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特踊 私たちのクリスマス②高塚咲乃

中学三年生の冬。

夜空に浮かぶ満月を見上げながら、高塚咲乃はふと幼い頃の記憶を思い出していた。


まだ小さな子どもだった頃、公園の砂場で出会った男の子。


その男の子は、明るくて、眩しくて、まるで太陽みたいな存在だった。


咲乃が物静かでひとり遊びが好きな子どもだったのに対して、彼はいつも元気で、どんな人ともすぐに仲良くなれるタイプだった。


「一緒に遊ぼうよ!」


初めて声をかけてくれたときの彼の笑顔を、咲乃は今でも覚えている。


初めて自分を外の世界に引っ張り出してくれた存在だった。


その日から、咲乃は彼の後を追いかけるように遊んだ。


彼の明るさや、周囲を巻き込む力強さに惹かれたからだ。


自分も少しでも彼みたいになりたくて、真似をしようとしたこともあった。


でも、それは長くは続かなかった。


彼は自然に輝く太陽のような人。でも自分は……そうじゃない。


私じゃ、太陽にはなれないんだ。


それに気づいてから、咲乃は彼の真似をすることをやめた。


「……元気にしてるかな。」


そうつぶやいて、咲乃は息を吐く。

白く染まったその吐息が、月明かりの中で一瞬輝いて消えた。


あの男の子のように、自分はなれなかった。


太陽のように誰かを照らす存在にはなれない。

でも、ふと気づいた。


月だって、太陽がいれば輝けるんだ。


彼のそばにいるとき、自分も少しだけ輝いているような気がしていた。


だから、また彼に会えたなら、月として、彼のそばでその光を受けて輝きたい。


「もう一度、会えるかな……」


咲乃はつぶやく。


冷たい風が頬をかすめ、遠くから聞こえるクリスマスの賑やかな音が少しだけ心を暖めてくれる。


夜空に浮かぶ月を見上げながら、咲乃は願った。


いつかまた、彼のそばにいられる日が来るように。そしてそのときは、自分らしくいられるように、と。

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