お茶会
王家主催のお茶会。
令嬢令息、両方いる可能性が高い。
しかも特定貴族とばかり仲良くできないので、大勢の令嬢令息が招待されていると思った。
だが実際に足を運んでみると……。
「初めまして、ローゼン公爵令嬢。今日は僕の主催するお茶会へ参加してくれて、ありがとうございます。改めまして、僕はハウゼン王国王太子のローレンス・ジョセフ・ハウゼン。こちらは双子の妹のアン王女。そして彼は王立ハウゼン騎士団の団長、オルソン卿の子息ガイル・オルソン。こちらの彼はウォーカー宰相の令息のヘイスティングス・ウォーカー。ぜひ皆と仲良くしていただけると嬉しいな」
これにはもうビックリ!
ハウゼン王国の令息の中で、この三人は間違いなく、注目を集めていると思う。
将来有望な子供たちとして。
ローレンスは言うまでもない。
この国の王太子なのだから。
しかもその姿は童話に登場する王子様そっくり。
金髪碧眼で、頭には冠を載せたくなる。
ガイルは既にこの年齢にしては体がしっかりしていた。
ダークブロンドに黒い瞳もきりっとしている。
父親の騎士団長の跡継ぎとして、立派な騎士になりそうだ。
ヘイスティングスはそのメガネ姿からして、インテリな雰囲気に溢れていた。
まだおかっぱのアッシュブロンドの髪も艶やかで、エメラルドグリーンの瞳には知性を感じる。
こちらも父親である宰相譲りの秀才になりそうだ。
さらに。
綺麗にウェーブした金髪に碧い瞳、シルクのような肌。
クリーム色のドレスを着たアン王女は、貴族達が「我が息子の嫁に」と絶対思っているはず。
双子の兄であるローレンスに似た美人だった。
そうか。
なるほど!
これはただのお茶会ではない!
ティアナはこの国で三つしかない公爵家の令嬢。
そして今、この場にいる三人の令息は、ティアナと同い年。
つまり。
この三人はティアナのお婿さん候補!
いや、地位と立場を考えると、王太子ローレンスの婚約者候補にティアナが上がっていると考える方が早いかもしれない。
ただ、王太子の婚約者は貴族間のパワーバランスに多大な影響を与えるので、そう簡単には決められないものだ。あくまでまだ様子見。だからこそ、王太子と一対一のお茶会ではないわけだ。
ということは……。
闇落ちする息子アレクシスの父親の最有力候補は、まさかのこの国の王太子……なのかしら?
でもそれが正解なら、ゲームではヒロインと攻略対象は闇落ちしているラスボスとはいえ、王族を、未来の国王を倒していることになる。
え、それって結構重要な情報に思えるけど、まったくゲームでは語られていなかったような……。
「ローゼン公爵令嬢! お噂通り、お人形さんみたいで可愛いですね! ぜひアンとお友達になってくださる?」
「ええ、勿論です。こちらこそ、よろしくお願いいたします」
ここにアン王女がいてくれたのは僥倖。
これだけの地位と立場の人間に、不遜な態度をとることはできない。
つまりギャン泣きは勿論、いやいやオーラで寄せ付けないのもダメ。
こうなったら王太子、団長と宰相の息子とは極力接点を持たないようにして、ひたすらアン王女と仲良くしよう!
こうして私はこのお茶会の最中、アン王女にべったり状態になった。
この様子をローレンス、ガイル、ヘイスティングスがどう思っているのか。
ちらちらと確認すると……。
なんだか三人ともニコニコしている。
ニコニコし、アン王女と私の会話を邪魔することはない。
男性との接点を作らない。
それは実現できている。
ならば問題ないだろう!
そう思っていたら……。
なんと逆効果だったのだ……!
というのも。
これまで、王太子であるローレンス主催のお茶会に招待された令嬢。
彼女達は、皆、まずはローレンス。次にガイル。そしてヘイスティングスに猛烈アピールだった。
何しろのこの三人は、この国で最も将来有望な令息なのだ。
両親からも、できれば王太子、無理なら騎士団長の息子か宰相の息子と仲良くなってきなさい……と言われているはず。
その結果。
アン王女はいつも蚊帳の外だった。
ところが。
私はその逆。
アン王女と仲良くし、王太子や騎士団長や宰相の息子をアウト・オブ・眼中だった。
それを妹想いの王太子は「アンとこんなに仲良くしてくれるなんて。ローゼン公爵令嬢は素敵な方だな」となり、ガイルは「男子にへつらう女子は苦手。ローゼン公爵令嬢は王女様とあんなに仲良くして。いい子じゃないか」と評価し、ヘイスティングスも「わたし達に見向きもせずアン王女と仲良くするとは。他の令嬢達のように打算的ではなく、好感を持てますね」と思ったという。
アン王女は当然だが大喜び。
その結果。
「ティアナ、アン王女が王宮に遊びに来て欲しいそうだ。勿論、会いに行くだろう?」
父親に言われ、アン王女のお誘いならと向かうと……。
勿論、アン王女はいる。
だがそこにはもれなくローレンス、ガイル、ヘイスティングスもいるのだ。
まるでセットメニューのように、もれなく一緒!
男性を寄せ付けない。
独身街道一直線。
そう誓っているのに、気づけばこの三人がそばいる……!