【番外編】近すぎる二人(1/3)
私はアン・マーガレット・ハウゼン。
ハウゼン王国の王女だ。
最近の私は……恋をしたくなっている。
なぜなら!
私の大好きなお兄様とローゼン公爵令嬢が、ロマンス小説のような素敵なプロポーズを経て、婚約をしたからだ。
幼い頃から二人のことを、私は知っている。
ローゼン公爵令嬢は、他の貴族令嬢とは違う。
お兄様狙いの令嬢達は、私のことなどお構いなし。
でもローゼン公爵令嬢は私に親切で、とてもよく気遣ってくれたのだ。
それでいてお兄様には関心ゼロ!
珍しいことだけど、そういう令嬢もいるのね、と思っていたら……。
お兄様はどうやらローゼン公爵令嬢に、一目惚れをしている。
そして頑張っているけれど……。
無理ね。
お兄様、失恋確定だわ。
そこは可哀そうだと思うが、こればかりは仕方ない。
お兄様は王太子だけど、その身分だけですべてを思い通りにできるわけではないと思う。
そんな風に思っていたら……。
王立ハウゼン学園に進学し、迎えたバカンスシーズン。
ローゼン公爵令嬢は置手紙を残し、一人旅でライアース帝国に向かってしまった。
これには驚いたものの、彼女らしくもあり。
仕方ないのでいつものメンバーで楽しもうと思ったら……。
お兄様、ヘイスティングス、ガイルもまた、どこかへ行ってしまったのだ!
しかもこの三人については、行き先不明なのだから!
殿方は自由人過ぎるわ……。
そこで私は王都に残る仲間の一人、ドリュー子爵令嬢とオペラや演劇を楽しんで過ごしていた。
するとお兄様がようやく帰国したのだ。
ヘイスティングス、ガイルと一緒に。
しかも時を同じくして、ローゼン公爵令嬢も帰国したのだ。
まさかお兄様達とローゼン公爵令嬢、一緒に旅をしていた……?
それはないわよね。
結局、ローゼン公爵令嬢はお兄様というより、殿方全般に関心がないようなのだから。
一人旅を楽しんだに違いない。
そう思っていたら!
お兄様がサプライズで発表した水晶宮への旅行。
これに私は大喜び。
だってそこにはローゼン公爵令嬢、ドリュー子爵令嬢、そしてヘイスティングス、ガイルも招待するというのだから!
でもこれはとても珍しいことだった。
何せ水晶宮には、国家機密に関わるような研究を行う施設もあり、王族以外の立ち入りを禁じているのだ。お父様……国王がみんなの招待を許したのは、異例だと思った。しかも“始まりの場所”へ行くことも許可したのだ。
これは……何かあると思ったら!
なんとお兄様は、ローゼン公爵令嬢にプロポーズをしたの!
お兄様、振られないかしらと私は心配した。
でもローゼン公爵令嬢は……。
「殿下。あなたのその真心、受け止めます。これからの人生をあなたと歩みたいです。私も殿下を……ローレンスのことを愛しています」
そう応えたのよ!
まるでロマンス小説の一場面のよう。
私はその日の夜、女性陣だけでパジャマパーティーを敢行。
ローゼン公爵令嬢に一体何があったのか。
どんな心境の変化でお兄様のプロポーズを受け入れたのか……問い詰めることになった。
その結果。
ライアース帝国にお兄様も実は向かっていたことが明らかになる。そこでローゼン公爵令嬢は、怪しい水を売る男爵や謎の男に絡まれ、困っていた。そんな彼女を助けたのが、なんとお兄様だった!
しかもお兄様は変装し、自分の身分を明かすことはない。決してローゼン公爵令嬢に恩を売ることが目的ではなかった。あくまでピンチを救うためだ。
だが最終的にローゼン公爵令嬢はお兄様の正体を知り、まさにヒーローの振る舞いに感動し、恋に落ちたという。
なんてロマンチックなのかしら。
こうして私は、恋をしたくなっている。
でも……恋ってしたくてできるものではないのだ。
恋をするには相手が必要。
えっ、その相手って、どうしたらいいのかしら?
私が読んだロマンス小説に登場する高位な身分の令嬢には、当たり前のように両親が縁談話を持ち込む。でも私の両親は……国王陛下夫妻は、一切そんな話をしない。
王侯貴族の結婚は、政略結婚になりがちたけど。
我が王家は結婚について、わりとおおらかだった。
そうだとしても。
私も既に社交界デビューを果たしている。
縁談話の一つや二つ、あってもいいと思うのだけど……。
そこで私はお兄様に思い切って打ち明けたのだ。
婚約式を終え、すっかり鼻の下が伸び切ったお兄様に!






















































