

「宮内庁が拾宮様のお妃候補として菜子ちゃんを推薦しているという話です」

二宮はあっけにとられた。

確かに宮内庁に菜子との交際を話した事はないけど、東宮夫妻は自分と菜子の付き合いを知っている。

「なぜそんな話に」

「それが・・・」仁科は声を低めた。

「拾宮様のお妃候補がみんな逃げてるという話なんです。どういうわけか候補にあがるとすぐに結婚してしまう。それで東宮職も困ってお妃候補の範囲を名家だけでなく修学院生まで広げようと」

修学院・・・東宮妃にとってそれは鬼門のような存在。

今でも東宮妃は清泉を出ている事を誇りにしているし、修学院など偏差値が低いとしか考えてないだろう。

皇族が入る学校だからステイタスはあるけれど・・それぐらいにしか考えていない筈。

成婚の時より「修学院出でない事」を散々周りから指摘され「これだから平民は」と言われてきた事を根に持っている事は二宮も知っている。

だから最初はよその大学出身の名家ばかりをさがしていたのだ。

「津島教授のお嬢さんは非常に古風な女性として、OBらが目をつけているという話なんです」

宮内庁OB。

それは元職員で今は定年退職などをして隠居生活に入っている人たちだ。

しかし、彼らは御用掛けとして臨時採用されていたりするし、皇子や姫の誕生日には必ず呼ばれる。

「気を付けて下さいと言っても、どうしようもないですけど」

仁科は引き続き、何かあったら国際電話をかけてでも教えると誓ってくれた。

「お兄様、お疲れになったの?」

蓮宮が隣で声をかける。

兄の顔色があまりよくないと思ったようだ。

「お酒を沢山召し上がったんじゃなくて?大兄さまみたいにザルとまではいかないけど、お兄様も結構お飲みになるから。それにたばこも」

まるで親のようにうるさい妹だ。

「今日もね。菜子さんとそんな話をしていたのよ。あの方はお兄様の運命の人ね」

「なんで?」

「だって、こんなお酒飲みやたばこばかり吸う人を好きになるなんてそうそういないもの」

「そんな事ないよ。タバコはすぐに止めるよ」

「そうおっしゃってどれくらい経ったのかしらね」

「お前は大兄さまの心配だけしてればいいの」

こつんと頭を小突くと、「痛い」と宮は言って大げさに自分の頭を撫でた。


いよいよ、留学まであと数日という日。

日差しは強く、東宮御所のアサガオもよく咲いている。

二宮は、ついさっきまで菜子と一緒にいて別れを惜しんでいた。

菜子は泣かないように必死に我慢していたけど、目には涙がたまっていて、それを見たら急に留学なんかやめようとと思ってしまう程だった。

しかもけなげに

「毎日お手紙を書いてもよろしい?お邪魔なら・・・」

「毎日待ってるから」

「殿下はせっかくこれからなさりたい勉強があるのだし、あちらはとてもいい所でしょうし。きっと私の事なんか忘れてしまう。わかってるけど」

「何で忘れるの?僕たち、結婚するんだよ」

「だって殿下はお背も高いし・・は・・」

「は?背が高いと何?言ってご覧」

二宮はぐいっと菜子の顎を上げる。菜子は真っ赤になって

「は・・ハンサムだしっ!きっとあちらでは綺麗な女の人と」

何を心配しているかと思ったら。

二宮は思いきり菜子を抱きしめた。

「あちらの国には勉強をしにいくんだ。毎日ナマズとか蛇とかに囲まれて暮らすんだよ。そんな男を好きになるのは菜子しかいない」

「はい。ごめんなさい」

「菜子は可愛いからいろんな男が近づいて来るね。そっちの方が心配だよ」

「まさかっ!私は殿下一筋です!」

菜子のおでこもほほも熱を持っている。熱い。ああ、本当になんて可愛い少女だろう。

こんな可愛い娘を一人でマスコミにさらさなければならないとは。

「行ってらっしゃいませ。お待ちしています」

菜子は涙を拭いて笑った。きらきらした笑顔だった。


そして今、二宮は家族がくつろぐ広いリビングで

「もし、留学が終わるまでにお兄様の結婚が決まっていなかったら僕は先に結婚します」と宣言した。

そこにいた東宮夫妻も拾宮も蓮宮もびっくりして視線は二宮に集中した。

「一体どうしたというの?」

東宮妃が怒ったようにおっしゃった。

「あなたは今から留学するんでしょう?結婚なんて」

「津島教授の娘かい?」

父宮は穏やかに言った。

「そうです。留学期間は2年です。帰国した時にお兄様の婚約が決まっていなかったら、僕が先に結婚します」

「長幼の序というものがありますよ」

東宮妃は努めて怒った口調にならないように控えた。

「弟が兄より先に結婚するなんて前例のない事ですよ」

「それはそうです。だからお兄様には頑張って頂かないと」

急にふられた拾宮は驚いて

「そう・・だね。何を頑張ったらいいのかわからないけど」

「お見合いを頑張って下さい。お兄様にふさわしい女性は必ずいると僕は信じています。だから2年以内に結婚して下さい」

「無茶いうなあ」拾宮は笑った。

東宮妃も少し落ち着いて「それはそうですよ。浩宮は結婚しないと」

「次期東宮というものは、きちんと結婚して後継ぎを生み出す義務があるんだよ」

東宮は改まった様子でおっしゃった。

「お前の結婚が決まらないと二宮も蓮宮も結婚が遅れてしまう。そういう責任感を持って臨まないと」

矛先が自分に向いてきたと感じた拾宮は慌てた感じで

「でもご縁というものがあるでしょうし」

「縁は自分で作るものだ。どうもお前は昔から他人まかせの所があるから」

「そうは言っても」

「浩宮は次期東宮で帝になる身分なんですから誰でもいいわけではありませんわ」

と妃が助け舟を出す。

「二宮は気楽な立場ですし、蓮宮も降嫁するだけですけど拾宮の立場は重いわ」

二宮は「気楽」と言われた事にカチンと来ていた。

将来皇位にはつかないけれど、筆頭宮家として暫くは兄の隣に立つのだし、蓮宮だってそれなりの家柄の男でないと結婚は出来ないだろう。

兄が結婚して男子を得るまで・・・というのがひどく遠くに感じられた。

「僕は留学するからお兄様の側にはいられないけど、いつでも応援します。でもこういう事は期限を切った方がいいと思うんです。覚悟が違いますからね」

「そうか。そういうものか。うん。僕は頑張るよ」

拾宮は弟に助けられ、ほっとしたようにため息をついた。

東宮妃も笑っていた。

でも堂々と菜子と結婚すると言った事に対してどう思っているかは別。

妃の嫌いな修学院大学まで範囲を広げているという事は、本当に行き詰まっているのかもしれない。

二宮はとにかく釘は刺したので、今はこれ以上できる事はないと思った。


様々な思いを抱えたまま、二宮は飛行機に乗ったのだった。


さあ、いよいよ二宮殿下が留学してしまいました。後に残された菜子は?

拾宮に春は訪れるのか?

そして大和田家が動き始めます。お楽しみに。

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このところずっとログイン出来ず、感想も書けず、申し訳ないことでした。小説は読むことが出来て、毎回更新が楽しみでたまりません。お忙しいと思いますがよろしくお願いしますね。
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