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沈む皇室  作者: 弓張 月
1/12

ラストエンペラーの死

この物語は昭和20年から現在にいたるまでの皇室に関する歴史小説です。

勿論、フィクションですが、転生して異世界で姫になったりするわけではない、リアルな世界がそこにあります。

皇室は日本人にとって何だったのか。

タイトル「沈む皇室」とありますが、もし本当に沈んでしまったらこの国はどうなってしまうのか。

ホラーな一面もありますが、教科書に載らない歴史として楽しんで頂ければ幸いです。

静まり返った広い部屋の中で、帝は眠っておられた。

ここは宮廷の遥か奥の帝の部屋。

重厚で古いカーテンに仕切られ、光が入らないようになっている。

帝の体にはいくつもの点滴の針が通され、そのお蔭でやっと息をなさっている状態だ。

この管をいつ抜くのか、いつ「崩御」になるのか。

それは誰が決めるのだろう。

帝は夢うつつの中で64年の治世を振り返っておられた。


大きな戦争があった。

後にも先にも、このような悲劇に我が国が襲われた事はなかった。

だって、我が国は神々に守られた豊葦原(とよあしわら)の瑞穂の国なのだから。

そして帝の役割は国を護り平和を祈り、決して戦火に飛び込むような事をしてはならぬ。

それなのに。

国中は戦いの中で戦火で焼けただれ、沢山の名もない人々な死に、兵士たちも戦艦も我が国の技術の粋を凝らした全てのものを失ってしまった。

敵国の支配を受けた瞬間、帝は「現人神」ではなくなった。


けれど帝は祈りを止めなかった。八百万(やおよろず)の神々に、皇祖神に、ひたすら国民の未来を託し、祈り続けた。

そしてそれに応えるように国民もまた、帝を見捨てず、敬愛し続け、国の復興に尽くした。

今では世界でも指折りの経済大国である。


「許しておくれ」帝はいつも国民に心の中で語りかけておられた。

「苦労させたね。暑い日も寒い日も。いつも元気でいて欲しい。幸せでいて欲しい」

ああ、長い日がようやく終わるような気がする。


「お(かみ)

声が聞こえる。

懐かしい声。この声は・・・・

「おたたさま」

なんと40年も前に亡くなられた先帝の后。帝の母君ではないか。

母君は若く美しかった時のままの姿で目の前に立っておられた。

「おたたさま、私を迎えにいらしたのですか」

「そうですよ」と懐かしい声が答える。

「けれど、その前にあなたがなさった罪についてお話しなくてはなりませぬ」

「罪・・・それは私が戦争を止められなかった事ですか」

「まだそのような事をおっしゃって。あの戦争はあなたのせいではないと何度申し上げたら」

「だったら何の罪でございますか」

「帝は愛する后宮(きさいのみや)の為に女官制度をなくしました。その罪です」

ああ・・と、帝はため息をつかれた。

忘れてなどいない。

あれは宮家の姫と結婚の儀を挙げたばかりの頃だった。


宮廷では昔から側室制度というものがあり、それはおおむね帝に使える女官の中から選ばれてた。

特に近代においては、先々代の大帝には后にお子が生まれず、やむを得ない事情もあって、幾人かの女官が選ばれ、漸く先帝が生まれた経緯があった。

先帝と后の間には4人の親王が生まれたので、側室は入れなかった。

「それは私が全力で阻止したからです。私のあだなは「黒姫」そう呼ばれる程に色黒で決して美人とは言えない私を先帝は受け入れ、4人のお子を授けて下さった。

私が選ばれた理由、それは野育ちで丈夫だったから。東宮様はとてもお身体が弱く寝込んでばかり。一方の私は華族の庶子でしたから小さい頃は田舎でのびのび育って・・・ただそれだけの理由だったのです。

けれど顔のよしあしや学歴などを無視して選ばれた私に4人のお子が授かったのには天命ともいうべき事があったと信じていますよ。


そしてお上、あなたは東宮となり宮家から妃を選ばれた。

私からみればぼやっとした世間知らずの女王殿下でしたけどね」

「おたたさま、良宮(ながみや)はぼおっとなどしていませんよ」

「ええええそうでしょうとも。でも男というのは結局は妻のいいなり。あなたは妻の為に、女官制度を解体して、それまで独身の若い娘が泊まり勤務だったのを未亡人の通いにしてしまった。愚かな」

「泊まりを通いにしただけでは」

「いいえ、女官の務めは宮仕えだけではありません。万が一の時は世継ぎを産む役目もあります。それゆえに家柄や血筋を厳しく定めていたのです。お上と妃の間になかなか男子が誕生しなかったのはバチがあたったのだと私は思いましたよ」

「そんな昔の事、今更」

帝は齢86なのにまるで少年のようにすねた顔をしておみせになる。

良宮との間には最初4人も内親王が続き、「后宮は女腹に違いない」などと言われた。

けれど、5人目にやっと東宮が生まれ、あの時の国を挙げての喜びは今も心に残っている。

「お上が女官制度をやめてしまったせいで、未来永劫親王の妃には親王を産む義務が課されるのです。まあ、それも時代だからと言えばそうでしょう。けれど、お上、その東宮が問題なのです」

帝は少し驚いてしまった。

今や40を過ぎ、妃との間に親王2人、内親王1人を産んでくれた東宮の何が問題なのか。

「おたたさま、それはどういう」

いきなりピコンピコンとアラームが鳴り始め、医師達がざわつき始める。

帝は今やひん死の状態でおられた。

まずは序章の1をお読み頂きありがとうございます。

まだ、本編ではございません。

これから、実際の皇室が怒涛の争いの中に投げ込まれていく様が描かれます。

お楽しみに。

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― 新着の感想 ―
ああ、命なるかな、この人にしてこの疾あり(泣
いつもブログを拝見させていただいてます。 いよいよ小説として拝見できるということで、楽しみにしています♪
いつもブログを拝見させていただいています。 また書いてくださるそうで、とてもありがたく、楽しみに読ませていただきます。 お忙しいので無理をされませぬように。と言いつつ楽しみにしております(^^)
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