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異世界旅行はゴブリンと共に  作者: アフ 郎
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連合部隊ドラゴノイド

ディラストル大陸東の大国シャカール。王族の城、会議室にて。


「では、国民からの税を20%から30%へ引き上げることで異論ありませんな?」

「うむ」

「同意である」


国を治める王族七名による国内情勢についての会議が行われていた。

今回の本目的である税についての話がまとまり、会議はまもなく終了しようとしている。

幹事役の王族が話をまとめ始めた。


「今回予定されていた議題は全て終わった。このまま解散という形でよろしいか?」

「少しお待ちください」


そう言って立ち上がったのは、七名の中でも一際若い男だった。

男は切れ長の目をさらに細めて、話をこう切り出した。


「ここシャカールより、そう遠くない位置にあるスラム・インプールについて。私から提案がございます」






一方、シャカール国城下街タンキー・ストリートにて。


タンキー・ストリート・・・シャカール城から続く東西南北四本のメインストリートの内の一つ。多くの冒険者や商人が道を所狭しと練り歩く。


「けっ!今回の報酬もしょぼくれてたよなー」

「そうですよ!スモールレッサードラゴンの住処を壊滅させて銀貨が6枚ですよ!割に合いません!」

「あはは…仕方ないよ。ここは冒険者が多いから、仕事をもらえるだけ有難いんじゃないかな」

「姉さんはさすがですね~」

「懐が大きいよな!」

「そんなことないよ…本当に」


タンキーストリートを歩く3人の会話だ。

一人は高身長かつ筋肉粒々の大男ハンツ。武器は背中に括り付けた大斧だろう。職業はタンクの上位職「ガードナー」だ。

もう一人はですます口調の丸眼鏡をかけた男ジャッキー。職業は「プリースト」で回復魔法を主に扱っている。

最後の一人は桃色の髪が美しい女フローネ。職業は「ハイアーチャー」でパーティーのリーダーを任されていた。

三人は依頼の報酬にケチをつけながら宿屋に戻る最中だ。その時、前方で人だかりが出来ていることに気づいた。


「王族勅命のクエストだよー!報酬も奮発!稼ぎ時だよー!」


人だかりの原因は低い台に乗り、クエスト内容が書かれているであろう紙をバラまいている彼の仕業だろう。ハンツは風に乗って飛んできたクエスト用紙を掴んだ。


「え~っと何々。スラム・インプールにて冒険者を殺戮、拷問等の犯罪行為が行われている情報が届いた。よってシャカール王族七名賛同の元スラム・インプールへ「連合部隊ドラゴノイド」への派遣を要請する。参加者には金貨十枚ずつ!?」


連合部隊ドラゴノイド・・・ディラストル大陸に4つ存在する冒険者による臨時協力部隊の名称。冒険者ならば誰でも参加可能。


「金貨十枚かぁ・・・魅力的ですねぇ」

「あぁ、だが王族による発令。どこまでが本当のことやら…姉さんどうしますか。…姉さん?」

「…あぁ、すまない」


フローネはクエスト用紙を食い入るように見つめて考え込んでいた。

ハンツの声に少し驚いた姿を見せた後、フローネは自分の考えを話した。


「ハンツの言う通り王族は信用ならない」

「そうだよな」

「報酬が豪華でも、実際は人殺しですしねぇ…」

「でも…」


フローネの心に引っかかっていた物。

それは今から7年前、まだ駆け出しだった頃のフローネに強烈な印象を残した人間の事だ。

彼は共に行動をしていた私たちを裏切って魔族であるゴブリンと共に森の中へと消えた。

最初は彼が気が狂ったんだと思っていた。

でも向かい合ったときに見えた彼の目は、狂うとかそういうものじゃなかった。


私たちは彼にとって嫌な奴だったと思う。

会話はいつも彼を除いた3人で、こっそり酒場に抜け出すも彼を誘うことは無かった。

私たちの行動が彼を追い詰めていたんじゃないのか。だから彼は…。

残った二人と別れて、彼が消えていった森を一人で捜したが、結局彼は見つからなかった。

彼は今どこで何をしているのだろうか。

一緒に逃げたゴブリンがまだ生きているのなら街に入ることは困難だろう。

ならばスラムのような場所で生きているのではないだろうか…。


ただの憶測に過ぎないとは分かっているが、フローネはスラムに赴きたいと思っていた。

そして可能であれば彼に謝りたいと。


「姉さん」


頭の上からハンツの声が聞こえた。


「何か悩んでいるんだろう?俺たちの事は気にせんでいいから姉さんの好きに決めていいんだぜ」

「っそうですよ!僕たちはずっと姉さんに助けられて…感謝してるんです!だから…偶には自分勝手になってください!僕たちにも少しは格好つけさせてください!」


ハンツとジャッキーの力強い声にフローネは心が温かく締め付けられた。

そしてフローネは決心した。


「ありがとうハンツ、ジャッキー。私は…この依頼を受けようと思う!」

「ガッテン!」

「あいさー!」


依頼を受けるだけで人を殺すつもりは無い。

ただ確かめに行くのだ。

いつか笑っていた彼が、そこに「生きている」かを。

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