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第14踊 宮本いづみのお風呂上がりは破壊力がある

ウォークラリーを終えた僕たちは、夕食の時間まで自由時間ということで、それぞれ自分たちの部屋に戻って過ごすことになった。


部屋は4人部屋で、もちろん男女別でフロアが分けられている。


僕の部屋はヒロキングと伊藤くん、それに加山くんの3人と一緒だ。


部屋は洋室でベッドが4つ並んでいるシンプルな作りだけど、高校生の合宿では十分すぎるくらい快適だ。空調も効いていて文句なしだ。


部屋に戻ると、僕とヒロキングは早速ベッドに腰を下ろして軽く雑談を始めた。


「ウォークラリー、けっこう楽しかったなぁ。平野さんと宮本さん、初めて話したけど、いい子だな! 特に俺みたいな奴に、何の期待もせず普通に話しかけてくる子なんて滅多にいないぜ」


ヒロキングは明るく笑いながらスマホをいじって、さっき撮ったウォークラリーの写真を眺めている。


「宮本さんも平野さんも誰にでも優しく接してくれるからね。特に平野さんは、ちょっと天然なところもあるけど」


僕も苦笑いしながら相槌を打つ。


「それにしても、高塚さんも面白いよな。なんていうか、見た目以上にいろいろ考えてそうでさ。片桐、いい友達に恵まれたな! もちろん、俺も含めてな!」


「……そうだね。僕にはもったいない人たちだよ」


僕がそう答えると、ヒロキングは満足そうに笑った。


正直に言えば、彼女たちと出会ってから、僕の平穏な日々は消え去ってしまった。


でも、それ以上に楽しい日々が訪れていることは事実だ。


振り回されるのも悪くない、そう思うくらいには。


やがて夕食の時間になり、僕たちは食堂へ向かった。


食堂はバイキング形式で、好きなものを好きなだけ取れるスタイルだ。


サッカー部や野球部の男子たちは、山盛りのどんぶり飯をガツガツ食べていた。


筋肉を作るのも大変だ。


僕はハヤシライスを主食に、サラダとフルーツも添えてみた。少し健康を意識してみたつもりだ。


一方でヒロキングは、ハヤシライスとカレーライスの大盛り二刀流。


よく食べるなと思いながら、僕も食事を始める。


ふと周りを見渡すと、平野さんと宮本さんが別のテーブルで食事をしているのが目に入った。


数人の男子と一緒に、にぎやかに笑っている。


やっぱり宮本さんは人気者だな、なんて思いながら視線をそらそうとすると、彼女と目が合いそうになった。


慌てて視線を外した先には、高塚さんがいた。


彼女はクラスの女子たちに囲まれて、食べ物を次々と渡されている。


「たくさん食べて、大きくなろうね!」


クラスで一番小柄な高塚さんは、まるで小動物みたいに可愛がられているようだった。


彼女は僕の視線に気づくと、すぐに鋭い目つきで睨み返してきた。


さすがにこの場では足を蹴られないだろうけど、念のため視線をそらしておいた。


夕食を終えた僕たちは部屋に戻り、次は入浴の時間を待つ。


入浴はクラス単位で時間が決められていて、大浴場で順番に入る仕組みだ。


僕たちの番が来たので、ヒロキングと一緒に浴場へ向かった。


途中、一組の女子生徒とすれ違う。


お風呂上がりの彼女たちは普段とは違った雰囲気をまとっていて、いい匂いが漂っていた。


「おーい、片桐くん!それにヒロキング!」


軽やかな声とともに走り寄ってきたのは、宮本さんだ。


濡れた髪はバスタオルでざっくりと拭いた程度らしく、肩先に水滴がきらきらと光っている。


髪が少し乱れているけれど、それがむしろ彼女の普段の明るさを引き立てていた。


頬は湯上がりのせいでほんのりと赤く染まり、普段の活発な印象とはまた違う色っぽさがあった。


宮本さんは手を振りながら笑顔を見せる。


その笑顔に、こちらの気持ちがふっと軽くなるような不思議な力がある。


お風呂上がりというだけで、こんなにも雰囲気が変わるものなのかと、僕は少し戸惑いながら答えた。


「やぁ宮本さん」


僕が挨拶すると、ヒロキングは「なんで俺が“ついで”なんだよ」と不満を漏らしながらも楽しそうにしている。


彼女と少し話していると、突然、別の男子生徒が現れた。


「おーい宮本、みんなでトランプしようぜ!」


「うん、わかった!後で行くね!」


男子は僕たちを一瞥し、少し警戒するような目を向けて去っていった。


人気者と関わるのはやっぱり大変そうだ。


「じゃあ宮本さん、僕たちも行くよ」


「うん。またね!」


宮本さんは一瞬困った顔をしたけれど、すぐにいつもの笑顔に戻っていた。


お風呂を済ませて部屋に戻ると、ヒロキングはさっきの男子生徒について愚痴をこぼし始めた。


どうやら彼の視線が気に入らなかったらしい。


僕は特に相槌も打たず、散歩に出ることにした。


部屋に残ったヒロキングたちはスマホゲームで盛り上がっている。


ほんの少しの間に仲良くなってしまう彼のコミュ力には本当に感心する。


施設の外には「フラワーパーク」と呼ばれる場所があって、夜空の下で草花の香りが漂っていた。


夜の静けさも手伝って、心が落ち着く。


ふと、前方から人の気配を感じた。


「……平野さん?」


そこには、1人で歩く平野さんの姿があった。

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