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第30踊 クラスマッチ開幕!彼女の応援が力になる


いよいよ迎えたクラスマッチ本番。


バレーボールは体育館、ソフトボールは第1運動場と第2運動場、百人一首は茶道部の離れで行われる。


僕たち2組の初戦は4組との対戦。


まずはソフトボールの試合だ。

クラスのみんなも応援にきてくれるらしい。


僕とヒロキングは体操服に着替え、運動場へと向かう。


「今日は楽しんで勝つぞ!」


ヒロキングがチームメイトを集めて声をかける。


「片桐が最高のピッチングするから、みんな安心して守備していいぞ!」


「ハードル上げるなよ!」


僕がツッコむと、みんなが笑った。

雰囲気は上々だ。


ヒロキングのジャンケンで僕たちが先攻になり、試合が開始した。


試合は3回まで総当たり戦で、勝ち数が多いところが優勝になる。


打順はヒロキングが決めた。4番がヒロキング、僕は3番だ。


1番打者がフォアボールで出塁。

相手ピッチャーの制球が定まらず、幸先の良いスタートだ。


続く2番打者はバットを当てたが、サードゴロ。


これで1アウト、ランナーは二塁に進塁。


そして、僕の番が回ってきた。

ここで流れを作りたい。


バッターボックスに立つと、ヒロキングがベンチから声をかける。


「片桐、後ろには俺がいるから安心して振れ!」


僕は軽く手を挙げ、それに応えた。


1球目はアウトローのボール。見送る。


2球目はインローのストライク。

振ったが、サードへのファールボール。


3球目、アウトハイのストライクゾーンギリギリの球を捉えた。


カキーン!


打球はバットの先に当たり、ライト前にポテンと落ちた。


これでワンアウト一、三塁。


「頼んだぞ、ヒロキング!」


僕は一塁から声をかける。


ヒロキングはそ初球を迷いなく振り抜いた。


カキーン!


打球は左中間を割り、ランナー二人が一気にホームイン。

走者一掃のツーベースだ。


「さすがヒロキング!」


黄色い声援が飛び交い、僕たちは2点を先制した。


後続は相手ピッチャーに抑えられたものの、いい形で試合の主導権を握れた。


「片桐、気楽に行こう!俺たちは今勝ってるぞ!」


ヒロキングがキャッチャーミットを構え、僕に声をかける。


初球、外れた。ボール。


続く2球目も外れ、ツーボール。


3球目は甘いコースに入り、相手打者が捉えた。


ライト前に抜けるヒット。ノーアウト一塁。


続くバッターもセンター方向にヒットを打ち、ノーアウト一塁二塁に。


僕は次第に焦り始めていた。


身体は動いているはずなのに、ボールは狙ったところに行かない。


「タイム!」


ヒロキングが駆け寄ってきた。


「片桐、緊張してんのか?」


「いや、そんなつもりはないけど……」


「深呼吸しろ。それでなんとかなるから」


僕は言われるまま大きく息を吸って吐いた。

だが、まだ制球は定まらない。


応援の声も次第に小さくなり、重たい空気が運動場に広がっていく。


心の中に、不安がじわじわと広がった。


やっぱり僕には無理なんじゃないか。


そんな思いが頭をよぎった瞬間だった。


「片桐!何やってんのよ!」


運動場に響く聞き慣れた声。


僕は驚いて振り返った。


そこには腕を組んで立つ高塚さんがいた。


普段より少し赤い頬をして、目を鋭く光らせながら僕を睨んでいる。


「私が見てるんだから、ちゃんとやりなさい!」


その一言に運動場全体がざわつく。


「高塚さんが応援してるぞ!」


「片桐くん、頑張れ~!」


クラスメイトたちの声が一気に大きくなり、応援の空気が戻ってきた。


ヒロキングもミット越しに笑い、軽く肩を叩いてくれる。


「ほら、片桐。高塚さんだけじゃなくて、みんな応援してるぞ」


もう一度深呼吸をして、僕はマウンドに立ち直った。


高塚さんの声が頭に響く


「私が見てるんだから、ちゃんとやりなさい」


その言葉に応えよう。

僕はそう決意して、腕を振った。


「ストライク!」


審判の声が響き、運動場が歓声に包まれる。


その後はヒロキングの的確なリードに応え、三者凡退でこの回を抑えた。


危なげなく試合を運び、さらに2点を追加して試合は4対0で僕たちが勝利した。


試合後、僕は高塚さんのもとへ歩み寄った。


「高塚さん、ありがとう。応援のおかげで助かったよ」


彼女は目をそらしながら言った。


「別に。あんたがここで負けると、私の見る目がないって思われるだけだから」


そう言いつつ、満足そうな表情を浮かべている。


「次のバレーも応援に来なさいよ。見てるから」


彼女の言葉が、不思議と胸の奥を温かくした。


どんなに厳しい状況でも高塚さんはちゃんと僕を見てくれている。


それが嬉しくて、僕は思わず口元を緩めて笑顔で答えた。

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