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第3踊 からかい上手の宮本さん


教室に入ると、さっきの明るい髪色の女の子が笑顔で周囲と談笑していた。


まるで太陽みたいに明るい雰囲気だ。


でもその笑顔が少し心配だった。


周囲にエネルギーをばらまきすぎて、いつか燃え尽きてしまうんじゃないかって。


……って、僕が勝手に心配することじゃないよな。


ふと彼女の方を見ると、視線が合った。


ヤバい!僕は慌てて目を逸らす。


いや、なんで逃げるんだよ、僕!


こういう時は普通に振る舞えばいいだけだろ!


しかし次の瞬間、気づくと彼女がこっちに向かってきていた。


「ねえ、君も1年生だよね?」


近づいてきた宮本さんが、自然体で話しかけてくる。


「私は1年1組の宮本いづみ!よろしくね!」


「え、あっ、カタギリデス!」


言った瞬間に後悔した。なんだよそれ、僕は外国人か?


宮本さんは一瞬きょとんとした後、クスクスと笑い始めた。


「カタギリデスって……君、なんか面白いね!」


「いや、片桐秋渡です。カタギリデスじゃなくて……その、普通に日本人です。」


慌てて訂正すると、彼女はまた笑った。


「わかってるよー。からかっただけ!じゃあ、片桐くんね?」


彼女の明るい声に促されて、僕は少しだけ肩の力を抜いた。


「……そうだよ。1年2組。」


「へえ、2組なんだ。ここにいるってことは、同じ委員会ってことだね!」


彼女は嬉しそうに言った。


「うん、そうだよ。君も放送委員?」


「そうだよー!私ね、マイクに向かって喋るのってちょっとワクワクするからやってみたいなって思ってたの。」


彼女は目を輝かせながら言った。


「そうなんだ……僕は、あんまり目立ちたくないんだけどね。」


「えー?目立ちたくないのに放送委員って、なかなかチャレンジャーじゃない?」


「いや、僕がやりたいって言ったわけじゃなくて、先生に勝手に決められただけなんだよ。」


「そっかー、でもそれも運命だよ!なんか面白そうじゃない?」


彼女は楽しげに笑った。


「運命って……そんな大げさなものじゃないと思うけど。」


「そんなことないよ。こうやって片桐くんに会えたのも、委員会が同じになったのも、ぜーんぶ運命だと思うんだ。」


彼女の言葉は真っ直ぐで、ちょっと恥ずかしくなるくらい眩しかった。


「……そうなのかな。」


「そうだよ!」


彼女は僕を指さしながら笑った。


「じゃあさ、これからよろしくね、片桐くん!」


彼女が差し出した手に、僕は一瞬戸惑った。


えっと、これって普通に握手していいんだよな?


いや、変な意識をするな。


握手はただのあいさつだ。やれ、僕!


「よろしくお願いします。」


そう言いながら僕が手を伸ばそうとすると


「ちょっと待った!」


宮本さんは手をひっこめた。


「片桐くん、いきなり女の子の手を握ろうとするなんて……まさか慣れてたりするの?」


挑発するような笑顔を浮かべて言う宮本さんに、僕は慌てて否定する。


「えっ、いやいや!慣れてないよ!全然!」


すると宮本さんはまた笑い出した。


「冗談だよー!もう、片桐くんって本当に面白いね!」


笑いながら小さく拍手している彼女を見て、僕は内心で叫ぶ。


面白いって何だよ!

僕はただ平穏な高校生活を送りたいだけなんだって!


その時、教室に先生が入ってきた。


「それじゃあ、委員会の活動を始めますね~。」


先生の到着とともに、僕と宮本さんの会話は途切れた。


でもその余韻に、僕の心臓はまだドキドキしっぱなしだった。


僕の高校生活、平穏どころか波乱の予感しかない……。


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