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第5踊 宮本いづみは天真爛漫

放送委員は各クラスから2名ずつ選ばれている。


一応進学校ということもあり、3年生は受験に集中してもらうため委員会は免除されているようだ。


クラスは5組あるため総勢20人、10組である。


月曜日から金曜日の5日間を10組で回すなら月に2回ぐらいだろう。


まぁ、別に何曜日担当でもいいな。


先生が黒板に表を書いている。


どうやら各組が何周目の何曜日がいいか立候補タイプのようだ。


「ここまででなにか質問はありますか?無ければ組で話し合って曜日を決めてください」


特に希望は無いが、一応高塚さんにも聞いておくか。

そう思い話かけようとしたら前の席から質問が飛び出した。


「先生!質問いいですか?」


質問者は前の席、宮本いづみである。


「はいどうぞ。」


先生は質問がないと思っていたのだろう。

少し驚いた素振りを見せたがすぐに優しい柔和な頬笑みを浮かべていた。


「組っていうのは、各クラスのことですか?他のクラスの人と組んでもいいですか?」


なるほど。

どうやら宮本さんは他のクラスに友達がいて一緒に組みたいのだろう。

他クラスに友達がいない自分にとっては無縁の考えだ。


「その通りだね。でもまだ1年生は入学したばかりだからね。まずはクラスで仲良くしてもらいたいかな」


先生は少し困ったような顔をしながらも当たり前のことを言っていた。


入学したばかりだからこそクラスメイトと仲良くして欲しいということだ。

うんうんわかるわかる。


すると宮本さんはまた質問を始めた。


「他の組の人と合同でやるのはいいですか?」


「はい。それは構いませんよ」


宮本さんは嬉しそうにニコニコしていた。


「あともう1つ!音楽を流すだけじゃなくて、トークとかもしてもいいですか?」


「それも構いませんよ。昔はよくトークして盛り上がってましたねぇ」


先生はどこか昔を懐かしむようにしみじみとしていた。


質問した宮本さんもどこか楽しそうだ。


先生は全体を見渡して質問がないのを確認すると、各組で話し合って決めるよう促した。


「高塚さん、僕はどこでもいいけど何曜日がいいとか希望ある?」


高塚さんはこちらをチラリと見て答えた。


「最初から水曜日と決まっている」


「水曜日だね。わかった」


五分ほどたち話し合いが終わったのち立候補タイムになった。


僕たち1年生は、2週目と4週目担当になった。


今日が一周目の金曜日だから先輩たちが楽したかったのだろう。


月曜日が3組、火曜日が1組、水曜日が2組、木曜日が5組、金曜日が4組になった。


それから放送室の機材の使い方を習って委員会はお開きになった。


帰ろうかと思ったら前の席の宮本さんが振り返っ手話しかけてきた。


「片桐くん、火曜日一緒に頑張ろうね!」


……ん?聞き間違いだろうか。僕は水曜日のはずだ。


「あぁ、水曜日がんばるよ」


そう答えると宮本さんは不思議な顔をしていた。


「なにをいっているの?片桐くんは火曜日と水曜日でしょ。私もそうだし」


ちょっと待て。

なんで僕は火曜日も放送委員の仕事をしなくちゃならないのだろうか。


ここはしっかり話をつけとかないとな。


「あのね、宮本さ……」


「それとも私と一緒にするのは嫌……なの?」


宮本さんは突然上目遣いで涙ぐんで懇願してきた。


周りも何事かとざわつき始めていた。


どことなく視線が痛い。特に隣から。


「いや、嫌じゃないよ!一緒に頑張ろうね」


そう答えると宮本さんは太陽のような笑顔で微笑んだ。


「ありがとう片桐くん!…………チョロイナ」


あれ?なんか聞こえたような……


「なんか言った宮本さん?上手く聞き取れなくて」


すると宮本さんはチロっと舌を出しながら


「ううん。なんでもないよ〜」


と言っていた。


今度こそ帰るかと荷物をまとめていたら、いきなり足に鈍痛が生じた。


「いたッ……」


なぜか高塚さんにすれ違いざまに足を蹴られた。


「…………誕生日プレゼント」


高塚さんはそう告げて視聴覚室を後にした。


ありがとうって言うべきだったのか?


いや普通に痛いんだけど……


僕の平穏な日々はどこにいってしまったんだ。


僕は帰り支度を終えて、視聴覚室を後にした。


下駄箱で靴に履き替え、自転車置き場へ向かった。

僕とヒロキングは電車通学であり、駅からは自転車できている。

まぁ自転車といってもママチャリなんだが。


通学時間は自転車で片道15分、電車で30分程度だ。

そこまで遠からずも近からずといったところだろう。

僕は自転車に乗り、駅へと向かった。


駅に着くとそこにはヒロキングがいた。


「ヒロキングも今帰り?」


ヒロキングは駅の待合室でベンチに座りながらスマホを操作していた。


「あぁ。片桐も今帰りか。誕生日だしなんかコンビニで買ってあげようか?」


王様、良い奴すぎるなぁ。惚れそうだ。


「お、ありがとう!ところで学級委員会どうだった?」


するとヒロキングは疲れた顔をしていた。


「色んな人に話しかけられて疲れたよ。彼女はいるんですかって。今日だけで何人とLINE交換したことやら」


え、LINE交換したんだ。

僕は親とヒロキングしかいないんだけど。


そう言いつつヒロキングは立ち上がり、コンビニでホットスナックを買ってきてくれた。


僕はありがたくそれをいただいた。


ヒロキングはほんとに疲れた顔をしていたから王様にも王様ゆえの悩みがあるのだろう。


僕らは到着した電車に乗り家に帰った。


月曜日から授業も始まるし、部活動見学も始まる。


何部に入るか決めないといけないな。

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