水晶宮
王都に戻ると、私の身を案じていた両親が駅まで迎えに来てくれていた。
既にローレンスがライアース帝国で起きたことを報告してくれていたので、私がアルロンに手を出されていないことも分かっているが……それでも親なのだ。心配してくれている。
再会の瞬間はぎゅうぎゅうとハグをして、その後はローレンスと帰国したことに大喜びだ。
こうなると両親に「勝手に婚約内定を進めたなんてヒドイ!」と文句を言う気持ちにはならない。
それにローレンスと結ばれることが、この世界の平和、私の生存だと分かったのだ。ここは不問で正解のはず。
そして帰国すると、次は水晶宮へ向かう準備となる。
ベティはトランクにドレスを入れ替えながら、「大変、大変!」と言っているが、何だかとても嬉しそう。
こうして帰国した翌々日には水晶宮に向け、出発となる。王家が所有する別荘。安心安全は保証されているので、両親も快く送り出してくれた。何よりこれでローレンスと私の婚約が公になるのだ。
きっと両親の肩の荷も降りるはず。秘密を抱えることは、骨が折れることだから。
「ローゼン公爵令嬢、会いたかったわ! こんなに長い期間、会わなかったのは初めて。寂しかったのよ。お兄様やヘイスティングス、ガイルもいなくて。仕方ないからドリュー子爵令嬢と連日オペラや演劇を観ていたわ。もう夏の話題作は全部観てしまったのよ!」
水晶宮までは、それぞれの馬車で向かうことになった。荷物もあるし、ローレンスやアン王女は今回公人として向かうので、沢山の記者も彼らの後を追う。私たちが取材に巻き込まれないようにするためでもあった。
その結果。
水晶宮のエントランスでローレンスとアン王女に迎えられることになった。
明るい空色のドレスを着た私が馬車から降りると。
ロイヤルパープルのドレスを着たアン王女は、熱烈なハグで迎えてくれる。確かに久々の再会。私も嬉しい。
サフィアブルーのスーツ姿のローレンスは、少し離れた場所でこの様子を見守っていた。そして私とアン王女の抱擁が終わると……。
私の手を取り、甲へとキスをして優雅に挨拶をしてくれる。
気持ちとしてはローレンスも私も、アン王女と同じくらいの熱いハグをしたかったと思う。しかしローレンスと私の婚約は公になっていないので、そこは我慢だ。
そうしているうちに、ドリュー子爵令嬢……ポーラ、ヘイスティングスやガイルも到着。まずは昼食となり、水晶宮の敷地内にある菜園、池で養殖されている魚、狩りで捕らえた雉など、新鮮な食材で作られた料理が並んだ。
満腹になった午後は、美しいドーム型のガラス張りの建物を案内してもらった。噂通りでそこは温室で南国を再現し、珍しい草花や木が育てられている。さらに南国固有と言われる希少生物が飼育されており、見応え満点。5つに別れている2つのエリアを見たところで夕方になってしまった。
途中でティータイムを挟んだこともあるが、やはり巨大だった。
そしてイブニングドレスに着替えると、夕食となるが、それは南国のフルーツや野菜が使われた料理が登場。ポーラと私は感嘆することになる。
パパイヤ、スターフルーツ、パッションフルーツなど、前世で食べたことがある果物だった。でもこの世界では初めて口にしたので、そこはやはり感動してしまう。何より、これらのフルーツを使い、サラダ、炒め物、カレーなど、エスニックな味わいの料理が用意されていたのだ。その味わいをこの世界で楽しめるとは思わなかったので、実に感慨深い。
さらに食後に温室に案内してもらうと、そこでは夜に咲く月下美人、夕顔、睡蓮を鑑賞。ランタンで照らされた花々は、実に美しかった。
だがこの日はこれでお終い。
流石に到着日で慌ただしく過ごす中、ローレンスも私にプロポーズすることはなかった。
ではいつプロポーズされるのか?
実はそれが分からないのだ!
これはもうドキドキだ。
そんなこんなで水晶宮一日目は終了。
長時間の移動もあったので、アン王女、ポーラと三人で一部屋だったが、パジャマパーティーとはならず、爆睡!
そして迎えた二日目は……。
朝からサプライズ満点となる。






















































