王家の秘密
闇落ちするアレクシスは、アルロンにより生み出される。ローレンスと結ばれても問題ないと分かった。ならば素直な気持ちを伝えるまでだ。
そこで私はローレンスに「好き」という気持ちを伝えた。
それを聞いた時のローレンスは驚きで固まり、しばらくしてその意味を噛み締めると……。
ことさら強く私を抱きしめ、それでは気持ちが収まらなかったようで頬に……キスをした。
でもそこまでだ。
彼の中でキスはとても神聖なものであり、特に唇へのキスは……結婚式まで大切にとっておく。そんな風に考えているように思えた。
「水晶宮でも正式にプロポーズするよ。でも一足先にローゼン公爵令嬢と両想いになれて……僕はとても嬉しいな」
そこで鉄製の扉が遠慮がちにノックされ、ベティ、トム、そして変装して金髪になっていたガイル、黒髪のヘイスティングスが姿を現わした。
今更だけど、ガイルの金髪は眉毛の色と全然あっていないし、黒髪のヘイスティングスは髭が似合い過ぎて、完全に別人。どうしてこの二人の変装に気がつかなかったのかと思ってしまうが。
それだけローレンスが圧倒的な存在感を放っていたのだろう。
こうしてみんなと合流し、ホテルへ戻ることになった。
ガイルとヘイスティングスのおかげで帝都警備隊は明日、ローレンスと私の所へ尋ねてくるが、今日の聴取は免除された。そして帰りの馬車については……。
ローレンスの強い希望で、私と二人きり、となった。
一瞬、甘い何かを期待してしまうが、そうではない。
それは王族しか知り得ない重大な話を私にするためだった。
こうしてローレンスと私が同じ馬車に乗り込み、ベティ、トム、ガイル、ヘイスティングスの四人が乗った馬車が後を続くことになる。
屋上に続き、ローレンスの隣に座り、馬車が走り出す。
「核心について話していなかったよね。アルロンと僕の関係の件だ」
確かにそうだった。
アルロンはローレンスを嫌い、憎み、私を貶めてまで苦しませ、できれば葬り去りたいと考えていた。
なぜライアース帝国の皇太子が、ハウゼン王国の王太子をここまで目の敵にしているのか。
それをローレンスから聞くことになった。
「王家というのはね、ローゼン公爵令嬢。歴史が長い分、いろいろな秘密を抱えている。これから話すことも公にはされていないこと。でも君はいずれ王族の一員になるから、話すことにした。それに巻き込まれてしまったから、知らずにはいられないだろうからね」
そう言うと隣に座る私の手をぎゅっと握った。
ドキドキしながら「両親にも話さない方がいいのですね?」と確認すると「そうだね」とローレンスは真剣な顔になる。
「この大陸のどこの国でも、王族に誕生する双子というのは禁忌の存在なんだ」
「え、そうなのですか……?」
「女の子と男の子の双子なら、問題はない。禁忌とされるのは、男の子の双子だ」
王位継承権第一位は、格段の理由がなければ長男が持つというのが、大陸の共通ルールである。
そうなった場合、双子の男子はシビアだという。
「場合によって1分や2分の差で、その先の人生が決まる。1分の差で先に産まれた赤ん坊が長男で、未来の王太子や皇太子となる。この状況に双子の弟の方が不満を持ったり、周りの取り巻きの貴族が暗躍し、王位継承権の火種になることがあった」
王位継承にまつわる火種は、ないに越したことはない。何しろ一度勃発すると、国力が低下する。なぜなら内乱が起きるからだ。さらにその混乱に乗じ、他国が攻めてくることもあるのだ。
「歴史の表舞台から消えた双子の弟がいるのは事実なんだ。といっても、害されたりするわけではない。王家の遠縁に預けられ、王族ではない身分を密かに与えられ、育つことになる」
そうやって育ち、自身が実は王族の血を引く人間と知らずに永眠する者いるという。
「公には、アンと僕が双子だろう。でも違うんだ。僕たちは三つ子。僕、アルロン、アンの順番で産まれた三つ子だった」
「え!」
「僕とアルロンは外見が似ていない。でも僕もアルロンもアンも、現王妃から産まれた子供であることに間違いない」
これは確かに王族知らない情報であり、私以外を馬車に乗せられないことには納得だった。
「ライアース帝国の皇帝陛下と、ハウゼン王国の国王陛下……つまりは僕の父上は、同い年なんだ。皇帝陛下はハウゼン王国のアカデミーに留学していて、父上とも仲が良かった。師事した教授も同じで、そこで父上は母上と出会い、皇帝陛下を含め、三人はとても仲が良かったそうだ」
アカデミーを卒業後、ローレンスの父親はすぐに結婚。一方の皇帝は、それから三年後に結婚したのだが……。
「皇妃は一度流産をして、実は子供を産めない体になっていた。でもそうなると側妃を迎えることになる。帝国は基本的に一夫一婦制だけど、子供ができない場合は特例措置がとらられるんだ。血筋を大切にするから。でも皇帝陛下は皇妃を愛しており、側妃を迎える気になれなかった。そんな時だった。僕の母上の妊娠が判明した。そして産まれてきた子供は、兄弟と妹の三つ子だった」






















































